小林靖子氏の描く特撮の魅力


はじめに

特撮が好きです。

仮面ライダーでいうと、電王生まれW育ちといったゴールデン世代であります。
オーズを終えてフォーゼの序盤のテンション感に合わず、年相応にライダーからの卒業を試みた私でしたが、数年後の鎧武の登場によって引き戻されてしまいました。

この時代に生まれてよかった。そう感じます。
鎧武で、子供の頃では気付かなかったライダーのおもしろさを体感した私に、この世界は過去の作品を見せるプラットフォーム(☓電王)を与えてくれたのです。

私が見た小林靖子脚本作品は以下の通りです。

・未来戦隊タイムレンジャー
・侍戦隊シンケンジャー
・特命戦隊ゴーバスターズ
・烈車戦隊トッキュウジャー
・仮面ライダー龍騎
・仮面ライダー電王
・仮面ライダーオーズ
・仮面ライダーアマゾンズ

そうです、00年以降の戦隊ライダーのいわゆる「靖子脚本」はすべて視聴しました。
率直な感想を言うと、どれもめっちゃ面白いです。

なぜ面白いのか。これらの作品に共通する面白さはなんなのか、特徴はなんなのか。
個人的に言葉にしてまとめてみたいと思っていたので、読んでいただけたら嬉しいです。

キャラの魅力

まずこれが挙げられると思います。

僕にとって最初の靖子脚本、仮面ライダー電王が代表的だと思われます。4色のカラフルなイマジン、どれも昔話をモチーフにしており、大物声優と大物スーツアクターが自由にキャラを作っています。良太郎(佐藤健)に憑依した姿も大好きです。

イマジンたちのよさは、ただおもしろいだけじゃないところです。彼らは未来から来た侵略者であり、4人それぞれが違った動機で良太郎に憑いている。ときに迷った良太郎の背を押したり、励ましたりもできる。
ウラとキンが少し大人だということもこれまた魅力ですよね。

もうひとつ作品を挙げるなら、仮面ライダーオーズです。映司とアンクは根強い人気で、平ジェネFinalでの再共演は涙モノでした。彼らがなぜここまで好かれるのか、それは先に述べたイマジンに通じるところがあります。
映司は無欲でアンクは欲の塊。この二人を結ぶのは、『利害関係』です。無欲な映司がなぜオーズになったのか、それこそが物語の根幹であり、主人公「火野映司の欲望」でもありました。

小林靖子氏の作品では、キャラの掘り下げが徹底しています。戦隊やライダーのよさは、30分尺でも1年間やれること。話数にすると50話前後。これだけのタメを終盤に向けて総動員するため、アツい展開が続くのも納得です。

特に顕著なのは戦隊作品。基本を5人としているため、それぞれにフォーカスして5話分。さらに2人ずつ関係性を見せていけば、それだけで10数話。さらに追加戦士の登場で、展開のバリエーションが豊富な印象です。見ていて本当に楽しい。

タイムレンジャーに関してはロンダーズファミリーがめちゃめちゃ好きです。芯のあるワル。靖子脚本ではないですが、ルパパトのギャングラー(ドグラニオ)も同様ですよね。

敵味方限らず、キャラの魅力は物語の魅力。そう言っていいのではないでしょうか。

デメリット

これはひとつ、感じたところです。

龍騎でいうと、ライダーにはさまざまなデメリットがあります。ミラーワールドでは長く戦えない、モンスターに定期的にエネルギーを与えなければ食われる、そもそもライダーバトルで命を懸けている。

ゴーバスターズでは、3人にはワクチンプログラムがある反面それぞれ個性的なウィークポイントが存在します。戦いの中でそれが敵に利用されることも少なくありませんでした。

これはなにも味方に限った話ではありません。シンケンジャーでは外道衆が三途の川からこちらの世界へ来る際、「渇き」というタイムリミットが生じます。これは作劇上、戦線の一時離脱に意味をもたせた素晴らしい発想だと思います。

大きな力は常にデメリットをはらむ、というメッセージが受け取れます。

驚愕の事実

最後に、これはやはり視聴意図として大きいです。

物語の中盤や終盤に、必ずと行っていいほど山場が存在します。これはどの作品でも言えることですが、基本は強敵との決着や新たな敵の登場などです。しかし靖子脚本ではこれが物語を揺るがす事実の発覚であることが多いです。

例えばアマゾンズS2。主人公の千翼はアマゾンに育てられたという出自ですが、なぜそんなことが起こりえたのか。溶原性細胞とはなんなのか。それを知る手がかりとなる『彼』が盲目となって再登場しました。

トッキュウジャーでは、敵将ゼットの狙いはなにか、なにを見たいのか。物語を通した根本的な事実が明るみになり始めます。

これがあるから靖子脚本はやめられねぇぜ!
そんな風に思う瞬間でもあります。

おわりに

令和になって、ライダーと距離を置いてしまっています。玩具の販促番組としてではなく、親子で楽しめる作品としてのライダーは、もう久しく見られていない気がします。それはもしかすると、仮面ライダーとしては本来あるべき姿なのかもしれません。

戦隊の方は香村純子氏といった強力な作家が頭角を現しています。ゼンカイジャー、いつも楽しく見ています。

小林靖子氏がまたニチアサに帰ってきたとき、私はまたあのワクワク、いやキラキラを取り戻せるのかもしれません。それが私の叶えたい願い、望みであり、欲望でもあります。

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