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大学入試問題にこめられたメッセージ    ー 2020東大入試 ー

大学受験は、いろいろなメッセージを発している、と言われています。
直近では2年前の2020年2月の東大の現代文でありました。
例えば、落ちこぼれから東京大学に合格し「東大読書」を著した西岡 壱誠さんは、
下記の記事で2年前のこの入試に関して、大学入試改革に対して東大が発したメッセージを解説されています。(採り上げられた課題文は非常に興味深い文章でもあります。)
 
文春オンライン「2020年の東大入試で起きた事件。 “国語”の問題に示された受験生へのメッセージ」より
(詳細は、https://bunshun.jp/articles/-/36363


しかし、その内容は多くの人を驚かせる、重大なメッセージを持ったものでした。東大の入試は2日間に分かれ、1日目は「国語」と「数学」を受験することになります。そして東大入試最初の科目である「国語」の、一番初めの現代文の問題の文章の冒頭には、こう書かれていました。
 

「学校教育を媒介に階層構造が再生産される事実が、日本では注目されてこなかった」。
(小坂井敏晶『神の亡霊』「第6回目 近代の原罪」より)

 
 学歴社会の頂点である東大が、日本の受験システムの問題点を示唆するような文章を出題したのです。
 東大は、これまで度々、入試問題で現代社会に対するメッセージを発信してきました。

「ゆとり教育」で円周率を “3”にした時の入試問題


 例えば「ゆとり教育」の議論が活発化し「円周率を3として教育する」ということが決定された2003年には、「円周率が3.05より大きいことを証明せよ」という問題が出題され、ゆとり教育に対する警鐘か、と話題になりました。
 そして前述の問題は、入試改革が行われる2020年に合わせて出題された、教育に関する文章です。

(興味があればこの記事、そして2020年2月に行われた東大の国語の入試問題実物を読んでみて下さい)
 
これは東京大学だけではありませんが、「試験問題」という場を借りて、教育機関が「意見」を表明しているのです。
例えば、京都大学の英語の形式は、英語の試験にも関わらず、「日本語力」が本当に問われます。それは、英会話の重要性ばかりが叫ばれる中で、ほとんど変わることはありません。
では、それはなぜでしょうか?これも1つのメッセージです。
このように京都大学の場合、東京大学ほど明確なメッセージではありませんが、問題の作り方にメッセージを込めているように感じます。
この理由は、外国語以前に、専門性と思考を深めるための道具としての「母国語」の重要性を伝えたいからだと思います。発信する力はもちろん必要だけど、「その前に、必要なものがあるでしょ」というメッセージではないでしょうか。
入試問題もこのようにみていくと、世界と競争している第一線の研究者の問題意識を感じられる気がするのは私だけでしょうか。
 
余談ですが、東京大学のこの課題文は、対比構造が明確で非常に読みやすい文章です。(設問に関しては、一見優しそうなのですが、書き出すと非常に書きにくいようなところを設問にしています。)「対比」構造から、片方を明らかにしていくという方法を東大や京大などの難関大は好みますね。
 
また、この文章には、下記のように人間の本質が描かれています。

人間は常に他者と自分を比較しながら生きる。
そして比較は必然的に優劣をつける。

これも何度も読んで、味わってもよい文章だと思います。
詳細な解答が知りたければ、下記の「国語王」さんを参考にして頂ければと思います。
https://note.com/pinkmoon721/n/nd63fc6055549
 
 
#中学受験
#これからの教育
#東大京大
#西岡壱誠
#神田べスリクリニック
 
【今回の素材文】
 小坂井敏晶「神の亡霊 近代の原罪」
 
【参考】
 数学メモランダム:https://waka-blog.com/?p=1270
 → タイトルの問題の解法に興味のある方はこちらを訪れてみて下さい。

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