これからの中学入試の自由研究

世界最貧国の高校で数学教師をし、帰国後は人材育成に関わっています。 これからの世の中が…

これからの中学入試の自由研究

世界最貧国の高校で数学教師をし、帰国後は人材育成に関わっています。 これからの世の中が求める人材を輩出することを学校は求められています。出題された入試問題の背景を、企業の人材育成の観点から明らかにし、入試問題を素材に思考を楽しんでもらうきっかけをお伝え出来たらと考えています。

最近の記事

「みなさんは、ふだん地図を見ますか。」  このメッセージに込められた意図とは?   ― 2022年 栄光学園 ―

今回は、地図がテーマになっています。 2022年春に実施された社会の問題文。その最初にこんな一文があります。 「みなさんは、ふだん地図を見ますか。」 このメッセージの意味を読み解けたら間違いなく合格率は大いに高まるでしょう。 意味を読み解くためには、6年生になり、過去問を始めた時に、このような出題を楽しめ、その理由を考えようという姿勢がまず必要ですし、そのような生徒を求めている、という学校側からの明確なメッセージです。 例えば、「地図作り」に関して、衛星などがない

    • 夏を迎えるこの時期に  ー「挑戦」という言葉の弊害についてー

      この「挑戦」という言葉をあなたは多用する人でしょうか? では、次に、    この「挑戦」という言葉でモチベーションが高まる人でしょうか?                                もしくは、    力が入り過ぎちゃって、動けなくなってしまうタイプでしょうか? さて、「挑戦」と「実験」という言葉を辞書で調べてみますと下記のようにあります。 「挑戦」:      1 戦いや試合をいどむこと。       例:「―に応じる」「世界チャンピオンに―する

      • 【子供に自信を持ってもらいたい保護者の方へ】 人の意識というものは、植物にとっての光のようなもの          ― 鹿児島県立楠隼中学校2021 ―

        問題文の書き始めがこんな一文からスタートしています。 「自分の長所を人生にどう生かすか」というテーマで書かれた文章です。 斎藤孝著「大人だからこそ忘れないでほしい45のこと」からの出題で、中学生になるまでに何度も読んで欲しい、という意図だと感じます。 しかも、受験生というより、小学校6年生になる前のできるだけ早い段階で自分の「ストロングポイント(長所)」を意識し、中学に入学するまでに自己肯定感を低下させず、むしろ伸ばして成長して欲しい、というメッセージに感じるのは私だ

        • 「身の回りのこと、社会のことに興味はありますか?」から「企画力」までを測る出題 ー2021 東京都立小石川中等教育学校 ー

          この小石川中等教育学校は、注目されているだけあり、面白い問題を出しますね。 参考:以前書いた記事です 達人になる第一歩は? ― 2021 東京都立小石川中等教育学校 ― やはり、「身の回りのこと、社会のことに興味はありますか?」と問うています。 【問】現在の社会がかかえる具体的な課題を1つ挙げ、おじいさんが言う「情   報化がさらに進んだ新しい社会」では、その課題をどのように解決す   ることができると考えられるか、あなたの考えを書きなさい。    なお、121字以上1

        「みなさんは、ふだん地図を見ますか。」  このメッセージに込められた意図とは?   ― 2022年 栄光学園 ―

          伝説の入試問題            ―「ドラえもん」で本当は何を問いたかったのかー

          もう10年も前に、こんな問題が2013年に出題されました。 99年後に誕生する予定のネコ型ロボット「ドラえもん」。 この「ドラえもん」が優れた技術で作られていても、生物として認められることはありません。それはなぜですか。理由を答えなさい。 これは名門の麻布中学が出題した有名な問題ですから、ご存知の方は多いと思います。 では、この問題の本当に問いたいことまでをご存知でしょうか。 そして実は、東大の入試問題と本質的に問うていることは同じということまでご存知でしょうか。 その

          伝説の入試問題            ―「ドラえもん」で本当は何を問いたかったのかー

          給食の食べ残しを見て、何を感じるか? ー 広島県立広島叡智学園中2022 ー

          「問題(課題)発見能力」と「問題解決能力」大学受験での最高峰である東大医学部(理科3類)に関して書かれた「本物の「成功者」はどこにいる? 東大医学部」 和田秀樹・鳥集徹共著 の中で「問題(課題)発見能力」と「問題解決能力」の2つに関して、興味深いことが述べられています。 (東大医学部卒業生は)論文をババっと集めてきて、善し悪しも含めてそれを解析し、結論を出すような仕事は得意かもしれません。すなわち、東大医学部は、「問題発見能力」が高いかどうかはわかりませんが、総じて「問題解

          給食の食べ残しを見て、何を感じるか? ー 広島県立広島叡智学園中2022 ー

          大学入試から「勝手に」読み取るメッセージ ー 京都大学2007年 ー

          東大と京大は理系であっても、記述式の国語が課せられます。 これは、論文を書いたり読んだりする研究者には必要な能力ですし、官僚になれば文書作成能力などが必須の能力だからです。 さて、今回は京都大学の問題を採り上げます。 まず、「知」の第一線にいる自分たちにも矛先を向けているような内容を敢えて扱っています。 価値観の違う物・人をきちんと評価しようと向き合っていますか? と、「活字離れ」を例に挙げて、大人たちに問い掛けているような文章です。 「これをこう読め」と活字なるも

          大学入試から「勝手に」読み取るメッセージ ー 京都大学2007年 ー

          大学入試問題にこめられたメッセージ    ー 2020東大入試 ー

          大学受験は、いろいろなメッセージを発している、と言われています。 直近では2年前の2020年2月の東大の現代文でありました。 例えば、落ちこぼれから東京大学に合格し「東大読書」を著した西岡 壱誠さんは、 下記の記事で2年前のこの入試に関して、大学入試改革に対して東大が発したメッセージを解説されています。(採り上げられた課題文は非常に興味深い文章でもあります。) 文春オンライン「2020年の東大入試で起きた事件。 “国語”の問題に示された受験生へのメッセージ」より (詳細は

          大学入試問題にこめられたメッセージ    ー 2020東大入試 ー

          「働く」って何だろうか? ー 2021 福山市立福山中学校 ー

          教育に非常に力を入れ、いろいろな取り組みが注目されている県の福山市。 哲学的ですが、6年生になったら、「こういうことを考え始めて下さいね」、というようなメッセージではないでしょうか。 谷尻誠氏の「CHANGE 未来を変える、これからの働き方」から。 僕にとっての「働く」は、傍(ハタ)をラクにすること。傍、つまり、まわりのみんなを楽しくすることが、仕事をする目標であり喜びであり、もっとも大きなモチベーションの源です。 笑いって自分の内面からは生まれないある時、「人はどうして

          「働く」って何だろうか? ー 2021 福山市立福山中学校 ー

          いのちがある奇跡 ー 沖縄県県立中学共通2021 ー

          この詩は、道徳の教科書にも採用されているんですね。 私自身は教科書ではありませんが、確かにどこかで出会っています。 だからこの詩は知っていました。 自分の番     いのちのバトン  父と母で2人  父と母の両親で4人  そのまた両親で8人  こうしてかぞえてゆくと  10代前で1024人  20代前ではー?  なんと100万人を越すんです  過去無量の  いのちのバトンを受けついで  いま ここに  自分の番を生きている  それが  あなたのいのちです  それが わ

          いのちがある奇跡 ー 沖縄県県立中学共通2021 ー

          記事ではなく、そのレイアウト!?比較して見えてくるものは?ー 川崎市立川崎高等学校附属中学校 ー

          これも非常に良問だと思います。 現代は、大袈裟に言えば、誰もが簡単に、世界に向けて発信できる時代です。 「新聞」を題材して、「遊んで」いる点が興味深い問題。 今回は書き方ではなく、読み方、もっと言うと読み解き方を伝えてくれている点に特に 興味深さを感じます。 同じニュース「ネタ」でも、書き手の立場や考え方によって内容が変わります。そのような、書き手の気持ちまで考えさせる点が非常に深い問題だと感じるのです。 具体的には、メディアの記事は、書かれた意図があることを忘れてはなら

          記事ではなく、そのレイアウト!?比較して見えてくるものは?ー 川崎市立川崎高等学校附属中学校 ー

          起業家を育てたいの?小説家を育てたいの?本当のメッセージは(1)      ー 福井県立高志中学校2021 ー

          この問題は本当に深い、と唸らされました・・・ 小学6年と中学3年の全員を対象に5月に行った2021年度全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果に関して、都道府県別の公立校の平均正答率で、福井県は小6の国語と算数、中3の国語と数学の4科目いずれも2位または3位で、全国トップクラスの学力を維持し続けています。 (参考:福井新聞 https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1389437) そんな福井にある「高志中」の問題が非常

          起業家を育てたいの?小説家を育てたいの?本当のメッセージは(1)      ー 福井県立高志中学校2021 ー

          「シンギュラリティ」を疑う     ーさいたま市立大宮国際中等教育学校2021ー

          身近にある仕事、全てを機械がやってくれるように「本当に」なると思うか、と問い掛けられているような問題です。 多くの人はこの質問に、「全て・・・、な訳ないよな。」というのが実感ではないでしょうか。足元に落ちているちっちゃなゴミを拾うこと、ちょっとハサミで切るだけのこと・・・など やろうと思った瞬間に人間がすぐにできることを、どこまでを任せるでしょうか。 少しイメージを膨らませれば、違和感を持つはずです。 その「違和感」を忘れていませんか、と問うてきている感じがします。 この

          「シンギュラリティ」を疑う     ーさいたま市立大宮国際中等教育学校2021ー

          何を、どこに訴えようとしているのでしょうか? 2021 広島市広島中等教育学校 ー 2003年東大の円周率問題を想起させてくれる ー

          広島のしかも中学入試だからそこまで話題になっていないのかもしれません。しかし、公立の中学入試問題でこういう文章扱うのは興味深いと感じました。もっというと結構、個人的には文章の選択は衝撃です。だから採り上げてみます。 2020年4月4日朝日新聞 朝刊の記事からの出題です。 日本の義務教育における国語教育は、筆者が言いたいことを汲み取る、いわば「他人に寄り添う」力を問うてきた とまずあります。一方で、今の世の中で求められている力は、その上で「サービス」や「商品」、さらに言

          何を、どこに訴えようとしているのでしょうか? 2021 広島市広島中等教育学校 ー 2003年東大の円周率問題を想起させてくれる ー

          達人になる第一歩は?         2021 東京都立小石川中等教育学校

          「令和3年度 東京都立小石川中等教育学校の適性検査問題の出題の基本方針等」 というものを発表していますが、ありきたりな書き方で本当の思いが分かりにくいと感じました。素材が非常に良いだけに、このシンプルな書き方ではもったいないと思うのでその辺も勝手に想像して解説したいと思います。 今回は、非常に興味深い文章を採用していると感じたので採り上げました。 下記の2つの文章  村田沙耶香「となりの脳世界」  河合隼雄「『出会い』の不思議」 こんな人の育って欲しい、というメッセージの

          達人になる第一歩は?         2021 東京都立小石川中等教育学校

          これからの時代、「弱点」はどう扱うべきか  ー 我が子が先生の言ったことを全く理解していない、と感じたら・・・ ー

          「先生の言ったことを全く理解していない」 もし、自分の子供がそうだったらどうでしょうか。 ひょっとしたら、その子は非常に豊かな「想像力」を持っているのかもしれません。 前に立っている先生が話す言葉から、全く違うことを妄想している子供がいるのも事実です。 一言一言から、いろんなイメージが浮かび上がり、自分で勝手に物語や話を作っているのかもしれません。 この力こそ、今、社会で盛んに言われている「想像力」です。  しかし、学校生活の中(卒業した人なら社会生活で)で、この能力は非常に

          これからの時代、「弱点」はどう扱うべきか  ー 我が子が先生の言ったことを全く理解していない、と感じたら・・・ ー