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アラフィフの就職活動のリアル④

焦りまくって久しぶりに勉強を始めたものの、
実際どんな試験があるのかもわからない。
こんな就職活動も新卒以来やっていないから、
全く見当もつかない。

なんだかなんだでとりあえずSPIの本をざっと一冊見て、
試験と面接に行く日になった。
向かったのは、小さな出版社。
毎日発行する出版物がある、ちょっと特別な会社だった。
もともとマスコミ志望で若かりし頃を過ごした自分にとっては、
魅力的に思えた。

ずいぶん緊張して行った先は古ーいビル。
蔦まで絡まっていた。
出てきたのは初老の男性。穏やかな感じの方だった。
挨拶をして、履歴書と職務経歴書を渡す。
ふんふん、ふむふむ、という声が聞こえそうな感じで、
しっかりゆっくり履歴書を読んでいらした。
緊張…。

しばらくすると、男性は話し始めた。
その方は、他にも別の店舗を経営している社長さん。
私が希望している事務所はほんとうに少人数で、
とある使命のある出版物を確実に毎日出す必要がある。
自分は元となる店舗のことがあるので、
今回採用する人には、この事務所を任せたい。
あなたには、人をまとめた経験はありますか?

…ありません。
人をまとめた経験などない。
当たり前だが、正直に答えるしかなかった。

そうですか。わかりました。
そう言って、それからしばらく、私の今までの職歴や、
志望動機などを静かに聞いてくれた。
私はマスコミで働いていました。
結構激戦を潜り抜けて就職したんです、なんて言わないが、
若干その自負があった。25年も前の話なのに。
そんなのなんの武器にもならないんだよな、と実感した。
大切なのは、その年齢に合ったスキルを持っていること。
この年になって、正社員になりたいのに、人をまとめたこともない。
そんな47歳パート主婦は、たぶんこの会社にはいらない。

では最後に、簡単なテストをします。
筆記用具はお持ちですか?と聞かれ、
張り切って何本もシャープペンと鉛筆を持参していた私は、
はい!持っています!と、その時だけ自信ありげに答えた。
そして渡された用紙は、性格診断だった。
質問に対して自分に当てはまるものに選んでいく。
決められた時間内に。
同じような質問が、アプローチを変えて設定されている。

これだったのかー!
数学いらんやん。
と、ツッコみたい気持ちと、ほっとする気持ちを抱えながら、
必死で答えを選んでいった。
とにかく最後までやるんだ、その一心だった。

結果は1週間以内にお電話します。
社長さんは帰り際に穏やかに言った。
ああ、もう無理だろうな、と私は思った。
採用されれば就職活動を終えられる。
労働時間は9時から17時、土日休み。
給与は年収にすると300万ちょっと。
ここだったら、まあいいんじゃない?なんて、
面接に行くまでは受かるような気持ちでいた私は、
ここ数年感じる機会さえもなかった自分の力のなさに
心底がっかりしながら、1社目の採用試験を終えた。


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