見出し画像

国会審議議事録 踏切事故編 Part2

本日も南海電車の踏切事故に関連しての踏切道の整備について議論されています。
 昭和40年代前半は未だ未発達な部分が多く、警報機も遮断機もない踏切が普通にありましたし、今以上に踏切の直前横断をする車が多々ありました。
 特に、行動経済成長のさなかと言うこともあり過積載のダンプによる衝突事故など、事故が大型化する傾向にあり、踏切道の整備も急務であったとともに、統計的には鉄道会社の責よりも、運転者のマナーによる原因が事故全体では90%(特に踏切の直前横断での事故は約70%)であり、鉄道会社(国鉄を含む)による責任は全体の1%に満たない状況であったと報告されており、自動車ドライバーの取り締まりの強化を踏切道の整備以上に強く求める内容となっています。

○岡三郎君 整備部長……。
 で、私は鉄監局長に一つ聞きますがね。いまからやはりもう三年以上になるけれども、鶴見の大事故があったわけですね。で、鶴見の大事故がある前は、この運輸委員会で、踏切の問題ですね、交通安全の問題について、かなり突っ込んだ質問をしても、踏切に対する対策費というものがなかなか計上しにくいということで、非常に整備がおくれておった。ところが、鶴見の事故があると、びっくりぎょうてんして、政府は踏切対策費というものを大幅に増額して、この整備に当たってきた。その当時も私鉄についても同様に踏切の整備がおくれている。交通安全の面から見るというと非常に問題点が多過ぎる。そこで、当時の民鉄部長に対しても積極的に運輸省が指導をして、私鉄関係の安全対策、特に踏切対策等についてこれを指導するようにと言っておったが、こういう問題についても、私鉄のほうがいろいろと競合する関係もあって、車両の取りかえとか、あるいはスピードアップとか、そういうふうな営業的な面には非常に力を入れるけれども、なかなか立体交差とか、金がかかる面、あるいは踏切対策という面については、非常におくれておるし、軽視しておるという風潮があった。こういう点についても、かなり突っ込んだ話が当時あったわけです。しかし、私はいまこの南海の事故を見て、やはりこれは運輸省の姿勢というものが、何か事故がなければ強い指導ができぬという一つの関係が非常に感じられるわけです。そういう点で政府自体としての私鉄に対する指導、こういうものがどういうふうにいままでなされてきたのか、こういう点について概略の説明を伺いたいと思う。
○政府委員(増川遼三君) 踏切道の改良につきましては、踏切道改良促進法を制定いたしまして、政府といたしましても従来からこれを強力に推進してまいったところでございます。昭和三十六年度から四十年度までの五カ年間に整備した踏切道の数は、立体交差化が八百十カ所、構造改良が二千七百六十九カ所、保安設備の整備一万二千五百五十五カ所となっております。この間に整備統合されました踏切道は七千三百四十五カ所にのぼっております。この結果、昭和三十六年には七万七百三十八カ所ありましたものが、四十一年四月一日現在をもちまして六万一千三百八カ所と大幅に滅っております。また保安設備のない第四種の踏切道の数も、三十六年には六万一千百二カ所ございましたのが四万一千七百六十四カ所というふうに減少しております。踏切道の改良につきましては、今後ともこれを強力に推進していく所存でございまして、改良促進法によるものといたしましては、昭和四十一年度以降五カ年間に、立体交差化の個所が六百カ所、構造改良が二百五十カ所、保安設備の改善、六千九百五十カ所、こういうふうな計画を立てまして、これを目下推進しつつあるわけでございます。
○岡三郎君 それを、いま数で言われましたがね、全体のパーセンテージで大体正確に言ってもらいたいと思います。つまり35年(1960)当時これだけのものをやらなければならなかった、それが40年(1965)度までにどれだけになったか。それから41年度の改良促進法に伴っていまやりつつあるけれども、年度別に見て一体どういうふうな計画になっておるか。そのいわゆる進捗率、特に立体交差化の問題について、金がかかるかかると言っておるけれども、政府自体として一体どの程度する熱意があるかどうか、こういう問題についてずいぶんわれわれとしても過去にやってきたわけです。いまの点について、一体こういう事故があって、大きな対策が打ち出されてくるということにいままでの経過がなりがちであるけれども、私はこういう点を見ると、何か人柱があって、昔の政治と似ているのであって、事故がないと積極的に対策が講じられない。昭和の四十二年の人柱という感じがするわけです。人が死ななければ、大事故が起きなければ、姿勢がきちっと改まって、取り組みができない、こういう感じがするわけです。これは、ずっと経過をたずねて見れば、そういう感じが非常に強い。そういう点で、これから特に取り組みが強化されると思うのですが、いままでのやつをひとつパーセンテージで、大体の経過をもう一ぺん説明してほしい。
○政府委員(増川遼三君) 昭和36(1961)年度と昭和40(1965)年度を対比して申し上げたいと存じます。
 国鉄と私鉄に分けまして、国鉄は、第一種踏切が、36(1961)年度におきまして2870カ所あったのでございますが、これは、40(1965)年度におきましては4111カ所に相なりました。36(1961)年度に比較いたしまして43.3%の増でございます。国鉄の第二種は、36(1961)年度17カ所のものが40(1965)年度には一カ所に集約をされまして、これはわずかに5.8%というふうに減ったわけでございます。これは、すべて第一極のほうに格上げされたという関係であります。次に第三種踏切につきましては、36(1961)年度2,769カ所ありましたものが、40(1965)年度におきましては、9,531カ所となりました。比率は、344%でございます。次に第四種の無防備踏切でございますが、36(1961)年度36,733カ所ありましたものが、40(1965)年度におきましては23,329カ所となりました。63.5%に落ちております。
 次に、私鉄の関係で申し上げますと、36(1961)年度、第一種1,695カ所ありましたものが、四十年度には2,432カ所にふえております。このふえ方は143.5%になっております。第二種は、36(1961)年度429カ所ありましたものが、40(1965)年度には319カ所、74.4%に落ちております。これは、落ちた分はすべて第一種に格上げになったものでございます。次に第三種36(1961)年度1,856カ所ありましたものが、40(1965)年度には3150カ所に相なりまして、その比率は169.7%でございます。次に無防備の第四種踏切、36(1961)年度24,369カ所ありましたものが、40(1965)年度末には18,435カ所でございました。75.6%に減じているわけでございます。
 総合計いたしますると、第一種の増加率は、国鉄私鉄合わせまして143.4%に増加、第二種は71.5%に減りました。第三種は274.2%。それから第四種は68.4%に下がりました。全部合わせまして、36(1961)年度から四十年度にわたりまして、踏切道が改善された数を申し上げますと、36(1961)年度70,738カ所に対しまして、40(1965)年度は61,308カ所、減りました数の比率は86.7%ということになっているわけでございます。
 このようにいたしまして、国鉄私鉄ともに相当力を入れてまいったということを御認識いただけるかと存じますが、これらにつきましては、やはり相当の経費を要するところでございまして、道路管理者側と密接なる連絡のもとに、極力この計画を今後も推進してまいりたいと考えておる次第でございます。こういうふうに、踏切道の改良並びに整理統合ということも行なわれましたことによりまして、事故の発生件数も非常に減っておるのでございまして、国鉄私鉄合計で申し上げますと、36(1961)年度には発生件数5,483件でございましたのが、40(1965)年度におきましては4,208件に減っております。
 それから踏切種別ごとの事故の発生の状況を申し上げますと、第一種の踏切におきまして、36(1961)年度におきましては311件でありましたものが、40(1965)年度におきましては487件ということになっておりまして、こういうりっぱな設備を備えた踏切におきまして事故の発生がふえておる。踏切百カ所当たりの事故件数で申し上げますと、36(1961)年度が6.8件でありましたのが、40(1965)年度は7.4件というふうに比率も伸びておるわけでございまして、これは、原因を探求いたしますると、やはり直前横断とか遮断機突破というようなことが非常に多いわけでございまして、これらが、このいま申し上げました直前横断、遮断機突破と、こういった面だけで見ましても、全体の踏切事故のうちでその70%を占めておるということでございました。非常に自動車の運転者側の順法観念というものの向上が必要であるというふうに痛感しておるわけでございます。

第一種踏切

 なお、第二種踏切につきましては、36(1961)年度77件ありましたのが、40(1965)年度は49件に減っております。百カ所当たりの発生件数も、比率も減っております。第三種につきましては、36(1961)年度に971件ございました。百カ所当たり発生件数が21件でありましたのが、四十年度におきましては1,494件になっておりまして、百カ所当たりの発生件数は9.4件というふうに、これは大幅に比率は減っておる次第でございます。

第2種踏切


第三種踏切

 次に、第四種の無防備の踏切につきましては、36(1961)年度4,124件、百カ所当たりが6.7件でございましたのが、40(1965)年度におきましては2,478件、百カ所当たり5.9件。とれも比率としては漸減をいたしておる次第でございます。

第四種踏切
出典:中部運輸局

 先ほどちょっと触れました事故の原因別の状況を申し上げますと、直前横断の構成率が六五・九%、遮断機突破等、の停止すべきにかかわらず無理に突っ込んだというようなものが四・六%というふうになっておりまして、それから運転の誤りによりますのが一九%、鉄道側の責任に帰しますもの、たとえば踏切手の誤りというようなものが0.9%、1%足らずでございます。
その他9.6%ということになっておりました。今後まあ自動車側の注意を喚起し、十分な取り締まりをやっていただくことが必要であると同時に、やはり踏切の改善あるいは統廃合、要すれば立体交差化にしまして、踏切を極力なくしていくというふうにすることが、最も踏切事故防止の最大の策だと考えておりまして、今後、従来の計画をさらに再検討いたしまして、促進強化につとめたいと考えている次第でございます。
○岡三郎君 まあいまの説明を聞くとですね、かなり手を打ってきたというふうに言われて、その計数がいま説明されたわけですが、まあいろいろと踏切問題についての事故は、実際に言うてかなり大きな事故にこれがなる危険性がある。まあこういうことで、特に都会においてはこういう面についての対策が非常に進捗しておるようですが、たまたま、いま言ったような南海電鉄のようなああいうふうな無人踏切といいますかね、やはりそういうふうな問題が大事故を起こす。これは突発的ですから、無人踏切というものについて、人口集中しているところではほとんど閉鎖して、そうして通路というものをある程度集約してきて、それからその立体交差についてもかなり積極的に取り組んできているように見受けられますが、無人踏切の場合において、もう一ぺん検討して、閉鎖すべきものはきちっと閉鎖させる。それからどうしても交通上必要な問題については、警手を置く、警報機を備えつけるなり、そういう面の点検が非常におくれておるのではないかという気がするのですがね。その点についてどういう指導をしておるのか、無人踏切についての指導。特にだんだんだんだん電車が高速度化しておりますから、非常に事故が大きくなると思うのです。そういう点についてどうされているわけですか。

続く

国鉄があった時代というサイトを20年以上運営しており、オリジナルのブログ記事、youtubeも配信しています。 オリジナル記事を毎週一本程度、アーカイブな記事も毎日一本ずつアップしていきます。 よろしくお願い致します。