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新しいキャリア支援体制の模索

社会的情勢の変化

近年の日本国内の社会情勢は目まぐるしく変化し、人々の生活にさまざまな影響を及ぼしています。特に、生活の質の向上に直結する仕事に関する問題は、私たちの喫緊の課題であります。仕事に関する問題といっても、その特徴は多岐にわたり、老若男女すべての人に影響を及ぼしています。仕事に関する問題を細分化すると、雇用、採用、労働条件、ハラスメントなど数多く挙げられます。特に、雇用や採用に関する問題は近年特に重要視されている傾向があります。それは、特にバブル崩壊から金融危機、気候変動の影響による天候不順や地震などの自然災害、さらには最近では全世界的な感染症の影響などさまざまです。いつの時代もその時代特有の危機が存在し、私たちに課題を突き付けてきます。上記のような問題は、すぐさま人々の仕事に影響を及ぼし、ひいては生活の質に直結します。


現状の支援体制


そのような中で現在、仕事に関して、どのような支援が行われているのでしょうか。まず、公的機関での公共職業安定所(ハローワーク)での職業紹介や相談業務、セミナーの開催などの支援が実施されています。このハローワークの事業では、公的機関としてほぼすべての支援メニューが無料で受けられるという特徴があります。さらに、求人情報の量でいえば他の機関と比較して圧倒的な量を有している点も特徴のひとつにあげられるでしょう。また、民間の事業者でいえば、無料の求人情報誌や求人サイト、人材派遣や有料の人材紹介会社など、ハローワークと比較して求人の数が劣るものの、支援のメニューがよりきめ細やかな点が挙げられます。より、サービス面に特化した特徴があります。さらに、個人にアプローチするエージェントによる支援も近年多くなってきているように見受けられます。エージェントは企業に所属する形態と個人として活動する形態とがあります。より帆走型の支援である点が特徴です。しかしながらエージェントによって支援の内容に差が出てしまうというネガティブな特徴も挙げられるでしょう。


多様化


このように現在においてはさまざまな機関で仕事や労働に関する支援が行われています。しかしながら近年、既存の支援ではすべての人によりきめ細やかな支援が行き届かなくなっている傾向にあります。それは仕事をする人と働き方の多様化です。ひと昔前では、男性は外で仕事に行き、女性は自宅で家事をするというのが当たり前のように思われていました。しかし戦後以降、女性の社会進出が進み就業者の男女の差は縮まってきているように思われます。さらに女性の管理職が増加し、もはや男女の役割分担はほぼないに等しいのではないでしょうか。加えて、高齢者の年金受給開始年齢が引き上げられ、それに伴い定年時期も徐々に高年齢化している状況です。そのため、年齢性別にかかわらず、多くの人が仕事を求めている現在の状況であります。

新たな問題


働き方が多様化することによって新たな問題が生じてきました。これまでは年齢や性別、業種や職種ごとのカテゴリーごとに、おおまかに分類した問題があり、そのカテゴリーごとにアプローチしていくという支援の体制でした。しかし、近年多くの人が仕事を求め、さらにはさまざまな産業や職種が新たに生まれています。そのために、それぞれに生じる問題もさらに細分化され、もはやカテゴリーごとに対策を講じることに無理が生じるようになってきました。


カテゴリーから個人へ


そのようなことから、カテゴリーから一人ひとりへの支援の体制へと柔軟に対応していくことが求められるようになってきました。よりきめ細やかな支援体制の構築を図る観点から、平成30年に「職業能力開発促進法」(能開放)が改正されました。能開法では「職業能力開発推進者」としてキャリアコンサルタントの資格が国家資格化されました。ここでは、既存の就職や転職支援に留まらず、個人への能力開発の推進やカウンセリング技法を用いた自己理解の促進・意思決定へのサポート、さらにはキャリアをその人自身の人生ととらえ、より自分らしい働き方という狭義のキャリア支援から人生設計の構築の支援といった、より広義のキャリア支援へと支援の幅を広げています。より個人に寄り添いながらの帆走型の支援を専門的知識と技能を有した専門家が支援を行うように支援体制が改善されてきました。


より専門的な支援へ


仕事にまつわる問題は一人ひとりそれぞれ違うものとしてこれからは認識する必要があります。キャリアコンサルタントとして専門的な知識と技能で支援を図ることがこれからの時代には必要です。キャリア支援のプロセスに則り、支援対象者との信頼関係構築から判断・意思決定の支援などを指示・命令ではなく、助言・指導という立場で行います。ここでは、支援対象者に対して個性や志向性を重要視する姿勢があります。支援対象者に説得をするのではなく、効果的な働きかけを模索する姿勢です。キャリアコンサルタントには支援対象者がより自分らしい人生設計の構築を図るために後押しし、支援対象者の自由と尊厳を最大限尊重し、ともに将来に向かって進んでいく帆走型の支援が求められています。

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