モチベーションを持続させるものとメンタルヘルスを阻害させるもの

仕事におけるモチベーションとはどういうものだろう。多くの給与とかやりがいとかステータスとか、それは人それぞれだろう。僕の場合のモチベーションを維持させるものはどのようなものだろうかとときどき考えることがある。一方で、自分自身にとってのメンタルヘルスを阻害させる要因とはどのようなものがあるだろうかということも考えることがある。僕はもともと、現職とは全く違う業種・職種についていた。しかし、社会的経済的な出来事による影響を受け、たびたび雇用や労働にまつわる危機に見舞われてきた。その際に常に考えてきたことは、自分にもっと能力が備わっていればこのような危機から脱することができるはずだということをよく思っていた。まあ、今から思えば、まさか今このような仕事に就いているとは思いもしなかったが。いくら自分がやりたい職業に就けたからといって、そのような危機に遭遇しなくなるわけではない。今回まさに、そのような今まで思いもしなかった危機に遭遇することになった。

僕はキャリア転換を果たすために、キャリアコンサルタントの資格を取得し現職に就いた。そこで努力を重ね、経験を積むことで自身の成長につなげていこうと思っていたし、それは今も変わらない。自己成長によって社会問題の解決に取り組み、社会貢献していきたいと考えてきた。取得した資格を生かすために、就労支援の仕事を志すようになった。しかしながら前職ではそのような仕事に従事していながら継続することが困難になった。そのために、就労支援を別の角度から行うために現職の仕事についた。ところが、自分の見込みの甘さもあって、もともと自分が思い描いていた仕事がほとんどできないことがわかった。それでも、多くの支援対象者(CL)の相談を受けることによって、生活の困窮という社会の問題をみていこうと思っていた。その中には当然、就労支援が必要な場合もあり、その際には自分の経験とスキルを生かすことができるものと考えていた。

よく一般的に、仕事上でモチベーション(やる気のようなもの)の重要性について議論される。それは外発的なものか内発的なものか、それともその両方が重要かという議論がなされる。自分も当然、そのどちらも重要だと考えているが、特に自分の場合は内発的動機づけを重要視していて、その影響を色濃く受けているように感じている。その自分にとっての内発的動機づけとは、CLの話を聴いて少しでもCLの負担を軽減させること、その悩みや葛藤といった課題を解決へと結びつけられること、何より、CLのありがとうといった言葉や明るくなった表情を見せてくれることが、自分にとってのモチベーション、すなわち動機づけとなるものである。

そのモチベーションを向上、維持させることが困難になることは、自分にとってはメンタルヘルスに影響を及ぼすことになってしまう。世間一般的には仕事などでしんどくなった時には気分転換を図るなど、セルフケアをするようにといったことを言われる。もちろんその通りなのだが、自分の場合にはそのようなセルフケアはあまり意味をなさない。なぜなら、自分の動機づけのもととなるものは、CLの問題解決へ向けて様々な取り組みを行うことであり、たとえ少しでも可能性があるなら、それに賭けたいという思い、さらにはさまざまな創意工夫による努力のもとに解決へと結び付けようとすること自体が自分にとってのモチベーション、すなわち動機づけである。そのようなことができなくなった時点で、自分の場合はたちまちメンタルヘルスの支障をきたしてしまうことが今回わかった。単純に気分転換をして気持ちが楽になるなど、僕の場合はないのである。

これまで何度も、メンタルヘルス不調のようなことがあった。身体的症状が現れることもあった。しかし今回、自分にとってはまさかと思うような症状に見舞われることになった。初めは手のかゆみから始まってそれが足にもひろがり、やがて体全体へと広がった。湿疹のようなものを伴い、強いかゆみに襲われてしまった。初めは寝具の影響かと思い、すべて新しいものに変え、ベッドそのものも長年使用していたものを取り換えた。それで症状は改善されると思っていたのだが違った。次には真夏ということもあった汗のせいかもしれないと思い、もちろんそのせいもあったが、そのようなことはこれまで一度もなかった。皮膚科で診察もしてもらったが、その際にストレスによる湿疹かゆみが症状として現れる場合もあるという診断を受けた。

今は快方へと向かっている。自分でも精神的な負担がようやく軽くなったと実感している。まあ、気温が下がってきたということもあるかもしれないが、それでも例年このようなことがなかったために、非常に困惑した。自分自身、メンタルヘル不調にともなう身体的症状がこのような形で現れるとは思いもしなかったために大変驚いたし、かなりの精神的な負担になっていた。これほどまでに、身体的心理的健康が仕事に影響を及ぼすなど思いもしなかった。本当にしんどかった。まだ完全ではないものの少しずつ回復に向かっているで、おそらく環境が完全に変われば症状もなくなるだろうとみている。

もうひとつ付け加えるとして、仕事の裁量とか自由度ということも少なからず影響を受けている。このような面談の仕事は、これといったひとつの形ややり方があるわけではない。状況によって柔軟に対応していかなければならない。しかしながら今回は、表象的には自由度があるように見えるが実際には、ある方向性が存在していてそこに導いていくようにといった、目に見えない空気感のようなものが存在していた。そこからそれると叱責を受けるということもたびたびあった。もはや裁量や自由度はあってないようなものだと感じていた。そのようなこともメンタルヘルスの不調の要因だろうと思っている。

モチベーションという動機づけとメンタルヘルスは表裏一体なのかもしれない。働くうえでこのような動機づけやメンタルヘルスは非常に重要である。特に近年、その重要性については認識されるようになってきた。しかしながら現場のレベルではまだまだ認識が甘いと言わざるを得ない。職場において業務遂行にかかわる重要性については十二分に認識されているが、このようなソフトな部分についてはまだまだ問題が山積している。業務遂行にあたって重要なことについて、従業員のモチベーション維持とメンタルヘルス・マネジメントはもっと重要視してしかるべきだと思う。管理監督者は健全な職場環境の整備と管理を徹底しなければならない。もちろん、その構成員である従業員も相応の協力が必要なことは言うまでもない。本来なら、そのような取り組みの上に、業務遂行の出来にかかわるという議論がなされるべきではないだろうか。働き方改革などとよく聞かれるが、そこでの議論はただ単純に、時間の有効活用と効率化でしかない。動機づけやメンタルヘルス・マネジメントといった、人間の根幹である身体的心理的な側面への視点なくして、健全な職場環境の管理と企業としての果たす役割についての議論などあり得ないとさえ思う。



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