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生成AIとリンクした暗号業界の成長と投資視点

 2023年後半からのハイテク業界は、生成AIをテーマとした復活の兆しが顕著になってきた。帝国データバンクが行ったアンケート調査では、国内企業の6割超が生成AIの活用を検討すると回答している。機械学習を重ねることで、どこまでも成長していくAIは、既に膨大なデータを保有している大企業ほど相性が良いが、中小企業や、士業のような個人の専門職でも、業界全体で業務に役立つAIを育てていく方法が模索されている。

しかし、現状のAI活用には問題点も山積している。一般的な企業では、ChatGPTのような汎用型AIをそのまま利用するか、そこに社内データを学習させたシステムを構築する形になるが、元となるAIモデルは外部のリソースを利用することになるため、社内データの漏洩に関する問題が、まず1つ目としてある。OpenAI社の利用規約では、ChatGPTに入力した文章はGPTの学習データとして再利用されるのが基本ポリシーになっている。

次に、ChatGPTはAI学習した情報の出所を示さないため、出力した知識の信頼性についての問題。さらに、特定AIモデルのシェア率が高まりすぎると、バイアスのかかった情報が社会に広がる懸念もある。いまのところ、企業が活用を検討している生成AIサービスは、ChatGPTが9割と突出している。

生成 AI の活用に関する企業アンケート(帝国データバンク)

企業のChatGPT活用には思わぬリスクが孕んでいるのも事実だ。韓国のサムスンは、2023年3月から従業員のChatGPT利用を認めたが、それから20日間で3件の情報漏洩事案があったことを発表している。そのうちの2件は、社内システムのエラー解決や最適化をするため、ソースコードをChatGPTに入力してしまったこと。もう1つは、社内会議の録音データをテキスト化したものを、ChatGPTに入力して議事録を作成しようとしたことだ。

いずれも、社員は情報漏洩のリスクに気付かずにやってしまったことだが、外部の汎用AIに一度入力してしまったデータは、他のユーザー向けに再学習されてしまう懸念がある。

こうした問題点から、企業がChatGPTを活用する場合には、外部の学習データとは別に、社内データを学習させる専用システムを構築して連携させる方法が検討されている。そのため、企業用途のAIプラットフォーム「Watson」を主力商品としているIBMは、ChatGPTの台頭を、ライバルというよりは、新たなクライアント獲得のチャンスと捉えている。

AIモデルの運用では、特定の企業や団体に権力とデータを集中させるのではなく、公正で中立的な管理体制が整った分散型のシステムが望ましいという考え方があり、将来的にはブロックチェーンとの連携が進むことが予測されている。

テクノロジーのトレンドとして、生成AIの台頭によりWeb3への注目が薄れたと見る向きもあるが、ブロックチェーンを基盤とする暗号資産やWeb3系サービスと生成AIとの相性は良く、AI市場の成長とリンクして様々な暗号サービスが生まれてくることになる。わかりやすい例としては、生成AIで出力したコンテンツをNFT(非代替トークン)として収益化することは容易となり、アイデア次第でユニークなNFT資産を作ることができる。

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