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Day8「ガバメントクラウドの費用とボリュームディスカウント」 @ ガバメントクラウドについて考えるAdvent Calendar 2022

この記事は、ガバメントクラウドについて考える Advent Calendar 2022のDay8「ガバメントクラウドの費用とボリュームディスカウント」となります。

※こちらの記事は基本的には公開情報を元にしていますが、個人的な妄想・意見も含まれておりますので、ご承知おきください。

このAdvent Calendarは、日々活動している中で課題として感じることなどをどこかで整理しなくてはいけないと思っていて、ちょうど良いタイミングだったので、全日自分が思うところを書くというスタイルにチャレンジして、どこまで続けられるかやってみたいと思います。
https://adventar.org/calendars/8293

以前、以下のツイートに多くのことをまとめてみたのですが、改めて整理していきます。

ガバメントクラウドの費用について

さて、Day7までは政府が利用するクラウドとしての在り方についてまとめてきましたが、ここからは実務的な話を整理していくことになります。ここから数日間は費用感について整理していくことになりそうです。

まず費用については、「デジタル庁におけるガバメントクラウド整備のためのクラウドサービスの提供 -令和4年度募集-」の中の「クラウドサービス基本契約書」を見ていきましょう。

以下のように、そのクラウド事業者が提供するサービスごとに、単価とその割引率を入力して応募するようになっているようです。

また、主権免除について説明した際にも出てきましたが、令和4年度募集と令和3年度募集とでは、変更された文言として、「サービス利用料金が過去3年以上継続して値下げ傾向にあり、その実績が一般に公開されていること。なお、価格上昇等が見込まれる場合、受託者は事前に値下げに関する協議に応じること。」となっており、値引きに応じるように文言で記されているということになり、センシティブになっていることがわかります。

しかしながら、ガバメントクラウド先行事業の中間報告の資料内の試算条件には、AWS Pricing Calculatorを活用すると書かれており、つまりは定価で試算していることになると想像します。

https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/information/field_ref_resources/8c953d48-271d-467e-8e4c-f7baa8ec018b/4912aad2/20220914_news_local_governments_outline_03.pdf

パブリッククラウドの費用感

そもそもパブリッククラウドはクラウドロックインの文脈で、価格が公開されているから不透明な範囲が今までよりも少なくなると言われているわけですので、価格的なコントロールがほぼされないという認識を持っている方も多いのではないでしょうか?その公開価格でフェアに購入するというのが根本的な考え方かと思っていました。

ちなみに、よくあるクラウドは共同利用しているから、みんなで利用すれば安くなるんだというのは本当に起きるのかは懐疑的と言われます。それはたとえ、多く利用としたとしても公開される価格が変わるわけではないからです。もう既に共同利用した前提の価格で定められているからですね。ここからもし安くなることがあるとしたら、それは共同利用したからでなく、値引きだと思います。

このあたりを踏まえて、ガバメントクラウドの費用感を考えていきましょう。まず、政府でどれだけの量を利用されるかわからないものについて、ボリュームディスカウントを掛けられるのかというところです。各府省・自治体に対して利用調査などしていると思うのですが、あくまで調査であり最終的にどうなるのかは未知数です。通常の値引きというのは、規模に応じてされるものであるため、単価をデジタル庁に提示する際に値引きするというのは値引きでなく、投資であるような気がします。

どの程度の規模感でガバメントクラウドが利用されるかわかりませんが、民間企業のパブリッククラウド利用と比べても、政府系のシステムがとんでもない値引きをする規模感とは考えにくいような気がしますし、特にクラウドネイティブを目指すにあたっては、利用料分だけ支払う形式になっていくのでしょうから、やはり規模感を掴むのは非常に難しいと言えます。

値引きを加速させる他の要素

クラウドプロバイダの種別にもよるのですが、クラウド事業以外にも情報システムに関わるものを提供しているかは影響してくると思います。例えば、Microsoft社はOfficeなどの用途で導入されており、そういったものとクラウドのセットで包括契約などされることもあるかと思います。基本的にはガバメントクラウドとしての枠組みで契約するものと、それらは調達が別になり、デジタル庁が契約の主体者として考えられた場合、クラウドとOfficeの包括契約が成立して値引きの恩恵を受けられるのでしょうか。

このように値引きは、複数の商材の組み合わせをする代わりに行われるものという側面もあるため、クラウド以外の項目との包括した契約のレバレッジが効きにくいということもあると思います。これと同様のものは、12/20に書こうと思っていたクラウド事業者との高い保守レベル契約になるかなと思いました。デジタル庁から提供されるガバメントクラウドとしての保守契約は、標準的なレベルの保守契約だとすると、基幹系のシステムに適用するには、より高度な保守契約をすることが求められると思います。ただそれは、やはりガバメントクラウドとしての枠組み外で購入するものになり、Officeと同様に値引きのレバレッジが効きにくいのではないかと推察します。

まとめ

今回は確かな根拠のないものについて推測するということになり、断定が難しい回となってしまいました。一度安くしてしまうと後戻りできなくなってしまうでしょうから、このあたりはクラウド事業者間でもお互いを見ながらということになるとすると、劇的な値引きというのは期待できないのではないかと思っているところです。

執筆後記

このようにガバメントクラウドを考えるAdvent Calendar 2022では、以下の流れで進んでいくことになると思いますので、Day8以降もお待ちいただければと思います。

  • ガバメントクラウドの在り方

  • ガバメントクラウドの整備における課題感

  • ガバメントクラウドの利用における課題感

  • ガバメントクラウドの今後について考えてみる

Twitterなどで情報発信していますので、もしよろしければ覗いてみてください。