この記事は、ガバメントクラウドについて考える Advent Calendar 2022のDay6「海外のクラウド利用動向」となります。
※こちらの記事は基本的には公開情報を元にしていますが、個人的な妄想・意見も含まれておりますので、ご承知おきください。
このAdvent Calendarは、日々活動している中で課題として感じることなどをどこかで整理しなくてはいけないと思っていて、ちょうど良いタイミングだったので、全日自分が思うところを書くというスタイルにチャレンジして、どこまで続けられるかやってみたいと思います。
https://adventar.org/calendars/8293
以前、以下のツイートに多くのことをまとめてみたのですが、改めて整理していきます。
クラウドファースト先行国アメリカ
元々日本も米国のクラウドファーストを参考にクラウドバイデフォルトで進んできたかと思いますが、それも少し昔になってきました。実は米国は2019年時点でクラウドファーストからクラウドスマートへ舵切りをしています。その中身を少し見ていきましょう(DeepLの直接翻訳を付記しておきます。)
このように、クラウドによるメリットを得るために、情報システムのニーズに応じてクラウドに移行するための施策を打っていきましょうということになっています。
具体的なクラウド実装に向けたガイダンスを出すということになっています。クラウドファーストは単純にクラウドに行こうということだったところから一歩踏み込むようなイメージでしょうか。
ここでは日本とは真逆で、世の中をリードしていく業界がハイブリッド・マルチクラウドが効果的で効率的であることを証明しているということになっています。そして、クラウドは単一のものを指すのではなく、いろいろなクラウドをまとめてクラウドというソリューションと考えましょうと書かれています。
アプリケーションをそのままクラウドに上げれば移行費は掛からないが非効率期なプラットフォームが継続されてしまうということと、移行費は掛かってもプラットフォームが効率化されることを比較して検討しようということが書かれています。どっちがいいということではないということです。
そして、クラウドの採用をうまく選択できるようになるにはそのための人材が必要だということが強調されています。
ここでも繰り返されていますが、画一的なアプローチでなく、自分で決断が下せるようにならないといけないということになっています。
米国エネルギー庁の具体化したCloud Smart Reference Guide
これらは米国政府全体の方針なので、比較的大枠の説明になっていましたが、各省庁においてはもう少し具体化された内容になっているので、こちらでは米国エネルギー庁の”Cloud Smart Reference Guide"がインターネットに公開されていますので、こちらを深堀りしていきましょう。
重要なポイントを冒頭にて整理しています。
また、このガイドの目的が明確に描かれています。
こちらには、具体的に理解しておくべきことが整理されています。
では具体的にどうやればいいのかについて重み付けの決定するためのマトリックスが用意されています。時間や構築コスト、TCO、コンプライアンスなどでスコアリングすることによって最適な移行方法を選択するようになっています。
また、選ばれたクラウド移行手段の中でも、こちらのように、商用製品を使っているか、それがクラウド上でサポートされるか、特定ベンダー併存しているか、扱うデータの機密性が高いか、クラウドネイティブ機能が利用可能かなどについて、選択フローチャートが確立されていることがわかります。
また、その後にはクラウドの整理がされていることもわかります。オンプレミス・オフプレミスというのは、収容する場所のことを言っているとまとめています。そのため、プライベートクラウドがオンプレミスにあるケースもあれば、オフプレミスにあるケースというのも述べられています。先日の記事で私なりの整理をしましたが、ここでの整理を簡単にサマリしてみましょう。
プライベートクラウド
パブリッククラウド
クラウドプロバイダが所有
膨大なリソースプール・高い拡張性・迅速性に有利
ハイブリッドクラウド
標準化もしくは独自の技術によって結合された異なるクラウドの組み合わせ
クラウド変革期においてパブリッククラウドとオンプレミスの相互依存的なワークロード利用等に適している
プライベートクラウドでは移行できない依存性の高いアプリケーションをサポートしながら、短期間でできるだけ多くのアプリケーションをパブリック・クラウドに移行できるオプション
プライベートクラウドに移行する準備ができていない依存性の高いアプリケーションをサポートしながら、短期間でできるだけ多くのアプリケーションをパブリッククラウドに移行するオプションが必要な場合
オンプレミスからプライベート、パブリック、ハイブリッドの各シナリオに移行する際に、パブリッククラウドとプライベートクラウドを橋渡しすることができる
データおよびワークロードが、プライベート、パブリック、ハイブリッドの間で相互運用可能
最後に、アプリケーションやワークロードがクラウドに適しておらず、オンプレミスの状況に留まる必要がある、またはコロケーションの配置の候補となる可能性について検討されている内容について紹介されています。
現在がOracle RACで構成されている場合にどうすべきかというシナリオです。ここでは引き続きプライベートクラウドにOracle RACを残し、その他をパブリッククラウドで構成するハイブリッドクラウドで提供するのがパターン①、データベースをリファクタしてパブリッククラウドに合わせるパターンが②となっています。このように技術的制約と選択を比較できるようにパターンを用意する能力が求められ、これを紐解ける人材が必要というのも頷けます。
この資料は既に3年くらい前に作られたものなのですが、クラウドの選択(クラウドスマート)を推進する上ではかなり網羅的で参考になりますので、ぜひいろいろ読んでみてください。
カナダのRight Cloud Selection Guidance
このクラウドスマートの動きは米国だけではありません。クラウドスマートという言葉ではないものの、カナダ政府ではRight Cloud Selection Guidanceという指針が出されています。
https://www.canada.ca/en/government/system/digital-government/digital-government-innovations/cloud-services/government-canada-right-cloud-selection-guidance.html
こちらも様々な項目ごとにどのような基準でクラウドを選択すればよいかというのが書かれているのですが、私がマトリックス化したものがあるので、以下をご確認ください。
判断基準を優先順位で分類し、それぞれがどのような項目を重視するかによって、どのタイプのクラウドを選ぶかにたどり着けるようになっています。また、ベンダーロックインとクラウドタイプ(IaaS/PaaS/SaaS)の選択についてもわかりやすい図が描かれていますので、こちらに共有しておきます。SaaSに行けば行くほど他のサービスとの違いは大きいが標準的でなく、IaaSに行けば行くほど標準的だが違いがないといったことを視覚的に理解できるようになっています。
オランダのクラウド解禁
最後に、オランダについては、クラウド解禁がニュースになっていたので、取り上げたいと思います。
以下の背景があるそうです。このクラウド利用指針のことを「National Cloud Policy」と呼ぶそうです。
しかしながら、一定の基準があるところも特徴的です。このように機密性やデータ・システムの種別に応じて、クラウドを使い分けるということが海外諸国では一般的かと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか?毎回書き出すと止まらなくなってしまいますね。海外政府のクラウド利用動向を見ていただくと、これらが数年前には既に整備されていたことに驚きます。こちらを見ていただいた結果、我々がどうするかというのが、このAdvent Calendarの取り組みであり、皆さんがどう思うかというところに寄与できれば幸いです。
明日は「経済安全保障と主権」について、まとめていきます。
執筆後記
このようにガバメントクラウドを考えるAdvent Calendar 2022では、以下の流れで進んでいくことになると思いますので、Day5以降もお待ちいただければと思います。
ガバメントクラウドの在り方
ガバメントクラウドの整備における課題感
ガバメントクラウドの利用における課題感
ガバメントクラウドの今後について考えてみる
Twitterなどで情報発信していますので、もしよろしければ覗いてみてください。
https://twitter.com/jnakajima1982