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喫茶 翡翠【京都】

先日発売した新装版の「47都道府県の純喫茶 愛すべき110軒の記録と記憶」は、今は亡き著者の山之内遼さんがご執筆された本文を2013年当時のまま、掲載しております。ここでは、本書でカバー仕切れなかった当時から大きく様子の変わったお店を、可能な限り紹介していきます。(これをご覧になられた店主の方で、ご掲載を希望される方は編集部・白戸までご一報ください)

現在、京都にある「喫茶 翡翠」は岡田有子さんがマスターを務めている。前マスターの中井秀雄さんから岡田さんに経営のバトンが渡されたのは2018年のことだった。前マスターの中井さんは、2016年頃からお店を引き継いでくれる人を探していたという。

その頃岡田さんは、ガスメーターを扱う会社に勤めていた。その営業先の中に「翡翠」もあり、中井さんが後継を探していること自体は立ち話程度に聞いていた。だが、まさか自分が店を引き継ぐことになるなんて、当初は考えていなかったという。

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その後、少し時間が開いた2017年の12月。久しぶりに翡翠を訪れた岡田さんに、当時のマスターである中井さんは「お店を引き継いでくれないか」と正式に打診した。そして、この話を岡田さんは「あっさり」引き受ける。そこからの岡田さんの動きは驚くほど早い。

翌2018年の1月にガスメーターの会社を退社し、2月にはもう店頭に立っていた。それにしてもなぜ、そんなにあっさりとお店を引き継ぐことを決意できたのか。

「外回りの仕事にも疲れていたし、周りの家族も友人も誰一人止める人がいなかったのよ(笑)。その上、一応1年は中井さんがつきっきりで教えくれるという約束だったのに、その年のGWには中井さんの体調が悪くなってしまって、実質引継ぎ作業は3ヶ月しかなくて。それから2年、本当にあっという間でした」

笑いながら、あっさり決めた喫茶店継承の経緯を話してくれた岡田さんだが、さらに驚くのが、彼女は「珈琲が飲めない」という。そして、飲食店で働いた経験もなければ、無論お店を経営したこともない。そして、お店を引き継ぐことを決意した時、岡田さんは47歳だった。

正直、年齢なんて関係ないと言われるかもしれない。しかし、ここまで新しい挑戦をするときにはどうしても、年齢的なものを気にしてしまわないだろうか。

岡田さんと話していると、そんな壁などないように思えてくる。

「もともと喫茶店に対して特別強いこだわりというものもないんです。今は毎日お店を開ける。一人でも来てくれる人がいるなら、お店を開けておく。強いて言うなら、中井さんがこだわった「手作り」の料理とお菓子には、私なりに磨きをかけました。中井さんが作った空間はそのままなので、常連の人も安心して来てくれています」

現在、翡翠は岡田さんを含めて7人でお店を回しているという。

先代が築いたものを大切に守りながら、そこに新しい強みを加えた翡翠の扉は今も毎日開かれている。

じゅんきっさ ひすい
京都府京都市北区紫野西御所田町41-2
075-491-1021
9:00〜21:00(日曜は〜20:00)
無休
市バス・「北大路堀川」下車徒歩1分
ブレンドコーヒー 430円
カフェオーレ 500円
ナポリタンスパゲティハンバーグ添え 920円
チーズトーストセット 700円


写真:山之内遼 文:白戸翔


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