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【基礎教養部】高校生からのゲーム理論

AIRDOの設立から衰退

1996年11月14日に北海道国際航空株式会社として設立されたAIRDO。北海道で養鶏業を営んでいた浜田輝男氏が、北海道と東京を結ぶ航空会社として設立。設立の背景には当時の北海道と東京を結ぶ交通事情があった。航空会社が設立される以前は、北海道と東京を移動する手段は道内を鉄道を移動した後、青函連絡船で青森へ移動しそこから寝台列車に乗らなくてはならず移動は一日かけて行われていた。そんな不便な交通事情を一気に解決したのが飛行機である。東京-新千歳間を飛行機が発着するようになってからは移動が一気に改善され、70年代当時の東京-新千歳間の乗降客数は世界一にまで飛行機による移動は一般化した。当時の航空業界はJAL、ANA、JASの三社による寡占状態にあったことから設立者の浜田輝男氏が一石を投じるべくAIRDOを立ち上げた訳だ。
以上がざっくりとした立ち上げまでの経緯になる。立ち上げまでの理由としては、浜田輝男氏が養鶏業を営んでいたことが大きいだろう。卵は物価の優等生と言われるように、数十年値段がほとんど変わっていない。これにはコストダウン等の経営努力がある。寡占状態でコストダウン等の経営努力を怠っている航空業界を見て、競争を持ち込むという強い意思があった。

そんなAIRDOであったが実際は、就航開始から4年で経営破綻をしている。
養鶏業で成功した浜田輝男氏がなぜ経営破綻にいたったのかを考察して見る。

書籍内での解説

AIRDOが設立に際し参考にしたのがアメリカのサウスウエスト航空である。
サウスウエスト航空はテキサス州内の都市間を結ぶ航空会社として就航を開始した、このテキサス州内の都市間を結ぶ航空会社というのがポイントであり、これはアメリカの航空業界からすればニッチ路線に当たる。一方AIRDOはいきなり東京-新千歳間という、いわばドル箱路線に参入をしてしまった。当時の東京-新千歳間を就航していた航空会社はJAL、ANA、JASという超大手企業で、サウスウエスト航空が相手にしていた地方航空会社とは別者である。新規参入の鉄則であるニッチ路線ではなくドル箱路線から参入してしまったことで、結果的に既存企業はAIRDOが発着する時間帯のみAIRDOの値段に合わせて運賃を引き下げた。
このときの既存企業はAIRDOに値段を合わせたときのデメリットとメリットが見えていたのかもしれない。それらを踏まえて作成したのが以下のゲームである。



これは参入した場合と参入しなかった場合のそれぞれの利得を表した図になる。

参入企業が参入した場合、既存企業は運賃を高価格にするか低価格にするか選択しなければならない、高価格をつけた場合得られる利得は100。しかし、低価格にした場合得られる利得は0か300になる。既存企業が低価格を選ぶと参入企業はこれに抗戦するか退出するか選ばなくてはいけないが、抗戦を選んだ場合利得が-300になるため退出することを選ばざるを得ない。よって既存企業は低価格をつけた場合、参入企業が退出することが目に見えているため低価格を選択する。

一方で参入しなかった場合、参入企業の利得は0になる。参入した場合の利得は-100となるので今回は参入しないことが参入企業の解になる。

では参入企業が参入する余地はあったのだろうか、参入する余地があるとすれば旭川など道内地方空港と東京を結ぶ路線が現実的であったかもしれない。AIRDOが千歳─ 羽田線のドル箱路線に就航した際にしようした機材は準大型機であった。旭川などニッチ路線であれば小型機で済み燃料代や機材のリース料などを節約できた。開業資金も千歳─ 羽田間よりも少なく済んだであろう。市場規模が小さいと参入した際の利得も少なく、退出した際は資本をすべて失うため相対的に損失が大きい、しかし市場に残った際にかかる費用が少額で済むという利点がある。
これらを考慮して、ニッチ路線に就航した場合のゲームが以下になる。

ニッチ路線に参入した場合、同じように既存企業は低価格か高価格を選ぶ必要がある。低価格を選んだ場合、参入企業は抗戦するか退出するか選ばなくてはならない、退出を選んだ場合利得は-100、抗戦すれば-50で済むため抗戦を選ぶ。既存企業は低価格を選ぶと参入企業が抗戦して利得が0になることから、既存企業は高価格を選択することがわかる。

以上がニッチ路線に参入した場合のゲームになる。このゲームであれば参入が解になる。

AIRDOはドル箱路線であれば参入しない、ニッチ路線であれば参入が正解になるこれが書籍内で触れられていたAIRDOの解説である。


AIRDOの失敗

AIRDOのドル箱路線の失敗は初期費用と市場に居続けるためのランニングコストを見誤ったことが失敗の原因であると書籍では触れられていたが、他の要因がないか考察してみた。

1.具体的な商品プラン不足
ベンチャー企業として業界に参入する場合、既存企業との差別化をはかる必要がある。当然AIRDOも「低価格運賃」というプランこそ持っていたものの、具体的な設計を持っていなかった。結果的に既存企業から退職した人に丸投げしてしまい、出来上がったのは既存企業の商品プランをなぞっただけに終わった。

2.資金調達面
AIRDOなどのベンチャー企業において重要なのが事業が安定するまでの資金繰りである。開業から数年は赤字が続くが、数年後には黒字化し今までの赤字を返済していくのが普通である。当然AIRDOもその計画であったが、資金調達を十分に行えなかったこと、資金がショートするたびに増資をつのるような場当たり的な対応になってしまったことからも資金調達がうまくいかなかったことがわかる。サウスウエスト航空の例では当初計画していた資金の二倍の額を集めていたように、資金調達面での意識の違いがうかがえる。

以上がAIRDOの失敗した原因ではないかと考えている。民事再生適用後、ANAから支援をもらったことで経営が改善されたことからも、資金面での認識の甘さが原因ではないかと思った。


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