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グランド・ジャーニー

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人工的に絶滅危惧種の渡り鳥・雁に、北極圏ノルウェーからフランスへと安全なルートを教えるという前代未聞の冒険と実験が始まります。
鳥類研究家で気象学者のクリスチャンと一人息子トマが、自家製の超軽量飛行機で挑戦するのですが、そこにはとてつもない困難が待ち構えているのでした。

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14歳の思春期にあるトマは、バカンスを父と過ごすことになり大自然の中を経験することになりました。静けさや手持ちぶさたを持て余す彼でしたが、
ある日、父が持ち帰った雁のたまごからヒナがかえる光景を目の当たりにします。

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「鳥は、初めて見たものを親と思う」と父から言われ、半信半疑ながらも悪い気はしない様子(^^♪
父から渡されたキャップ付きのフードを着て、ヒナたちと生活を共にするうちにほのかな愛情さえ芽生えてくるのでした。


父の計画(野望(*'▽'))は計量飛行機で雁たちが渡り鳥として生き、繁殖できるようにそのルートを実際に飛びながら、
実地訓練をすることだったのです。
ヒナとの関わり方も覚え、次第に鳥類に対して興味を示してきたトマに、父が自分の計画を話し、「一緒に来るか?」と聞きます。不安ながらもトマは「うん」と答えました。

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そうなると、次は飛行機の操縦法を教わらないといけないですよね。来る日も来る日も親子で計器の見方や操縦法、天候についてなど覚えなければいけないことはいくらでもあります。
それでも徐々に知識と経験を積んで、成長していくトマの表情はバカンスに入ったばかりの頃とは違ったものになっていきました。

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ヒナのなかで唯一毛色が違う鳥(実際は別種だった…♪)を”アカ”と名付け、特別に可愛がるトマ。飛行機の操縦以外にもやることは限りなくあるわけで、トマの後をチョコチョコついて回るヒナたちの可愛いこと!

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いよいよ計画を実行する時が来て、役所に手続きに行きますが、手違い?(実は虚偽の申請をしていた)が発覚し、一行は窮地に陥ります。
手続き完了を待つのに何日か待機するのですが、雁を連れての飛行が認められなくなるのを悟った父は強行突破に踏み切り、
おお慌てで準備に取り掛かるも、役所から追われる羽目になります。

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しかし、あきらめきれないトマが単身飛行機に乗り込みエンジンをかけて、雁を引き連れて大空へと飛び立ってしまいます。
まだまだ未熟な操縦のトマがトラブルに見舞われ、命の危険に遭遇するのは時間の問題でしょう。父が止めるのも聞かず、
グングン飛んでいってしまったトマの無謀な行動を聞き、悲壮感に囚われた母パオラが駆け付けますが、もう打つ手はなく、
ただトマの無事を祈ることしかできることはありません。

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ついに、念願の渡り鳥ルートをひたすら飛びながら、数々の試練を乗り越えていくたくましいトマに拍手を送りたくなった人はたくさんいるでしょう!
行く先々で援助してくれる心優しい人々からのありがたい援助や触れ合いを通してひたすらに飛び続ける鳥たちの姿にも涙がこぼれました。

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このチャレンジが成功すれば、毎年渡り鳥としての行動が確立され、将来的に繁殖さえも実現可能になるのですから、トマも命がけで鳥たちを引っ張ります。

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この映画では、少年のトマひとりだけの飛行になりましたが、脚本・主人公のモデルとなったクリスチャン・ムレクが実際に行った経験が生かされています。北極圏ノルウェーからフランスへの旅を彩る大自然の雄大さと輝きは必見です!!

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印象深いのは、海に出て、急な天候の悪化による危機をトマと鳥たちが乗り越える迫力&緊迫シーンでした!
トマはもちろん、自然で育ち、平和な楽園とも言える安全な家とケージのなかでの生活しか知らない鳥たちも、こんな恐ろしい脅威に翻弄されるのは
どんなに恐かったことでしょう。

それでも鳥たちは飛び続け、行方不明になったアカを呼ぶトマの悲鳴にも似た呼びかけに応えるように暗雲から現れたアカの雄姿!!
「あぁ、こんなにもたくましく成長したんだね」と感動しました。


自分を命がけで守り、導いてくれるトマを信じて懸命に羽を動かすアカたちの「渡りの訓練」の先に見えている明るい未来があることに
感謝してもしきれない気持ちが起きてきます。

同時に14歳の少年の無防備な状態に、底知れない恐怖を感じたのも事実です。ひとつ間違えば、トマと鳥たちには「死」が待っているのですから。
この映画がドキュメンタリーとしてではなく、ノンフィクションとして作られた意味を監督はこのように語っています。

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「多くの観客に見てもらおうとすれば、メッセージに力を与えるためにフィクション映画であることが不可欠である」。
なるほど、と思いました!
ドキュメンタリー映画となれば、事実を下地にしてそこから離れることは難しくなりますよね。しかし、フィクションであれば、描き方にも幅をもたせられるし、作り手の意図を、自由な発想で実現できる余地が生まれますから。

★★★

さらに深読みすれば、本作にはもうひとつテーマがあります。
不器用で頑固で変わり者?と周囲から思われている父とその息子。そして、前妻との「家族の絆」の再生ですね。
母パオラは恋人ジュリアンとの生活に満足しているように思われ、実際にトマたちのところにもふたり揃って顔を出します。

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この4人の複雑な心境の描写も興味深いものがあります。
現在の自宅でのジュリアンとパオラの会話がそれを如実に物語っているシーンがありました。

トマの単独飛行の知らせを受け、蒼白になりながらも駆けつける支度をするパオラに、ジュリアンがちょっとした声がけをした際に彼に言い返した言葉でした。
「口をはさまないで!これは家族の問題なのよ!」と叫ぶパオラ。

彼女が去った自宅をそっと出るジュリアンの背後には「書置き」が置かれていました。これこそが、彼らの現在の立ち位置を象徴しているようなシーンとなっているます。

★★★

この映画はフラミンゴの飛来地で、ユネスコの自然保護区に指定されている、カマルグとノルウェー北部のラップランドで撮影されたそうです。
そう言えば、途中で赤いフラミンゴの姿も確認できました。
観ている人が自分も大空を舞っているかのように思わせてくれる大旅行に浸ってみませんか?



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