映画「スペシャルズ!政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話」

セット チラシ


セット③

自閉症の青少年を支援する団体「正義の声」代表のブリュノは今日もスタッフから呼び出され、脱走を図った少女の捜索に向かいます。彼の1日はこのような出来事で埋め尽くされているのでした。


他の機関から締め出された自閉症児を無条件で一手に引き取り世話をするのですが、一筋縄ではいかない子どもが大勢いて、施設内は一種のカオスと化している状態でした。

スペシャルズ!⑧

しかも施設は赤字経営であり、無認可の運営を続けるブリュノは、会計士から「このままだと施設は閉鎖だぞ!」と最終警告を受けます。

スペシャルズ!

スペシャルズ!セット


「正義の声」で子どもたちをケアするのは、ブリュノの親友のマリクが運営する「寄港」という団体に集うドロップアウトした若者たちでした。彼らは介護を通して人生を学んでいきます。これもひとつの社会貢献と言えるでしょう。

スペシャルズ!⑤

しかし、厚生省は「寄港」に対して、「指導者としての資格を持たない者を充てるのか」と詰め寄ります。
マリクは「学歴があれば障害児と本気でぶつかれるのか?」と返答するのでした。

★★★

※世話を受けている子どもたちの中から印象に残った2人を紹介します。

スペシャルズ!⑥

ジョゼフは電車に乗ると、「非常ボタン」を押す衝動を抑えることができない青年でした。「リリリリーン」と鳴らしては係員から取り押さえられ、ブリュノが現場に駆け付けるということの繰り返し。

スペシャルズ!⑮

なぜか洗濯機が大好きなジョゼフは、パソコンでもその映像を見飽きることはありません。

スペシャルズ!⑩

スペシャルズ!⑨

そんなジョゼフの自立を真剣に考えるブリュノは、ある洗濯機工場の経営者にジョゼフを1週間雇ってくれるように懇願し、なんとか成功します。しかし、ジョゼフの不審な行動もあり、約束の1週間後にあっさりと拒絶されてしまいます。

スペシャルズ!⑪

スペシャルズ!⑫

車で迎えに来た失意のブリュノにヨゼフは「笑顔を忘れちゃダメだよ」と慰めの言葉をかけます。そんなジョゼフの天真爛漫さにほだされるブリュノの笑顔が眩しく映りました。

スペシャルズ!⑬

一方で、監査局の調査員はあらゆる関係先を回り、ブリュノとマリクの弱点探しに余念がありません。
そんな調査員に、ある関係者の女性はこう言います。「どんな患者も彼らだけは受け入れてくれる。無条件でね」と。

スペシャルズ!㉑

スペシャルズ!㉓

ブリュノは新たに預かったヴァランタンという少年の世話役にディランを当てます。ディランはいつでも遅刻ぎみの、ちょっと自分勝手なところがある青年でした。ヴァランタンは自傷癖のある子どもで、防御のためにヘッドギアを常時装着しているのですが、それでも精神が不安定になると、ところかまわず頭をぶつけるので気を抜くことができません。

スペシャルズ!⑯

諸事情もあり、ヴァランタンとディランは施設を離れ、あるホテルの1室に落ち着きます。ディランがタバコを吸うために外に出た隙に、ヴァランタンが脱走。

ブリュノ以下スタッフが分かれてその後を追いますが、なかなか発見できません。車で移動していた彼らはついに高速道路をフラフラ歩いているヴァランタンを見つけ、駆け付けます。

こうして無事にヴァランタンを取り戻したのですが、その原因を作ったディランは、自分がいかに重大な任務を背負っているのかを真に理解したのでした。

セット⑧

やがて、心身ともに疲弊したブリュノに襲い掛かる調査員との対決の日が訪れます。ブリュノの机の背後のボードには、預かっている子どもたちの名前を書いた紙と写真がところ狭しと張り出されてありました。

子どもたちの写真を1枚、また1枚とボードから引きはがし、「さあ、この子を連れていってくれ!この子も!この子も!」と絶叫します。そして、「どんな子だって特別なんだ!」と詰め寄るのでした。

それを目の当たりにした調査員2人の顔は引きつり、返す言葉がありません。

そうですよね?重箱の隅をつつくように批判ばかり繰り返す彼らこそ偽善者ではないでしょうか?そんなに自閉症児たちが心配ならそれこそ監査局(厚生省)がすべて引き受ければいいのではありませんか?

スペシャルズ!⑳

スペシャルズ!㉔

いくらきれいごとを並べようと問題の解決にはならないのです。財政的にも肉体的にも精神的にも限界まで追い詰められたブリュノたち関係者と、その家族の負担を減らせる手助けをするのが筋だと思います。

★★★

日本でも福祉の分野では問題が山積しているかと思いますが、どれだけ当事者(障害者/世話する関係者)の現状を把握しているのかという肝心の側面への理解と、それへの適切な対応が求められているのではと常々感じてきました。

私自身、学生時代に福祉を学んだ経験から、この映画に込められた、そんな不透明さに憤りを感じずにはいられないひとりです。



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