切なく、愛おしい映画「マーティン・エデン」

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アメリカの有名作家ジャック・ロンドンの自伝的小説の舞台をイタリアに置き換え映画化したものです。

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長年船員をやっている無学のマーティンは波止場である青年を助けたことにより、上流階級の娘エレナと出会います。

サイズ マーティン・エデン④

お互いに好感を持ち、エレナの家族にも受け入れられます。何度となく彼らと接することにより、マーティンの知的欲求の高まりとともに、将来の夢へと希望が膨らんでいくのでした。

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マーティンの人となりを差別せず、まるで家族のようにもてなしてくれるエレナの家族、とりわけ母親に好意を持ちました。

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2人の間に流れる親密さに戸惑いながらも、よけいな口出しをせず、静かに見守る母親のあたたかい人柄はマーティンにとってどれほど救いだったことでしょう。

サイズ まとめ ⑤

エレナによく思われたくて高尚な本も読むようになり、おぼろげに自分の行き先を見つめていたマーティンは、ある日雑誌に載っていた「新人作家の作品募集」という記事を見つけます。

マーティン

それによりマーティンの心に「作家になる!」という途方もない意欲が湧き出します。常識でいくとおよそ実現不可能と思われる決心ですが、本人は真剣で、たまたま店先で見つけた古いタイプライターを購入し、創作に励みます。なんともストイックな姿勢が頼もしいというか、無謀というか微笑ましくもありますよね。

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あちこちの出版社に原稿を送り続けますが、「差出人に返送」という憂き目にあいます。このくだりは「赤毛のアン」作者のモンゴメリや「若草物語」のオルコットなどに共通するものがあり、当時の苦労がしのばれます。

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間借りしている姉の夫はことごとくマーティンへの批判をするのですが、「雑誌に載るわけがないだろ」と煽り、一触即発の状況になったりするのでした。マーティンは弱い立場にあるため、彼に言い返す言葉もなく、姉のためにもひたすら耐えるしかありません。彼の胸のなかには「いつか見返す」という気持ちがあったでしょう。

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海が何よりも好きなマーティンは、職を転々としながら執筆する生活環境を維持するために住いも変えることになりますが、ある親切な一家の計らいで、下宿できることになり、作家になる日を夢見て執筆に励みます。

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そんなある日、社会主義者の演説を聞いたことをきっかけに裕福な老人と出会い、その思想に影響を受けていきます。
当時の労働者の置かれた社会状況からすると、無理もないだろうと思います。その後も社会主義思想への共感は続くことになります。

マーティン エレナ

この頃から次第にエレナとの間に緊張が生まれていき、2人は相容れない価値観に引き裂かれることになります。
エレナとしては2人の将来への不安がかなり募っていったことでしょうね。女性の立場から言えば、社会的地位も経済的な安定も保証してくれないマーティンをどこまで信じ、待てばいいのかというジレンマに苦しむのは当然ですね。

しかも、名家の娘であるエレナにとっての結婚は、自分たちのことだけでは済ませられない重い選択なのですから。
それまでの浮き浮きとした甘い幻想が影を潜め、2人は現実に目を向けざるを得なくなり、必然的に別れが訪れます。

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やがて、作家として成功をおさめたマーティンを待っていたのは、輝かしい未来というよりも、思想と現実に押しつぶされそうな退廃の日々でした。行き場のない怒りと焦燥に蝕まれた彼の将来への懸念が残るラストでした。

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他人からは笑われても自分の直感に従い、ひたすら前進するマーティン。その先にはまさかの成功が待っていたんですね。人間の力強さを教えてくれたこの映画に感謝しています。


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