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チームをマネジメントするのと、ゲームクリエイターが『ドラクエ』を作るのは、同じかもしれない

『プレイヤーとしては優秀だった人がマネージャーになると無能になる』はよく言われることですが、ぼくはそれを地で行き、様々な失敗をしてきました。

マネージャーなりたての頃の自分に向けて、あなたがどんな失敗をするのか、じゃあどういうすればいいのかなど、書いてみようと思います。

細かく口出ししすぎて失敗した

まずはじめの失敗。

チームを持ったころは、「もっとこうした方がいい」と、細かく、全力で、持てる120%の力でフィードバックしました。
知識を惜しみなく全力で伝えれば、それを吸収し人が育つと考えたのです。

しかし、そんなことはありませんでした。チームはどんどん疲弊していくことになります。

なぜだと思いますか?

人は、自分で学び、自分でできるようになってはじめて自信を持てる

なぜなら、メンバーが自信を無くしていったのです。

人は、言われたことだけやっても、自信はつきません。

自分で学び、自分でできるようになってはじめて自信を持てます。

元任天堂企画開発の玉樹 真一郎さんも、著書『「ついやってしまう」体験のつくりかた――人を動かす「直感・驚き・物語」のしくみ』の中で以下のように書いています。

自ら体得する体験をともなわず、人から教わった知識だけのことには、なかなか自信を持てないものです。たとえばあなたがまだ自転車を練習していた頃、誰かが「もっとスピードを出せば転ばないのに!」とアドバイスしたとします。あなたはその言葉を信じて、スピードを出せるでしょうか? 

細かく全力で教えるのは、必ずしもいいマネジメントではないのでした。

次に、丸投げをして失敗した

「細かい口出しは良くない」と学んだ次にやったことは、仕事に一切口出ししないことです。

自力で成功体験を積んできてもらえば、人が育つと考えました。
余計な口出しせずにすむよう、あえて仕事を見ないようにすらします。

……はい。「それってただの丸投げじゃん!」と思いましたよね。

正解です。そのとおり失敗しました。
とある案件で不手際があり、クレーム沙汰になることになりました。
顧客にご迷惑をおかけして、メンバーも傷つき、あのときは本当に申し訳なかった。

メンバーの教育も大切ですが、顧客に結果を出すのが大前提です。

「細かい口出し」「丸投げ」の二択では無いと気づけた

このようにぼくの判断は極端で、そして下手くそでした。

その原因はひとえに、物事をメタに(空から見下ろすように客観的に)見れていないことでした。

『ドラクエ』で例えると分かりやすいです。

メンバーが「勇者」、課題が「モンスター」だとすると…

ぼくは、課題解決そのものに集中するあまり、「スライム」だけを見ていました。

課題そのものにだけ向き合う視界

しかし、横には勇者(課題解決に取り組むメンバー)がいますよね。それが、視界から外れてしまっていたのです。

スライムしか見えてないから、戦う OR     戦わない、の二択になってしまっていたのでした。

しかし、マネージャーの立つべき目線は、勇者と同じ目線でスライムを倒すことではありません。

立つべき目線は、ダンジョンのマップ全体を俯瞰しゲームを設計する「ゲームクリエイター」だと思います。

つまり、「勇者は、モンスターを倒せそうか?」「倒せないとしたら、レベル上げできる敵を設定できないか?」なども一緒に考えた方がいいのです。

課題とメンバーどちらも含めた視界

このように考えると、そもそも「細かく口出し」「丸投げ」どっちが正しいとかじゃないと気づけました。

メンバーや場面に合わせ柔軟にサポートをすればよかったのです。

なんか、書いてみると当然のことですが、ぼくは気づくのにすごく時間がかかりました!

「適切な難しさか?」を自問自答する

「ゲームクリエイター」は、「勇者」のゲーム進行が、難しすぎず、簡単すぎず、一番楽しいバランスになるように調整します。つまり、「適切な難しさか?」を自問自答します。

難しすぎるようなら、アイディアや考え方などのサポートします。また、予算を増やす、パーティーを強化するなど、リソースを割り当てることも検討できます。

武器を増やす

簡単すぎるようなら、より強いモンスターをダンジョンに招き入れたりもできます。(難しいプロジェクトに参加してもらう、仕事の範囲を広げる)

より強いモンスター

マネージャーは、あくまで「ゲームクリエイター」であって「勇者」ではない

その際、マネージャーは、あくまで「ゲームクリエイター」であって「勇者」ではありません。

この前提が崩れる関与は極力避けて、間接的なサポートに徹したほうがいいと思います。

バグ技とか見えざる力が働くことは、真面目にやってるプレイヤーにとってはサムいです。ゲーム性を損ねます。

「楽しむこと」も大切な要素

また、ゲームクリエイターになったつもりで見るのは、ゲームのように「楽しませたい」ということでもあります。

正直、仕事って面倒だなぁ、嫌だなぁと思うこともたくさんあります。しかし、それを差し引いても「何だかんだ、ちょっと楽しい気がする」と各々メンバーが思えるように仕事をデザインできたらいいですよね。

ゲームはクリアされることが大前提

ゲームだとしたら、クリアしてもらわなければなりません。

クリアできないゲームはただのクソゲーですし、エンディングを見てもらえないのは作り手としては悔しいことです。

そのため、ちゃんとクリアしてもらえるように細心の注意を払わなければなりません。

元任天堂企画開発の玉樹 真一郎さんは、『ゼルダの伝説』シリーズに登場する、「棒に火をつけ、蜘蛛の巣を焼き払う」という謎解きギミックについて、以下のように解説しています。

プレイヤーは「蜘蛛の巣が邪魔」「木の棒を持っている」「燭台に火がついている」といった個々の情報はまちがいなく把握しています。しかし、これらを組み合わせるのが難しいんですね。だからこそ、試しに木の棒を燭台に近づけたら火がついたとき、そして蜘蛛の巣を焼き払えたときのよろこびは、ひとしおです。

そんな体験をつくるために、デザイナーがしたことは何でしょう。「蜘蛛の巣の向こうに扉がある」「棒は木のような材質だ」「蜘蛛の巣は剣で切れない」といった情報が明確になるように、注意深く見た目や音をデザインしてはいます。何せパズルを解くパーツになる情報ですから、伝達ミスは許されません。

『ゼルダの伝説』のギミックを考えるように、仕事も、メンバーがちゃんと解けるように注意深くデザインすることが大切だと思います。

実力差がありすぎると、教育・フォローではどうにもならないこともある

課題とメンバーとにあまりに実力差があると、間接的なサポート程度だとどうにもならないこともあります。

現実世界はバランス調整されたゲームの世界とは違うので、例えば、スライムを倒しレベル上げしていたら、草むらから「ゾーマ」(ドラクエ3のラスボス)が現れるようなことは普通にあります。

そういうときは、教育・フォローではどうにもならず、ただただアサインメント(配置)が不適切という問題になるので、もっと適切な別メンバーに任せるか、マネージャー自身で巻き取った方がいいと思います。

メンバーの能力不足を怒るのは、マネジメントではない

マネージャーがゲームクリエイターだとすると、仕事を設計し作り出すのが仕事です。

そう考えると、メンバーの結果が出ないのは、そもそもメンバーに合わせてぴったりの仕事をデザインできていない、マネージャーのせいでもあるのです。

メンバーのやる気や能力不足のせいにするのは、怠慢だと分かります。


そんなこんなで、『ドラクエ』を作っているつもりでチームをマネジメントするの、結構よくないでしょうか?

早々に取り入れられるといい感じにやっていけると思います。

あと、ゲームをデザインするのはなにも他人に対してだけではなく、自分自身が興じるゲームをどのようにデザインできるのか?が1番影響が大きいなぁとは最近思います。

終わり。

P.S
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