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【感想】『性差の日本史』を読んで、「時間と空間の物差し」を体験できました。

本記事は「note×集英社インターナショナル」の合同企画「#読書の秋2021」の課題図書『性差の日本史』(国立歴史民俗博物館 (監修))の読書感想文です。過去に趣味で撮影した写真を交えて読書感想文を書いてみました。本企画の詳細は下記に記載されています。

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冷蔵庫の中にジュースが半分まで入ったコップが1個あるとする。「コップのジュースがもう半分しかない」と嘆く人もいれば、「コップのジュースがまだ半分もある」と喜ぶ人もいる。また、コップ職人の視点ではコップの造形の方が気になるかもしれないし、環境問題に関心の高い人の視点ではコップ1個のために冷蔵庫が電気を消費していることの方が気になるかもしれない。

ある事柄を「問題として認識」することは、なかなか難しいことだと私は思っている。男性である私にとって、「ジェンダー」という抽象的な概念を「問題として認識」できるかどうかは正直なところ不安があった。そんな私に本書は豊富な文字や絵画資料を利用して歴史的な視点から「ジェンダー」の意味や変化を教えてくれた。特に「歴史」を調べて明らかにしていく過程はとても興味深かった。本書は、図録「性差の日本史」(重さ1.4kg)を手軽に持ち歩いて読める本(重さ約0.14kg)にしたとのことであり、資料の豊富さには驚かされるばかりであった。

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歴史書への接し方を知らなかった私は、本書の冒頭で記載されている『漢和辞典を引くと、「歴」は、物事が次々に生起していく様を表し、「史」は、出来事を記録すること、記録した書を指すと記されています。』という部分を読んで、心構えをつくることができた。また、あとがきの章に記載されている『本書でも、「時間」と「空間」の物差しを使い、比較という視点からジェンダーを取り上げた所がたくさんあります。』という部分を読んで、本書の読み解き方を知ることができた。ここで、『「時間」という物差し』は『異なる時代の男女のあり方』を比較する際に利用し、『「空間」という物差し』は『文字や絵画資料を使い、同一の「空間」の中での男女のあり方の差異』を比較する際に利用するとのことであった。『「時間」と「空間」の物差し』という概念を私は知らなかったので、この概念を知ることにより歴史を紐解く手がかりを得ることができた。本書では「歴史」を明らかにしていく過程がとても鮮やかで、「歴史に埋もれた出来事にスポットライトを当てる」ということを私も疑似的に体験することができ、嬉しくなった。

本書では「ジェンダー」の古代から現代への変化の様子を丁寧に解説しており、本書を読むことで今まで知らなかった大量の知識を得ることができた。例えば、男女の制度的区分の起因は七世紀末の戸籍制度作成が関係していること、早乙女とは田植に従事する女性を表す言葉であること、遊郭の金融ネットワークなどなど、どの話題も興味深かった。あと、四頭身の愛らしい姿に描かれた「清水の舞台に立つ後家尼と家族」に登場する女性たちを見て、心が和んだ。そのほか、「双六に描かれた女性の職業」では、男女が同じスタート位置でも、ゴールとなる職業も、そしてゴールまでの過程も大きく異なっていることが印象的であった。男女の差が顕著に「双六」という遊具の中で表されていることに、現代社会で生きる私は違和感を感じた。それと同時に、こういった資料に男女の差が表れることとなった時代背景に対して自ずと興味をもつようになった。

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エピローグの章では、村木厚子さんが紹介されていた。本書に記載されたQRコードを読み取ると動画を視聴することができるので視聴してみた。本章で紹介されていた「制度」の弊害などを改めて考えることができた。また、村木さんの「歴史は変わる、変えられる」という力強いメッセージが印象的であった。QRコードを利用することで本書とインターネット空間が繋がり、本書の内容の理解を深めることができるという工夫点には、ただただ感心するばかりである。

「ジェンダー」の捉え方に関して多くの知見を与えて下さった「性差の日本史」展示プロジェクトの関係者の皆様に感謝するとともに、本書を生み出して頂いた編集者の方々に感謝致します。ありがとうございました。

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#性差の日本史 #読書の秋2021


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