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23/24のレアルマドリード前半戦通信簿

今季のマドリーの前半戦を備忘録がてら振り返る。
戦術的な解説等は門外漢のためかなり杜撰な記述となることご容赦願いたい

夏:相次ぐアクシデント、野心なき補強

UEFAスーパーカップやCWCを獲得したものの、過密日程に苦しめられ主要タイトルとしてはコパデルレイのみに留まったマドリー。
当然覇権奪回を臨むシーズンであったが、想定外の連続に遭った結果、補強というより「補修」に近いin-outの動きとなった。

まず、契約延長を見込んでいたベンゼマ・アセンシオが予想外にも退団。昨シーズンの40点強をもたらしていたプレーヤーを失うことになった。
一方で戦力向上の面でいえば、トッププロスペクトのベリンガムを130mで確保したものの、フロレンティーノがこだわりを見せたエンバぺは結局ほとんど獲得に近づくことなくまたしても獲得失敗。ホセル・ブラヒム・フランら旧カンテラ組を連れ戻して一旦お茶を濁す形をとった。
さらに開幕直前になってクルトワがシーズン絶望の負傷。2節には昨シーズンのディフェンスの中心だったミリトンもシーズンアウトとなった。

こうした変化に対し、フロントはあくまで24年の補強を見据え、パニックバイは選択せず、ケパのドライローンのみで対応することとなった。
このように、戦力のグレードアップを図るような補強は見られず、フロントに覇権奪回を目指すような姿勢は全くなかったといってよい(この姿勢そのものの是非は言及しない)


全員シーズンアウトとはだれが想像出来ようか….

前半戦:光るアンチェロッティの調整力

 これまでベンゼマに攻撃の多くを依存してきたアンチェロッティにとって、彼の退団と代替補強が存在しないことはチーム作りの根本的な変化を余儀なくされるものであった。
 これに加えてレギュラークラスが7人いる中盤の問題の解決を求められるという、中間管理職のみなさんもビックリのトンデモ案件に取り組まされることになった。

 ここで、アンチェロッティはプレシーズンからヴィニシウス、ロドリゴの2トップにベリンガムを下に置く形でプレッシングを主体にするフットボールへのチャレンジを図る。これを機に前線からの守備意識が高まり、運動量の豊富なチームへと変化した。

プレシーズン~開幕近辺での序列。ここから大きく様変わり。

しかし、ローテーションに伴いクロースの起用が増えるとその守備の課題が顕在化。ここでカルロはベリンガムを左に落とす形で対応。4-4-2で守りつつ攻撃では流動性をもたらした。チュアメニの離脱はバルベルデがカバーした。

その結果、中盤からの守備が改善し、危険な攻撃はリュディガーが前で潰す守備が機能。守備のキープレーヤーが離脱したにも拘わらず、リーグ最少失点(11)、マドリーの歴史上でも少ない失点数を誇るというなんとも皮肉な結果を生んだ。

不安視された得点力も、ベリンガムが驚異的なセンスからエリア内に入り込んで得点を量産する形で補い(リーグ得点数は40→39とほぼ変わらず)、クラシコでは信じ難いミドルまで見せつけた。度重なるヴィニシウスの離脱に対しても、ロドリゴを辛抱強く起用してその能力を引き出した。

発生した課題に対して的確に戦術的な答えを導きつつ、巧みなマネジメントでスカッドほぼ全員の力を引き出すことにも成功。カルロのマネジメントには満点近い評価が与えられるだろう。


ここ1か月の序列。主力の離脱のアクシデントも、リュディガー、バルベルデらの奮闘が光る。

今後の課題と展望

アンチェロッティのマネジメントにより安定した結果を残せていると言えるマドリーではあるが、タイトルレースが本格化するうえでの課題は当然見られる。

一つは主力への依存度の高さだろう。今のスカッドではリュディガー、カルバハル、バルベルデ、ベリンガムへの依存度が非常に高く、ほとんど休みを与えられていない。カルバハルの離脱の影響が如実に現れたべティス戦を見ても、これらのプレーヤーを失うことはチーム成績に直結する。ローテーションを行ううえでも、ニコパスを始めとしたカンテラ―ノのさらなる活用が求められる。これと結果を両立するのは無理難題と言わざるを得ないのだが。

もう一つは守備戦術の見直しだ。先述した通りリーグ戦では傑出した守備力を見せているものの、アトレティコ戦では3失点で敗北、ナポリ戦では2試合4失点とビッグマッチではやや安定感を欠いた。固いブロック守備を形成しているとは言い難く、特にクロス対応には不安が見られる。今後プレッシングに再チャレンジする(できる)のか、チュアヴィンガ復帰後のクロースの処遇など、アンチェロッティのマネジメントが今後問われることになる。
とはいえ、今季のスカッドの状況を見れば多くは望めない。選手の健康(ケガはもうたくさんだ)を願いつつ、タイトルコンテンダーとして粘り強く戦う姿を楽しみたい。

また、今季はアンチェロッティだけでなく、クロース、モドリッチ、ルーカス、ナチョなどチームを支えてきたベテランの多くが退団する可能性のあるシーズンでもある(もちろんカルロを含め契約延長の可能性も残っているが)。「その時」に彼らを温かく送り出す環境が作れれば、それ以外に望むことはそれほどないのかもしれない。

カンテラにとってはチャンスのシーズンでもある

通信簿(個人評価)

選手を個人単位で評価するのはナンセンスかもしれないが、こちらも備忘録として、定量的な指標に基づかない印象をただ述べる。

ケパ
ドライローン、クルトワとの比較などの要因で辛い評価を受けがちではあるが、セビージャ戦を始め質の高いセービングを見せ、リーグ最少失点に貢献。ただ配給が恐ろしくリスキーなのはなぜなのか...悲劇にならないといいけど。

ルニン
クルトワ離脱の穴を埋めたがケパの加入でポジションを失った。それでもケパ離脱後に巡ってきたチャンスでPK阻止など実力を示し、レギュラー争いを再燃させた。個人的には今の短髪が好み。ポニテはあんまり似合わないとおもう。

リュディガー
2年目にして真価を発揮。力強いディフェンスと広いカバーエリアでチームを支えた。何より連戦連戦をこなせるタフネスはミリトン離脱のチームにとって非常に貴重。ミドルはたぶん一生入らない。

アラバ
昨シーズンのコンディション不良は癒えたものの、やや対人守備には不安が残る出来ではあった。それでもディフェンスリーダーとしての非常に重要な役割を担っていただけに、シーズンアウトは痛恨。フリーキックが枠に飛ばなくなっている。

ナチョ
今年からキャプテンマークを巻く。いついかなる時でも安定したパフォーマンスで今季はミリトンアラバ離脱を受け重要性は例年以上。気合が入りすぎているのか妙なハードタックルで二度のロハを頂戴する謎の暴れっぷりを披露。そこは先輩を真似しなくていい。

カルバハル
近年の怪我癖が嘘のような充実ぶり。攻撃が左偏向となりがちなチームを右で支え、まったく替えが効かない。今季はなぜかヘッドに左足ボレーと難易度の高いゴールが多い。

ルーカス
今期はカルバハルの活躍で出場機会が減少。少しプレーリズムがつかめていないかもしれないが、攻撃面での貢献が求められるなかでのキック精度の厳しさは目立つ。そうした中で年内最終戦に殊勲の決勝弾、なぜここで8年間生き残っているのかという生き様を示すようであった。

メンディ
ようやくケガの負のスパイラルを抜け出した感がある。攻撃面は相変わらず全く存在感がないが対人守備は非常に安定。年々キックフォームが特殊になっている印象で今や本当に左利きなのかもよくわからない。

フラン
ラファブリカ出身としてファンの期待を集めて開幕スタメンを勝ち取るも、対人守備、ボール保持時のクオリティ不足は否めず徐々に序列が低下、クラシコもベンチを温めた。質より量で貢献するタイプなのでひたすら上下動を繰り返し攻撃面で使われるようになれば序列も上がるはず。

チュアメニ
こちらも2年目にして真価を発揮。プレーエリアがある程度限定されたこともあってか配給面でも守備面でも圧倒的な存在感を誇った。不動のスタメンとなりかけたところでの離脱は痛恨の極みといえよう。もう少しミドルを打ってほしい、そろそろ決まる。

カマヴィンガ
昨季まで見られた軽率なボールロストや無謀なタックルが目に見えて減り、安定感が増した。LBとしても本職二人を凌ぐパフォーマンスを披露。もう少し攻撃面で決定的な役割が果たせれば鬼に金棒といえる。FIFAウイルス感染は非常に残念。昔のラレアル戦以来実況にミドルが得意と評されることがあるがこちらはむしろあれが特殊例だと思われる。

セバージョス
昨シーズン一時期大車輪の活躍を見せたことで残留も、中盤の競争が激化するなかで開幕直前に離脱。復帰後もコンディションが上がらず焦りも伺える。パーマをかけているようなのだが試合ではなぜかいつものスタイルに戻している。

ニコ・パス
プレシーズンからトップチーム帯同を果たすなどラファブリカ一番の有望株。ナポリ戦では
見事な一発を沈めて鮮烈な印象を残した。やや遠慮がちに見えるため、アグレッシブな姿勢にも期待したい。

クロース
今季もパスは絶品。苦戦したヘタフェ戦では後半から投入され流れを一変させた。その一方で中盤2枚の一角としては守備の強度不足も目立ち、ここへのカルロのアプローチが後半戦の鍵になりそう。

バルベルデ
今季のシステムに欠かせないプレーヤー。若手揃いのマドリーでもその運動量、スピードは圧倒的で、どのタスクを与えても期待以上の働きを披露。中盤の中でも最もスタメンを張ることが多い。フリーキックで放つキャノン砲は壁に当ててばかりなのでそろそろ決めてほしい。

モドリッチ
運動量が求められる今季のシステムにおいてポジションの確保に苦労し、マドリー加入以来最もスタメンの機会に恵まれないシーズンを送っている。とはいえ衰えも特には見えず、19-20のように後半戦また復活する気がする。

ベリンガム
現時点でのバロンドール最有力候補。あらゆる局面でワールドクラスのパフォーマンスでありもはや怪物としか形容のしようがない。獲得反対派だった過去の自分の不明を恥じるばかり。

ブラヒム
背番号5のせいで出場機会に恵まれない前半戦であったが、出れば結果を残した。当初は自分のポジションを掴めない状況であったが、ヴィニシウスの離脱に伴い右に落ち着く形で居場所を確保。ゴールに直結する動きを連発して価値を証明した。
左足の方が得意そうにも見えるがシュートは右が多いのが少しナゾ。

ヴィニシウス
これまでの酷使が祟ってかケガに悩まされた。最高のパートナーベンゼマを失ったものの、2トップの一角として裏抜けからの得点パターンを覚えるなどさらなる成長の兆しを見せているだけに非常に残念。
無駄なヘイトを集めてる感もあるので判定にフラストレーションを溜めて冷静さを失うクセはそろそろ直したほうがいい。

ロドリゴ
ヴィ二の離脱時はその代わり、復帰後は9番としての役割を求められるなど、システム変更の割を食う形で苦手分野への適応に苦労した。得点への意識が力みとなって空回りした印象も。それでもCLの2得点をきっかけに得点力を取り戻して見事なパフォーマンスを披露。
ヴィニが戻ってこのまま出続けるならもう少し我慢して真ん中に陣取ってもよいのでは。

ホセル
ローテーション要員としての期待を遥かに上回るパフォーマンス。純粋な9番としての役割をハイクオリティでこなせるのはチームにとって貴重であり、チーム事情がなければスタメンを張るに十分なレベル。もっと一撃必殺系のストライカーだと思っていたのでけっこう量を打って点をとるタイプだったのは意外。


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