記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

『トラペジウム』連載版 諸データ

※ネタバレが含まれますのでご注意。

トラペジウム原作と関連書籍

◇ ダ・ヴィンチ連載版 全14話

◇ 単行本版 書籍化にあたり大幅改稿
       ※現品未入手のため未確認

◇ 文庫版 単行本からの本編改稿なしとのこと
      ダ・ヴィンチ連載時のカラー挿絵集
      書き下ろしエッセイが追録

◇ 角川つばさ文庫版 別著者による映画に準拠のノベライズ

 連載版トラペジウム、逆転して原作者自らによるたっぷりの補足エピソード譚的な読み方ができて面白い。
 連載版と書籍版とであきらかにニュアンスが変えられている箇所が多々あるので、映画版の解釈においては連載版はあくまでもプロトタイプ、参考程度の認識としておくのがよいかも。
 映画理解の補完はつばさ文庫版をおすすめ。 


◇ダ・ヴィンチ
 連載版トラペジウム掲載号
  2016年5,7,9,11月号
  2017年1,3,5,7,9,11月号
  2018年1,7,8,9月号
  全14話

 原作者 高山一実 ロングインタビュー
  単行本化時 2018年1月号
  文庫化時  2020年4月号

 国会図書館以外でも所蔵されてるかどうか大阪中央図書館の蔵書検索したところ、掲載号のダ・ヴィンチはすべて所蔵されていて館内閲覧できる模様。なので各地近隣の図書館が所蔵している可能性はあると思われる。ネットで容易に蔵書検索ができるところも多いので、一度あたってみられたし。

<連載版各話より>

「先ほどあちらのほうで、『たぁぁぁのもぉぉぉう!』と叫ばれていたのはなぜですか?」
「あぁそれは気合みたいな感じです。お恥ずかしい場面を見せてしまいすみません。」
「あら、どうして気合を?」

 まぁそりゃ、我が校の正門前で、他校の生徒が声を荒げていたら気になるだろう。怪しまれないためにも正直に言うべきか。

『トラペジウム』第一話「南の不死鳥」
ダ・ヴィンチ2016年5月号154〜157頁 
聖南テネリタス女学院訪問〜帰宅後まで

 

−なぜここまで優しくしてくれたのですか?
少々悩んたが、胸に引っかかっていた疑問を質すことにした。

彼から送られてきた文字を見ると、今度は心臓をきゅっと掴まれたような衝撃が走る。
(君が、何か大きなことをしようとしているのを感じたから。)

『トラペジウム』第二話「西テクノ高専」
ダ・ヴィンチ2016年7月号194〜199頁
西テクノ工業高等専門学校訪問〜再訪問帰宅後まで

 

 この状況を何とか打破しなければならない。実は次にこのプールを借りられるのは一ヶ月後になっている。まだ2人が揃う前、野崎先生に「今日一日でもありがたいのですが、もしよろしければ一週間に一回のペースでお借りできませんか?」との希望を伝えに行くと、流石にそれは拒否されてしまった。


あのまま西テクノ高専の用水路のようなプールを使っていたら…と想像するも、自分的にはそれはそれで悪い結果にならない気がした。場所を提供した自分たちのおかげだとも思いたくないし、何よりくるみのプログラミング技術は尊むべきものだと思う。

『トラペジウム』第三話「太陽はどこから昇る?」
ダ・ヴィンチ2016年9月号202〜205頁
城州東高プール使用交渉攻防
〜高専ロボコン結果&後日のオンエア日前まで

 

シンジは2杯めのコーヒーを、私はオレンジジュースを追加で頼み、この日は結局閉店時間まで話し込んだ。


 ロボコン番組の放送から4日が経った12月25日。まさかクリスマスも共にするとは、この2人は抜群に整った顔立ちだというのに彼氏も作らず、なんて私の理想通りの人物なのだろうと思う。

『トラペジウム』第四話「北窓三友」
ダ・ヴィンチ2016年11月号220〜223頁
高専ロボコン放映翌日に集まる東西南
〜亀井美嘉とのエンカウントまで

 

本当は何も言わずに連れて行く予定だったが流石にそれは不躾だろうと判断した。昨日の深夜にくるみから「明日何するの?」と電話で問われたのだから仕方がない。特に後ろめたいことではないし、素直に「この前の子と北で会う約束をしている。」と話すと彼女は私も行くと言い出したのだ。やはりここは断るべきだったか。


私の答えはもう出ていた。目の前に蜂蜜が置かれていたら、熊は素通りしないだろう。

トラペジウム』第五話「パンケーキとJK」
ダ・ヴィンチ2017年1月号204〜207頁
アッコトークショー
〜美嘉からのボランティアのお誘いまで

 

助手席に座り、住所を伝える。馬場さんは「OK!」とグッドマークを突き出し、慣れた手つきでカーナビへ打ち込んでいく。


「満点取ろうよ。君が血反吐を吐くほど予習しているのは僕しか知らない。」
 シンジとなら何もかも上手くいく気がする。

『トラペジウム』第六話「Coffee or Tea?」
ダ・ヴィンチ2017年3月号204〜207頁
ババハウスでの英語指導
〜「人間って光るんだって。」まで

 

改めて見ても無様な結果だ。取り柄の英語だけは一番評価の高い5の数がついていたが、体育に限っては2だ。おそらく水球部の顧問、荒井にしてやられたのである。


「蟻の墓には丁度いいや。」
雑草たちに混ざるぺんぺん草に狙いを定め、味噌汁をぶちまけた。5秒後、私の心には爽快感が3割、環境への罪悪感が7割を占めた。

『トラペジウム』第七話「暴かれた星 In advance」
ダ・ヴィンチ2017年5月号96〜101頁
車椅子登山前夕〜山頂4人で昼食まで

 

青色の棚に並んでいることに望みをかけて探すと、{しんじ}の文字を先に視界にいれてしまった。
「…確約書でも作るか。」
 自分の名前がなかったらもちろんお土産はなしだが、青色の{ゆう}が存在してしまったので2つの判子を手にレジに向かう。

トラペジウム』第八話「私の名前は Center Or What?」
ダ・ヴィンチ2017年7月号212〜215頁
山頂での集合写真〜城攻め会議まで

 

念のため否定しておかなければならないのは、自分の名字にかけてここから入ったわけではないということだ。馬場さんからのご指定を受けての東門である。

私にスペイン語が通じないことがわかると、ハンナの言語は英語に変わる。私は彼女の質問に答え、私も彼女に質問をした。久しぶりの英会話だった。

『トラペジウム』第九話「エスパニョール? Castle Play」
ダ・ヴィンチ2017年9月号210〜215頁
翁琉城初日〜カメラマン出動要請まで

 

「さっちゃんママ、あとはもう大丈夫です。」
「ばいばいママ。」
「ちょっと、大丈夫って…」
「さっちゃんはお利口さんだもんね。」
「ねー。」
 サチの母親はくるみに深い感謝の意を伝えると、ここを去っていった。


「あずまちゃん、そのお洋服着てくれてありがとう!」
サチが自分の名前を呼んだのはこの時が初めてだった。

『トラペジウム』第十話「約束のタイミング girls rule」
ダ・ヴィンチ2017年11月号198〜203頁
工業祭〜約束と指切りまで

 

撮影で自分が喋ったのは先ほどの一言だけだったので、もうこちらは映らないだろう。緊張がとけるとそのまま反省モードへ移行した。

『トラペジウム』第十一話「坂道の先に ticket to ride」
ダ・ヴィンチ2018年1月号226〜231頁
AD古賀来城〜取材〜オンエア〜ADコガ来校まで

 

「くるみさんは?」
「わからない。自分にとって、今何を大事にすべきか。」
「考えたらわからないわよ、わたくしだって。」
「……」
「くるみさんの思うようにしたらいい。私も、そうするわ。」
「うん。ありがと南さん」

『トラペジウム』第十二話「最後から二回目のデート」
ダ・ヴィンチ2018年7月号134〜139頁
コガからの番組出演依頼
〜「かっこ悪くて言えないや。」まで

 

「くるみさん、明日一人で収録でしょう?」
「うん。行きたくないや。普通にみんなと遊んでいた日々が恋しいなー。」


その日の放課後、私は北高の校門で友達の帰りを待った。
「ごめん。あのさ…」
「わ、びっくりした。なんの用?」


「くるみ……力になれなかった。」

『トラペジウム』第十三話「方位磁針」
ダ・ヴィンチ2018年8月号198〜203頁
初スタジオ収録〜破綻〜再会まで

 

“トラペジウム”
撮影日は今から8年前の6月22日。女子高生たちは皆、夢に焦がれていた。

「どうだった?」
「どうだったじゃないよ。びっくりした。いいの?星空写真展なのに、人間じゃん。」

『トラペジウム』最終話 エピローグ
ダ・ヴィンチ2018年9月号212〜213頁
密着取材収録終了〜写真展まで

 

「今まで言えなかった本音を全部、小説の中に紛れ込ませて書いちゃおうと思ったんです。どこが本音かは、読み手の方に好きなように解釈いただいて、もし“ここは本音ですよね!”って聞かれても、“いや、私自身は全然そんなこと考えてないですよ!”までがワンセットです(笑)」

単行本化 『トラペジウム』高山一実ロングインタビュー
対談/寄稿/インタビュー
ダ・ヴィンチ2019年1月号156〜163頁

(蘭子)
「フフフ…東さんは東西南北の中でも最弱…」

「トラペジウムコミカライズ」増田こうすけ
ダ・ヴィンチ2019年1月号164〜165頁



「私は東みたいに強い意志を持っていて、いざとなったら1人でも生きていけるぞってタイプではなくて。昔から友達が好きだし、周りの人に支えられて生きてきたんですね。“高山一実って本当はこういう人です”というエッセイが小説の後に載っていたら、『トラペジウム』のことを違う印象で捉えてもらえるかもしれないと思ったんです」

文庫化記念ロングインタビュー 高山一実
ダ・ヴィンチ2020年4月号188〜191頁



◇角川文庫版

 映画は原作付きであれども映画単品で完成しているのが望ましいし、この映画化作品は実際単品として完成もしてるとは思うが、この原作では記されている映画作中で“言及”はしていない、旅の途中に散りばめられたあれこれと、一番最後に打ち明けられた宝物に何を思われるか。この原作を読まれたうえでのさらなる感想をぜひ拝見したい。
 文庫版にはダ・ヴィンチ連載時のカラー挿絵集と書き下ろしエッセイが追録。


◇角川つばさ文庫版「アニメ映画 トラペジウム」/百瀬しのぶ・文

 小中学生向けレーベルだが、ほぼあの映画本編まんま+各キャラの心情補足有りの正しく映画版のノベライズ。故に東ゆう自身は全年齢向けだがカットされている「死にものぐるいで」とテネリタスキックはR15疑惑。
 映画本編でセリフでは語られていない場面場面の心情が添えられているので、映画版の副読本としてもとてもわかりやすかったです。映画トラペジウムを観て人物描写が薄っぺらいと感じられたなら、こちらを読んでから本編を再鑑賞したら、セリフはなくとも四人それぞれの表情や場面描写で雄弁に語られているのが解る。それでも足りていないように思えたら高山一実さんの原作をぜひ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?