着物の格について。
この秋から着付けを習い始めました、というお客様が
続けて来られました。
着物を着てみたい季節でもあるし
お正月に向けて着付け教室も新しいクラス開設の時期なんですね。
着付け教室に通い始めた方は
着物って楽しいけど知るほど難しい・・・とおっしゃいます。
着物と帯の格や色柄の取り合わせで悩まれるようです。
洋装の場合 フォーマルと普段着では
材質や見た目、値段でおおよその区別がつきますが
着物は形は同じだし
材質も慣れないと絹、木綿、ポリ・・・の差も判りづらいです。
値段で区別しようにも 正装の1つ紋の色無地が
普段着の木綿の絣よりはるかに安かったりします。
数万円のポリの一つ紋色無地が
30万の大島紬より格下とは納得がいかないかもしれませんが
紋が付いてることが格の最上級ということになります。
更に1つ紋、3つ紋、5つ紋、と紋の数で格が上がります。
この紋は必ず家紋で 洒落紋は格上げにはなりません。
生地の格で言えば
元々は武家では織物の方が格上とされて正装は織物でしたが
友禅が生まれてからは凝った技法で華やかな後染を
正装に用いたために染物が格上となりました。
しかし帯においては染より織が格上とされるのですから
ややこしいと感じることでしょう。
着物の場合 着物と帯は同格か帯の方を格上にするのが
一般ですから格を覚えておくことが必要になります。
一番簡単なのは とにかく金銀を使ったものは格が高く、
使われてないものはその下、ということ。
しかし 洒落ものでも
効果として金銀が使われていることもあるので
とりあへず、地が金銀のものは普段着には合わせない、と
しておけば ほぼ間違いないでしょう。
文様にも格があります。
着物の柄は多種多様で覚えるのも大変ですが
大体の傾向とイメージで格の上下を覚えていないと
コーディネイトのバランスが悪いことになります。
大抵の場合 縞や格子、幾何学文様や抽象柄よりも
有職文様と呼ばれる、平安時代以降に家格や伝統に相応して
公家の装束や調度品に付けたとされている文様等
(有栖川文様、獅子狩文様などお茶道具に使われることも多い)
古典的なものの方が格上になります。
植物では 桐、松、竹、梅、橘などの吉祥文の格が高く
菊や牡丹が続きます。
動物も意外と格が高いものが多く
(アニマル柄は大阪のおばちゃんの専売ですが・・・)
五行でいう四神である青龍(龍)朱雀(鳳凰)白虎(虎)玄武(亀)、
鶴や麒麟、鯉も格が高くなります。
身近な犬猫や小鳥、金魚などは普段着ですね。
うさぎは月とうさぎ、的に使われると普段着ですが
花兎、になると有職紋の1つになります。
しかし どんなに格の高い柄でも
絣で織られたものは洒落着にしかなりません。
唐織ならば格上になります。
まず 生地の質、そして柄ということになります。
昔の越後上布とか久留米絣にあるんですよ、
鶴亀、とか松竹梅、とか海老とか・・・。
かつて、高価な絹の友禅を買えなかった庶民の
せめてもの晴れ着だったのだと思いますが
今の時代では 晴れ着には使えません。
本来は色についても格があるのですが
この頃は色についてまでは言わなくなりました。
日本では推古天皇11年(603年)に冠位十二階を定めたときから
色による位が定められました。
一番地位の高い「大徳」を濃紫とし
以下 青、赤、黄、白、黒 にそれぞれ濃い、薄いがあったとされます。
紫、という色は 世界各国で最上級の色と定められていることが多いです。
王族や貴族にのみ許された色、というのは
それだけ権力がないと手にできない色であり、
贅をつくした色ということです。
化学染料のない時代、自然界から色を抽出していました。
作り出すのに手間暇がかかり、また、堅牢度が低いものは
1回の着用しかしない、という権力のある者のだけ許される贅沢です。
だけど あまり難しく考えないで
沢山の柄を見ることで なんとなく格がありそう、とか
あぁこれは普段用だな、と判るようになりますから
実物でもネットでも沢山の着物を見るようにしてください。
それが一番の近道です。