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桶絞り。

昨日は絞りの浴衣のことを書きました。
浴衣の絞りは 板締めや有松の手絞りが有名ですね。

絞りにも いろいろあって
細かい粒を1つ1つ巻き上げていく鹿の子が有名ですが
くも絞り、ほたる絞り、柳絞りなどの柄を作る絞りもあります。
近年 絞りの浴衣で有名な 有松絞りは
蜘蛛絞りなら蜘蛛絞りだけを、
柳絞りなら柳絞りだけ、と専門の職人さんが居る位
絞りの技法は難しく奥が深いものです。

柄を作るのではなく 
地色を染め分けるための桶絞り、というものがあります。
上の画像の羽織がそれで 色の境目に桶絞りが使われています。
絵羽ものにも良く使われる
雲取などを 大きく絞りで形作り その中に友禅などを描きます。
それには 染めたい部分を桶の外に出し
染まっては困る部分を桶の内側に密閉してしまうのです。
桶の縁が色の境界線になるわけで
針で生地を桶の縁に固定しておいて
蓋で押さえて密閉します。
富山の鱒寿司のように角材を当てて
ロープでギチギチと締め上げていきます。
この締め上げた桶をそのままドブンと
染料に漬けてしまうのですから
ほど厳重に密閉されていなければいけません。
桶と生地のきちきちの間に
畳んだ和紙を叩き込む念の入れようです。

染めるのは染め屋さんの仕事になります。
染料の温度は90度ほどに熱せられていて
桶を回転させながら 満遍なく染めていきます。
手早くしないと熱で桶の中の空気が膨張して
桶が破裂する恐れがあるのですが 
この空気の膨張が入り込もうとする
染料を押し戻す役目もしてくれています。
熱い染料で濡れている状態で
反物が乾いた時の色に注文通りの色に染まっているかを
見極めるのも職人さんの力量です。

単純な道具から巧緻なものを生み出す
まさに職人芸は 着物のいたるところの工程で
様々に発揮されていますが
その苦労が表に出ることはありません。
それを伝えるのも呉服屋の務めの1つだと思っています。




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