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浴衣の種類ー長板中型ってなに?

立秋過ぎても猛暑が続いてますね。
この夏 花火大会はほとんど中止になりましたけど
各地で「大会」ではない花火は上がっているようです。
浴衣の方を見かけるようになりました。
涼し気な浴衣は やっぱり良いですねー

浴衣にも染め方でいくつか種類があります。
ここ数年人気なのは 板締め絞りや有松絞りなどの絞りの浴衣。
有松絞りは かつては愛知県以外では ほとんど見ることがなかったですが
今は 東京のデパートや呉服店で普通に扱われています。
東京の浴衣といえば 藍と白のコントラストが美しい
長板中型染めです。

まず 長板中型、という呼び方は
型付けに長板(長さ約6,3メートルの樅(もみ)の一枚板)を使い
布の表、裏の両面を糊置き防染をして藍染にするもので
中型とは 柄の大きさの大・中・小のうちの
中型のものを用いる、ということです。
江戸時代から浴衣に染められていたので
浴衣の代名詞ともなっています。

江戸幕府は裕福になった庶民に対し
度々の奢侈禁止令をだしました。
そのため 絹の着物は二枚重ねた下着や襦袢、
羽織の裏などに隠れて贅を尽くすようになりましたが
木綿は規制が緩かったので
浴衣の柄は奇抜で凝ったものになっていきました。

江戸末期、夏芝居は夕方から幕開けになり
中幕後の休み時間に茶屋で食事をするのですが
その時 浴衣に着替えて 
後半の芝居は浴衣で寛いだ芝居見物となりました。
そうなると女性客たちは お互いの浴衣の柄を
厳しくチェックしたことでしょう。
浴衣は湯上りのバスローブから
ファッションになっていったのです。

明治になり服装の改正で
裃が廃止されたので、 それまで裃小紋を染めていた職人は
浴衣の染めに転向しました。
その柄は 江戸小紋をそのまま使ったり
割付にしたりして 粋好みの高級品として もてはやされました。

大正になると 長板を使わずに
折りたたんで一度に大量に手拭を染める技法が開発され
注染と呼ばれ 浴衣にも応用されるようになりました。
また、浜松では 紙の型ではなく
真鍮の型を使う方法も行われるようになり
手間と技術が必要な長板中型染めは衰退していきます。

そして関東大震災で 大切な型も染場も焼けてしまい
移転を余儀なくされた後には
多くの染屋が注染に切り替えたのでした。

小紋と長板中型の違いは
表地の作業はあまり変らなくとも
長板中型は両面染であり
裏表がピタリと合うように型を置き、糊付けする技術が必要です。
また 小紋は引き染なのに対し
長板中型は 藍甕に何度も漬ける染め方です。
つまり 小紋より長板中型の方が
何倍もの手間隙がかるのに
小紋は絹に染めてよそ行きで、
長板中型は木綿の藍染なので普段着扱いになり
高い値段が取れなかったのです。

日常的にお洒落で手間の掛かった着物を着る、という
生活がなくなってしまい
長板中型染も 絶滅の危機に瀕しています。

着物、着ないと本当に途絶えてしまいます。
お手持ちの着物、着ましょう。

明日は 長板中型の染めの実際についてお話したいと思います。

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