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地機~結城紬


昨日は 結城縮について書きましたけど
結城を結城たらしめているものの1つに
地機(じばた)、というものがあります。

地機、とは最も古くからある手織り機の1つで
下機(しもはた)、神代機(じんだいいばた)腰機(こしはた)などとも呼ばれます。
以前は いざり機、とも呼ばれていましたが
いざり、が差別用語ということで使用不可になりました。

経糸を織り手の腰に巻きつけて
体全体でひっぱるようにして織っていきます。 
ここが高機(よく実演などで見かける、鶴の恩返しの挿絵の手織り機です)との一番の違いです。
高機では手足は使っても 体全体までは使わずに織れますが
地機は五体で織る、と言われるほどに
人と機とが一体となり、織り手が機の一部になりきらないと 
織れないところに特徴があります。

経糸を腰で引き、ゆっくりと緯糸を打ち込みます。
機の招木を上げて織る作業を行なうと
自然と織り手の体は経糸に引かれて前へ誘われるようになり
経糸の緊張を適度に馴染ませてくれます。
招木を下げると 体は元の位置に戻り
経糸の緩みを吸収して程よい緊張を与えます。
この動作の繰り返しが 
経糸に無理な力を加えず糸へのストレスを最小にして、
一定の張りを保たせる、という役目を果たすのです。
生地の断面を顕微鏡で見ると
機械で織られたものは 糸の交差する部分が角張った感じになり
地機では 曲線のゆったりとした交差になるそうです。
それが結城独特のふんわりとした風合を作り出しています。

紬糸は生糸に比べると ひっぱりに弱い、という性質があります。
従って 経糸の張りには気を使わなくてはいけません。
殊に天然繊維は日々の気温や湿度によって
微妙な伸縮をみせます。
このような細かく変化する糸の加減を見極めつつ
織り進めることができるのが地機なのです。

紬の着心地の良さは
糸の優れた性質を損なわずに織られることにあります。 
糸を労わりながら織ることで 
すばらしい風合いが生み出されるのです。
 
結城、越後上布などのごく一部の重要無形文化財の紬と
一部の作家のみになってしまった地機ですが
着物の良さを後世に伝えるためにも
受け継がれていって欲しいものです。

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