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日本刺繍のお話。

日本で刺繍が行われるようになったのは飛鳥時代で
中国から仏教が伝わると共に金剛仏や
布に刺繍で仏を表す繍仏が作られるようになったのが始りです。

友禅が行われるようになる以前には装飾の多くは刺繍でした。
衣服のみならず 屏風や掛け軸なども刺繍によって表現されていたのです。
平安時代には男性の束帯や女性の十二単が
豪華な刺繍で競い合うようにして
華やかで手のかかるものが作られました。
江戸中期に友禅が行われるようになると
染と刺繍の競演が さらに美しく着物を飾るようになりました。
江戸幕府は再三の豪奢禁止令で
取り締まりを厳しくしましたが
江戸の繁栄と共に刺繍も隆盛を続けました。

日本刺繍は1000色近い色を自在に組み合わせ
太さや撚りを調節して
デザインに合った技法で刺していきます。
殊に撚りは大切で、どのように撚りをかけるかによって、
風合い、色の具合、力強さなど様々な事を表現します。
撚りをかけない平糸の状態で使ったり、
1本の糸を撚る、数本をまとめて撚る、1本を半分にして撚るなど、
糸を作ります。
日本刺繍は 刺すことばかりではありません。 
糸を作ることに作家の独自性が現れるのです。


フランス刺繍は、左手で布を張った枠を持ち、
右手で布をすくうように縫い進みます。
日本刺繍の場合は、専用の刺繍台に布を張り、
両手を使って縫います。
右手で上から針を入れ、左手で針を取って、
そのまま左手で下から針を出して、右手で取って……。
布に対して垂直に糸を入れていきます。

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一本の針と一筋の糸だけの技ですから
糸の並べ方による 糸の長・短、そして粗・密で表現します。
まつり繍(ぬい)、平繍、すが繍、かすり繍など
画家が筆のタッチで様々な絵を描くように
技法を使い分けて布の上に刺していくのです。
完成まで縦10センチ、横10センチの刺繍を施すのに
約10~20時間かかるとされます。

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戦前は東京にも300近い刺繍屋さんがあって
各々の職人は 縫い紋屋、袋物屋、帯屋、緞帳、化粧回しなど
専門の分野で仕事をこなしていました。
それだけの仕事があったのですが
今はミシン刺繍に押されて廃業を余儀なくされ
ほとんど残っていないのは残念なことです。

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