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紙から布?。紙布の出来るまで。

寒くなってきたので暖かい布が嬉しくなってきました。
一番暖かいのは 経糸も緯糸も手引きの真綿を使った
ふっくらと空気を含んだ本場結城紬や郡上紬。
そして意外なことに 紙布も暖かいのです。
サバイバル術で、新聞紙を身体に巻いて寒気を防ぐ、というのが
ありますので同じですね。

紙布。紙の布。
紙を布にする、ってどういうことでしょう?

まず 紙を糸にしなくてはいけません。
作家さんによって多少方法が違いますが
帯1本織るのに 新聞紙二枚分の大きさの手漉きの和紙
(半紙より薄いです)が 50枚必要だそうです。

まず その紙を同じ幅(訳5ミリ)に裁断するのが一仕事です。
それをさらに よじれたり絡まったりしない様に
箱の中に8の字に重ねていきます。
霧吹きで湿らせながら 撚りを掛けて紡いでいくのです。
これは出雲絣の大熊真知子さんのお宅へ伺った時の
紙糸作り。

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細く裁断した和紙に霧吹きで湿り気を与えながら
均一の太さになるよう縒っていきます。

ひたすらに根気。
染織は好きでないと出来ない、といのがわかります。
黙々、黙々・・・とひたすら続く作業。

こうして撚りをかけた糸も染色のために
染料に漬けると 撚りが戻ってしまいます。
それをさらに 撚り直して・・・
この手間が ふっくらとした独特の風合いを作り出します。

和紙は丈夫で水にも強いものです。
保温性にも優れ 軽いのも特徴。

書き損じの紙一枚とて無駄にせず、
また 時には古くなった大福帖などの廃品を利用して
先人たちは大事な布を作ったのです。

こちらは池田明美さんの白石紙布の作り方です。

まず、紙をこんな風に切ります。

紙布1


 これは 帯用、5ミリほどの幅にカッターで切れ目を入れていきます。

 
 ジャッケ石と呼ばれる
 溶岩を濡らして 切れ目を入れた和紙を転がすように揉みます。
 段々 コヨリのように撚れていって・・・

紙布2


 左が揉み初め、 しばらく揉んで撚りがかかった状態が右側。
 切れ目の端の繋がったことろを爪で千切り取るようにして
 糸状になった紙を1本に繋いでいきます。
 苧麻を績むのと同じような作業です。

紙布3

 
 績んで 1本に繋がったら小豆を重しにして
(大豆じゃ駄目なんだそうで)
 糸同士が絡まないようにザルに広げます。

紙布4

 
 
 しっかりと撚りをかけながら糸を巻き取ってきます。

紙布6


 奥のほう、細いのが糸巻きから外した糸です。
 これをさらに煮て撚り止めをして 糸の感性です。

紙布7

 その後 それぞれの色に染めて織り上げます。

 1反分の糸を作るだけで2ヶ月以上。
 大変な作業です。

 奈良の東大寺のお水取りの時に僧侶が着ているのが
 この 白石紙布だそうです。
 

ともかく手間暇のかかるのが紙布。
昔は絹はもちろん、木綿も舶来の貴重品ですから
身近にあるもので糸を作り、布を織っていたのです。

先人の知恵と根気には本当に頭が下がります。
このような手作りのものが無くなってしまいませんように。

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