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藍、北から南から。


昨日は藍の簡単な歴史と効能についてを書きました。
今日は 植物である藍をどうやって染めるのか。
実は、日本各地、地域によって藍、と呼ばれる植物も
染めるための手順も違うのです。
そんなことを書いてみたいと思います。
画像は 沖縄の琉球藍。

一口に藍と言っても日本の地域によっていくつかの種類があります。
大きく3つに分けることができ
一番身近で多いのは 阿波で採れる蓼藍の葉っぱを
発酵させて作るスクモを使ったもの。
沖縄ではキツネノマゴ科の植物を発酵させ、
泥藍にしたものから作る琉球藍。
そして宮城県では加熱しない縮藍を使って藍を立てる
冷藍染めがあります。
藍は全て空気媒染で媒染剤は使用しません。
求める色になるまで
染液に浸しては空気に晒し、浸しては晒し、の繰り返しです。
それぞれの地域にあった特徴があるので比較してみました。

 @阿波藍
 現在、藍染めの元であるスクモを作っているのはここだけです。
 本土で染められる藍はこの土地で作られたスクモを買い
 各々の藍甕で染め液に育て上げられます。
 3月の初めに蓼藍の種を蒔き、
 初夏に60-70センチに伸びたところで刈り取ります。
 これを刻んで乾燥させておきます。
 夏の終わりに小屋の中に籾殻、砂、粘土を敷き詰めた床を作り
 9月半ばの大安の日を選んで乾燥した藍の葉をその上に積み上げます。
 そこに水を打ち、均等に混ぜ合わせることを繰り返すと 
 次第に発酵してきます。
 この時の水の量や混ぜ具合が勘と経験の賜物で
 気温が下がってくればムシロを被せて保温し、
 発酵を促すためにお酒を吹きかけたりしながら
 発酵の状態を最良にちます。
 12月の初めになると小屋一杯の山だった藍が
 粘土状に発酵して半量ほどになります。
 これがスクモです。
 スクモをレンガのように形成したものを藍玉と呼び
 全国の紺屋さん(染め屋さん)はこれを買い求め
 自分の藍甕で水と灰汁(アルカリ)、お酒や水あめなどを加えて
 保温しながら自分の藍を育てるのです。
 藍の染め液を作ることを「藍を建てる」という言い方をします。
 極薄い「甕覗き」と呼ばれる水色から
 黒に近い「留紺」呼ばれる色まで様々に染められます。

 @琉球藍
 琉球絣や紅型に使われるのは
 キツネノマゴ科の120センチほどに育つ琉球藍です。
 温暖な地方なので
 刈り取ったまま、カマと呼ばれる
 浴槽のようなところへ入れ
 雨水を注ぎ、竹で重しをしておくと3,4日で自然発酵します。
 発酵した水に石灰を入れると
 藍の成分が沈殿します。
 この泥のようなものが泥藍です。
 泥藍を甕に入れ 水と泡盛、灰汁などを混ぜて
 藍建てをします。
 阿波藍より濃く染めることが多いです。

 @冷藍染
 宮城県の栗駒町というところで行われている方法です。
 日本最古の染色技術のまま、と言われる
 原始的ですが手間隙のかかる染め方です。
 大抵の藍は外から保温して発酵を促し
 季節に関係なく藍建てをするのですが
 加熱保温を必要としない夏の一時期、
 自然に藍が建つわずかな期間にだけ染められます。
 保温の必要がないので甕ではなく木桶で藍を建てます。
 藍はは縮藍という種類の蓼藍の一種。
 冬の間にムシロの上で
 乾燥させた藍の葉と藁をじっくり発酵させ
 春に臼で餅のように搗いて丸めて乾燥させた藍玉をつくります。
 初夏の頃、藍玉にぬるま湯とナラの木の灰を入れ
 一週間ほどで自然と発酵して藍が建ってきます。
 その年の天候に左右され気を抜くことは許されません。
 染められるのは初夏からの1ヶ月間ほどの間だけです。
 濃い色は染めることが出来ませんが
 透明感のある美しい藍に染め上がります。
 また加熱していないので藍の成分が他の染め方より生きていて
 染め上がってからの変化が激しいとも言われます。
 昭和30年に 千葉あやのさんが人間国宝に指定されましたが
 既に娘のよしのさんも他界。
 現在は よしのさんのお嫁さんになる まつ江さんと
 姪の京子さんに技術が伝えられています。

 紫や茜が高貴な人のものだった時代から
 庶民の色だった藍。
 藍単体でも また様々に色を重ねることで
 愛され続けてきた藍は 
 これからもずっと愛され続けていくことでしょう。

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