紅花と烏梅。
紅花のことを調べていましたら烏梅にたどり着きました。
烏梅・・・梅の燻製ですが
一般的には鎮痛・解毒の漢方薬として扱われています。
日本へは遣唐使が薬として持ち帰ったのが最初とされ、
樹木の「梅の木」より先に渡来したとも言われます。
今も漢方薬として中国から輸入されています。
この漢方薬がどうして紅花に関係してくるかと言えば
紅花の美しい紅色を作り出す発色剤の役割を持っているのです。
紅花は黄色と赤の2つの色素を持っています。
美しく澄んだ紅色を得るためには
黄色の色素と不純物を取り去る必要があります。
まずは 摘んで洗った紅花を桶に入れ良く揉みます。
これをムシロに挟んで発酵させたものを 臼で搗いて団子状にします。
この団子を平らなお煎餅のようにして乾燥させたものを花餅といいます。
花餅になると含有する紅の色素の量が
ただの乾燥紅花の10倍ほどになりますが
それでもこの花餅から摘出される紅の量は1~7%しかないのです。
美しい濃紅色を染めるには絹1疋(2反)で
約12キロの紅花が必要といいます。
(ちなみに庶民に許された一斤染の薄紅色は
約600グラムの紅花で染められています)
いかに貴重な色なのかが判ります。
この花餅を水の中で揉みほぐすと黄色の色素が出て
水が黄色に染まります。これを取り除き黄色染用とします。
黄色の色が出た後に 灰汁を入れて保温すると
今度は赤い色が出てきます。
ここに烏梅を使うのです。
烏梅を熱湯に漬けた液は酸性になっています。
この酸が紅花を美しく発色、定着させるのです。
近頃は烏梅の替わりに クエン酸を使用する染色家ありますが
発色の鮮やかさ、透明感は烏梅を使ったものとは
大きな違いがあります。
現在、国産の烏梅は奈良県の1軒だけで生産されています。
昔から漢方薬としてではなく紅花の染色のために
作られてきた烏梅です。
生糸を練るための灰汁も天然の灰汁ではなく
アルカリ溶液で代用したり
染色の媒染剤も科学薬品が多く使われるようにまりました。
手間隙を掛けるしかなかった昔に比べ
手軽で身近になったのかもしれませんが
化学薬品は糸を痛め 色から深みを奪ったようです。
手間と労力と時間のかかる昔の方法は
今の世の中にはなかなか受け入れ難いかもしれませんが
今に伝えようとする方たちもいらっしゃいます。
そんな風にして作られたものたちを
紹介し続けたいと思っています。