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秋には更紗がよく似あう?

秋になると出したくなる紋様に 更紗、というものがあります。
そもそも、更紗とはナンだ?と問えば
世界各地でさまざまな発展を遂げ、
日本の染織りにも深く影響を及ぼしましたが
その多様さも手伝ってはっきりした定義が難しくなっています。
大まかに「花や人物などの模様を染めつけた木綿の布」というのが
世界の共通の認識になっているようです。

エキゾチックなこの柄はインドが起源とされています。
木綿の産地でもあるインドは染色も様々に発展しました。 
紀元前3000年頃には 
木綿織物に手描きの更紗が染められ始めています。
初期の更紗は枝などの細いものでロウケツ染めにしたものでした。
それがインドから世界中に広まり
それぞれの土地で独自の更紗となっていったのです。
まずはペルシャへ渡り ペルシャ更紗になりました。
イギリスやフランスへも広がってヨーロッパの花模様へと繋がります。
もちろんアジアでは タイ更紗、
バティックの名前で知られるジャワ更紗、中国更紗もありますし
日本では和更紗になりました。
各国で文様も技法も別々に発展して 一見全く別の模様になりましたが
どれもなんとなくエキゾチックで密度が濃く
それが「更紗らしさ」になっています。

世界各国の更紗はその技法、模様も様々です。
エキゾチックで不思議な模様も多く
壁画のようだったり 正体不明の動物がいたり
ギリシャ神話の人物や舞踏風景だったり
またキリスト教的象徴である十字や鳩も多く用いられています。
文化交流につれて ササン朝ペルシアの影響が入ると
幾何学的な模様が増えていわゆるペイズリーや
葡萄蔓や唐草が現れています。
シルクロードを渡ると
日本で有職文様となる獅子狩り紋や唐草の原点を見ることができます。

チャンチン

さて、日本に渡ってきた更紗は
室町時代に南蛮渡来の舶来品として上流社会で珍重され
茶人の間では名物裂として愛用されました。
国内で更紗が作られるようになるのは
木綿の栽培が普及した江戸時代です。 
当初はインド更紗やジャワ更紗を模したものでしたが
次第に日本独自の模様や構成が取り入れられ
日本風に変化していきました。
しかし 日本風になっても更紗は更紗で
日本の絵画の持つ空白や簡略の美とは違い
過剰なまでに空間を埋め尽くし色彩も豊富なものです。
それゆえ 実は着物の柄として流行するのは
昭和、それも戦後になってからです。

日本で染められている更紗は
長崎の天草更紗、鍋島藩が保護した鍋島更紗、
京友禅のように華やかな京更紗、
多数の型紙を使う江戸更紗などです。

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じざいやで取り扱いをしている 橋本文子さんの更紗は
チャンチン、という独特の器具を使うロウケツ染です。
チャンチン染については明日お話しましょう。

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