裄とお襦袢の裄のお話。

 この頃は 同じ腕の長さでも
 昔より長めに着たい、とおっしゃる方が増えました。
 洋服の感覚だと 手首が出てるのが
 気恥ずかしい、と。
 お見合いの席で じっと座ってるだけなら
 それでもいいのですが
 袖口が手首に近いと
 着物には 振り がありますので
 動いた時に 振りが邪魔になったり
 いらない汚れをつけ易くなります。 
 だけど 身長が170センチを越える方だと
 手首に掛からなくても 
 裄が1尺8寸5分(70センチ)程度は
 良くあることです。
 今の反物は大抵1尺はありますので
 (少なくともうちの反物はほとんど1尺以上。
  一部の紬を除いて出来る限り広幅にしてもらってます)
 裄が1尺8寸5分なら余裕で大丈夫ですが
 問題は 肩幅と袖幅の割合です。
 
 着物はその構造上 裄だけを長くするのは
 無理がある、と理解していただきたいです。
 着物は基本的に4枚の布から出来ています。
 左右の身頃と左右の袖、ということです。
 前身頃には 打ち合わせのための
 衿とおくみが付いて着物の形になります。

 裄とは 袖幅と肩幅を合わせた寸法になります。
 着物は裾から肩まで
(肩山に切れ目はないので正しくは裾から裾まで)
 1枚の布です。
 昔から女並、と呼ばれる洋服ならMサイズの標準寸法がありまして
 それだと後幅7寸5分(約28,5センチ)
 肩幅8寸(約30、5センチ)で その差の5分ですが
 それを裾から身八つ口まではほぼまっすぐ、
 身八つ口~肩山までの6寸(約20センチ)の間で
 なだらかに角度をつけて吸収します。
 裄が長くても 太っている方で後幅も広ければ
 肩幅が広くなっても女並の相似形で
 着物の形は変わりません。
 ところが 体は細くて裄だけを長くしたい場合ですと
 後幅は変わらず 肩幅と袖幅だけが長くなるので
 身八つ口から肩山までの角度が大きくなり
 上半身ばかりが大きな扇のような
 バランスの悪い形の着物になってしまいます。
 これは 着崩れやシワの原因にもなります。

 後幅と肩幅の差は1寸以内(約3センチ)が
 美しいと言えると思います。
 また あまり裄丈を長くすると
 羽織やコート類はきもの以上の裄が必要なので
 作れる反物の選択範囲がとても狭くなります。

 着物を着て 気をつけ、や 前へならえ、の姿勢をとることは
 まず、ないのですから
 軽く肘を曲げて着物姿らしい所作をすれば
 多少の裄の短さは目立たないと思います。
 特に紬などの日常着は あまり長い裄は
 もたついて感じるように思います。
 手首が見えててきぱき行動的に見えるほうが
 紬らしいと思うのですが。。。


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