見出し画像

藍はなぜ色落ちするのか?

寒くなってこの冬初のダウンコートを出しました。
着物の下には ユニクロのヒートテックババシャツです。
毎日犬の散歩で1万歩以上は歩くのですが
本当は冬眠してしまいたい・・・
寒いといろんなものが不活性になります。
夏は元気に発酵している藍も冬にはお休みです。


藍染めの着物は色落ちするから・・・と言われます。
化学染料のものはあまり色落ちすることはありませんが
 (色やけはします。)
天然染料、特に藍と泥は色落ち、色移りのしやすいものです。

大抵の天然染料は植物にしても 貝紫などの動物由来のものにしても
染めるときは 染料の素になるものを煮出した染液を使って
高温の状態で糸を浸します。
染液を煮ている釜?に直接入れるか
黄八丈や白鷹のように熱い煮汁を上からかけ回すかの違いはあっても 
高温の染液は繊維の奥まで染み込み
温度によって繊維に定着します。
友禅などの染め物も蒸して染料を布に定着させているのです。

しかし藍と泥を染めるときには
染液の温度が低く、繊維の奥まで染み込むことが難しい上に
低温なので染料の定着が悪いのです。
乱暴な言い方をすれば 藍や泥は繊維の上に
染料が乗っているような状態です。
これを定着させるために
色止、という加工があります。
古来より塩を使うとか 酸を使うとかいろいろな方法が
あるようですが それぞれの技術者の企業秘密となっていて
詳しくは教えてもらえませんが
ある程度までの色を定着させることは可能と言われますが 
100%とはいえません。
同じ加工をしても 色落ちを防げることもあれば
防ぎきれないことも多いのです。
それは その糸を染めたときの
気温や湿度、または糸の状態などの
微妙な加減が引き起こすことで
ゆえに 藍染めは生き物だ、と言われることになります。

不思議なことに年を経れば色落ちしにくくなります。
繊維の上に乗っている染料は
濡れやこすれに対して弱く、色移りを招きます。
つまり、帯結びなどで摩擦が起きたり
雨の日に歩いて裾が水分を含んだ時に
帯地や襦袢に色移りが起きやすくなります。
対策としては
まず 色落ちしても良い帯や襦袢を着る。
帯と着物の間に薄い手拭いなどを入れて結ぶ。
などが考えられます。
 
どうしても色落ちが心配、という方は
ガード加工をしてしまえばある程度色落ちは防げます。
生きていると言われる藍や泥の染料を殺してしまうことなので
ちょっと悲しいのですが
安心感に替えられない、とおっしゃる方には
それも一手ではあります。
 
だけど 藍や泥の有機物的な染は
着ていくうちに変化していくのを楽しめるのです。
以前、宮城県の千葉あやの(故人)の染めた冷藍染の着物を
お求め頂いたことがあるのですが
加熱しない自然発酵の冷藍染は仕立ててからも変化し続け
10年近くたって その着物をお召しになって遊びに来られたのですが
目を疑うほどに色が濃く、柄がはっきり美しくなっていました。
あやのさんの冷藍染は 麻を織り、型を置いて藍染にしたものですが
型がちょっとズレていたり、柄の際もぼぉっとぼやけた感じだったのですが
藍と白のコントラストが美しい着物に育っていたのです。

色落ちも味のうち、と納得して
天然故と嫌わずにいて欲しいと願います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?