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天蚕野蚕

今日サイトでご紹介した人間国宝・玉那覇有公さんの帯は
帯地にタッサーシルク、と呼ばれるインドの野蚕を使っています。
日本の天蚕は 現在、長野県の安曇野天蚕センターで飼育されているほか、
山形や茨城でも 地元の織物に使われる分だけ飼育されています。
安曇野の天蚕は ちょうど今頃、薄緑の美しい繭を作っています。
天然の蚕は 鳥などに食べられないよう保護色をしているので
葉っぱと同じ色なのです。
白い繭は野外では目立ってすぐに見つかってしまい生き残れません。
野良に戻れないよう人間に改良されてしまった家蚕。
自然の中で生きている天蚕、野蚕についてのお話です。

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カイコ(家で飼うから飼蚕(かいこ)に対して
ヤマコ(山蚕)とも呼ばれます。
養蚕される家蚕と違い、野生のものですが
長野県穂高の町で僅かながらに飼育されています。
 
飼育と言っても 家蚕のように室内に居るのではなく
餌となるクヌギやナラ、カシワなどの樹木ごとネットで囲って
(1本1本の木にネットをかけるのではなく
大きなビニールハウスをネットで作ってその中に木を植えている)
飼育しています。
1本の木で10匹ほどの幼虫を育てます。
野生なのだから勝手に葉っぱを食べて一人で繭になって
手間いらず・・・ではありません。
ネットを張るのは天敵の鳥や蜂から守るためですが
猿はネットの隙間から侵入、木を荒らします。
天蚕の幼虫は家蚕の幼虫の3,4倍の大きさに成長しますので
食欲も並みではありません。
1本の木の葉っぱを食べつくすと別の木へ移動して食べ続けます。
ところがこの移動の際に地面を這っていると
蟻にやられたり 日差しが強いと衰弱して
次の木に移る前に死んでしまう幼虫もいます。 
ですから人間が手で移してやらなくてはなりません。
自然淘汰されていては飼育の意味がありませんから。
卵から孵化して繭を作るまでは目を放せないのです。
行動範囲が広い分、家蚕より手が掛かります。

家蚕は春秋の2回繭を作りますが(種類によって違いますが)
天蚕は7月半ば、年に一度だけ繭を作ります。
1軒の天蚕農家で出荷できる繭の数は現在2000個ほどです。
これは着物一反分にしかならない量なのです。
2007年現在、天蚕農家は6軒だそうですから
どれほど貴重かが知れると思います。
しかし 織り上がった反物は高価ですが
天蚕農家から出荷される繭の価格は労力に見合う金額ではありません。
家蚕の繭は重量で取引されますが 天蚕は粒単位で取引されます。
それでも一年で1反分の収入では後継者が出来ないのは
仕方ないことかもしれません。
 
幼虫は大きな天蚕ですが繭の大きさはあまり変わりなく
1つの繭から取れる糸は家蚕の900~1500メートルに対し
700メートルほどです。
家蚕よりセシリンに含まれる石灰やタンニンなどの不純物が多く
精練してもあまり目減りはしませんが
染まり難い性質を持っています。
風合いはとても柔らかく、
光沢がありシワになり難い復元力があります。

貴重な糸ですから経糸緯糸100%天蚕、というものは
とても少なく 緯糸だけ、とか
家蚕の生糸の周りに天蚕糸を巻きつけたものを使用して
織られたものが多く見受けられます。

着物にできる 自然の蚕たちは
《テンサン(天蚕)》
 ヤママユガともいわれ、日本原産で全国各地に分布生息しています。
 クヌギ、ナラ、カシ ワ、カシ、クリ等の葉を食べ、緑色の美しい繭を  つくります。
 シワになり難いとされ、また染まり難いため
 家蚕糸と交織にすると天蚕の部分だけ染残ります。

《サクサン(柞蚕)》
 中国が原産であるが、日本、朝鮮、インド産などがあり、
 「柞蚕糸」 又は 「タッサーシルク」 と呼ばれます。
 淡褐色ないし茶褐色の繭で糸は独特の光沢でゴールデンシルクとも呼ばれ ます。

《ムガサン》
 生息しているのは、インドのアッサム地方だけで、
 黄色、黄褐色の繭をつります。
 ムガシルクと呼ばれショールなどにもされます。

《エリサン》
 インド、アッサムの原産で、非常に丈夫な絹を作り、中国で多く飼育されています。
 繭は白色、橙黄色、ピンク、赤褐色など様々。
 繭の層が綿上で柔らかく、ふかふかしており、
 簡単に糸を繰り取ることができないので、
 綿やウールのように主として紡績原料になっています。

<<与那国蚕>>
与那国島、インドネシアに生息する最大級の大きな蛾で繭も大きいです。
現在 保護されていて採ることができません。

それぞれの蚕によって繭が違うように
糸質も違うので
その糸質にあった染め、織りを熟知していないと
野蚕は扱えないのです。 


じざいや
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