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着物のお仕立今昔。


この頃の傾向として 着物を新しく仕立てるよりも
今あるものの お直しのご相談を多く承るようになりました。

お母様からの頂きものの着物などで
戦前などの かなり古いものだと 
仕立方が今とずいぶん違うなぁ。。と感じるものがあります。
戦前、戦後まもなくの頃は
着物は仕立てても 解くのが当たり前のものでしたから
縫い目も結構大きくて
掛衿も 本当に掛衿で 汚れればすぐに取れるよう、
縫い目を外に出してザクザク留めてあったり。
動きやすいように 裾が広くしてある仕立も良く見かけます。
仕立が出来る人も 身近に沢山いたので
専門のプロに任せるもの、というより
自分でするか 近所や親戚の手の上手い人に頼むもの、
という感覚で 着物の形になっていれば良し、という
仕立が多かったようです。
寸法もかなりいい加減です。
着方も緩かったですし 着物と襦袢を全て合わせる、なんて事は
していなかったようです。
 
現在の着物事情では
仕立てた後に解いて仕立て直し、となると
1枚の着物に1回か2回、という場合が多いと思います。 
私のように 仕事で日常に着てますと
傷みますので3年に一度は仕立て直したりで
すでに4回目の仕立て直しを終えて
次回はもう無理ですねぇ・・と言われているものもあります。

その着物にとって 一度切りの仕立なら
着る方にとって最良の仕立であって欲しいと思います。
着心地の良い、着姿の良い、
着る方の体型、着方、動き方にあった仕立です。
 
不況で仕立業界も 安い海外仕立に仕事が流れているようです。
私は海外仕立の全てが悪いとは思っていません。
この頃は国内仕立と見劣りしないどころか
下手な国内より上手い縫い方も多いようです。
ネットで値段だけで依頼した国内仕立で
寸法違い、裁間違い、着心地の悪さ、と言った話も
多く耳にしますが
きちんと指導された海外仕立は
縫い目も細かく 寸法もこちらの指示通りになるようです。

ですから 大量にプリントされるような量産品の
小紋や帯は仕立代の安い海外仕立で
プレタ着物などの値ごろな着物にして
若い方にも気軽に着れるものを普及させるのは
これからの着物業界に必要なことだと思います。
洋服にはユニクロからオートクチュールまであるのだから
着物だって広い選択枝があるべきです。
 
でも 思入れの一枚、ならば
着物を選ぶように 仕立も選んで欲しいと思います。
海外仕立に無いものは
着物に対する愛情の度合い、というか
着る人に対して想いを込められることだと思います。
仕立てる人は 反物を通して 
その着物を織った人、お召になる人に思いを馳せます。
流れ作業で 袖やオクミ、衿などを
着物の形にするだけではありません。
高い工賃にはそれだけの意味が必要です。
着る人の体型や着方の癖、生地の質や柄によっての微調整は
仕立てる人と着る人に
意志の疎通があればこそ出来得ることでしょう。
国内でも着物を着たことのない仕立士さんや
着ることの嬉しさを判らない仕立士さんには
仕立をお願いしたいと思いません。

どんな人が織り、染めて反物になったかを想うように
どんな人が仕立てて着物になるのか考えます。

反物が織り上がるまでと
織り上がって着物になるまでと
同じように人の手と思いが蓄積されて
着物、という形になる。
そして 着られて初めて完成する。
着てこその着物。
箪笥に眠っている着物も着てあげてくださいね。

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