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「くまぎらいのくま子ちゃん」第5話

おやおや?

いつもはぐーたらなくま子が、めずらしく朝早く起きています。

そうです。

今日は、待ちに待った、新作のお菓子、

「タルトレット フリュイ プランタン」の発売日なのです。

 

くま子は、朝早く起きて、人間界に行く準備をしています。

朝ごはんのトーストを急いで食べ終わると、

透明な羽のマッサージを始めました。

長距離をいどうするので、羽のメンテナンスが必要なのです。


入念なマッサージが終わった後は、

引き出しにしまってあった、葉っぱを取り出しました。

くま子は葉っぱを握りしめて、

目をつぶりながら呪文を唱えはじめました。

「クマダラクマダラ。葉っぱをお金に変えたまえ。」

すると、くま子が握りしめていた葉っぱが、

たちまち人間が使うお金に変わりました。

くま子は妖精なので、魔法が使えるのです。

そして、そのお金をくま子はポシェットの中に入れました。


さらに、くま子は、また目をつぶって、呪文を唱え始めました。

「クマダラクマダラ。くま子を人間の女の子へ変えたまえ。」

すると、くま子は20歳くらいの人間の女の子に変身しました。

人間界に行くには、色々な準備が必要なんです。

  


「よし!準備ばっちし!」

くま子は、大きな帽子をかぶり、玄関のドアを開けると、

すぐさま宙を浮き始めました。

・・・

しばらくお空を飛んだくま子。

地上へゆっくりと降りて行きました。

着いたのは、人が住んでいない島。


その島の中心にある、小ぎれいな倉庫の中に、くま子は入って行きました。

その倉庫の中にある、階段を、トコトコトコトコ降りていくくま子。

その階段の下には、複数の部屋がドアで別れています。

くま子は、一番正面の部屋を開けました。


「くま子さん、いらっしゃい。」

すると、人間の姿をしている優しそうなおじいさんが、部屋の奥で出迎えてくれました。

「妖太郎さん、おはようございます。」

と、くま子さん。


そこは、人間界にある、昔ながらの喫茶店でした。

そのまま、スタスタとお店を出て行ったくま子さん。


お店を出ると、そこは紛れもない、人間界。

いろんな人間たちが街で買い物を楽しんでいました。


多くの人間たちとすれ違いながら、

慣れた足取りでスタスタと歩いていく、くま子さん。


「フラリオン」と書かれた看板の洋菓子店に入っていきました。

ショーガラスをじっくりと覗く、くま子さん。

「タルトレット フリュイ プランタン、あった!」

大きな声で喜ぶくま子さんに対して、店員さんが微笑みながら話しかけました。

「おひとつで宜しいですか?」

「いや、5個ください。」

 

タルトレット フリュイ プランタンを買えて、ご満悦なくま子。

お菓子が悪くなっちゃうから、早く帰らないとね。

おやおや?どこ行くの?
くま子はテクテクと、来た道でない道を歩いて行きます。


着いたのは、おもちゃ屋さん。

そしてお店に着くなり、すぐさま、レジに向かいました。

「あの、えっと……ヨウカイドースイッチというゲームと、
ヨウカイの森というソフトをください。」

「はいよ。」

無愛想なおじいさんの店員が、商品に機械を当て、「ピッ」という音をさせた後、丁寧にゲームとソフトを袋に入れてくれました。

くま子は提示されたお金をそのまま払い、袋を受け取って、店を後にしました。


その後、くま子は妖太郎さんのいる喫茶店に戻りました。

「くま子さん、またね。」

「はい、また。」

妖太郎さんに軽い挨拶をした後、くま子はすぐにドアを開けて、サッといなくなってしまいました。


倉庫のある無人島を出て、宙に浮いてお空を飛び始めたくま子。


そのまま、向かったのは、あび子ちゃんのお家。



ピンポーン。

「なに?いきなり、どうしたの?」

あび子ちゃんはドアを開けると驚いた様子で、言いました。

「これ……。」

言葉足らずに、ゲームを渡すくま子。

「えっ。これ、ヨウカイドースイッチとヨウカイの森のソフトじゃないの!」

照れて、少しはにかんでいる様子のくま子。

でも、なぜか、あび子ちゃんは困った表情です。

「あのね……。実は、友達が昨日買ってきてくれたのよね。
だから、これは受け取れないわ。」


シュンとした表情のくま子。

「もしよかったら、お茶でもして行かない?」

とあび子ちゃん。

「また今度ね。」

くま子は、少し悲しげな表情を浮かべています。

「じゃあ……1週間後の今日の曜日に、うちへいらっしゃらない?

あなたが買ったゲームとソフトを持って来てね、一緒に遊びましょう。」

あび子ちゃんは、声が裏返りながらくま子に話しました。

「いいけど。」

ボソッとくま子は一言、言いました。

「じゃあ、待っているわ。」


そのまま、くま子はビューンとひとっ飛びして、お家まで帰りました。



「なんだ。くま子さんって実は良い妖精なんじゃない。
それにしても悪いことしちゃったわ……。」



お家に帰ったくま子。

いっぱいお空を飛んで、疲れてしまったのか、

くま子は、お菓子を冷蔵庫に入れると、すぐにベッドへバタンキュー。

いびきをかいて、寝はじめました。



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