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「底辺職ランキング」なる記事の問題を考えてみた

3日ほど前だったかな? スマホの通知で初めて知った「底辺職ランキング」のニュースに愕然としました。

実はこの記事、削除前にちらりと見ていました。炎上して当然だと思う一方、そういう文化にしてしまった大人の責任も感じています。

今日はちょっと真面目テイスト。なんでそう感じたのか、ちょっとだけ語らせて下さい。

運営会社側の問題点

まあ今回の件は世間から「運営会社はどういう感性してんだ!」として叩かれているわけでして、それには当然同意であります。

「取り上げられている仕事が社会を支えるエッセンシャルワーカーだから」とかなんとかいう意見もありますが、そもそも「仕事」に優劣なんてつくのでしょうか? 犯罪はまあ別としても、どの仕事も社会に不可欠だから存在しているのであって、どちらが上・どちらが下なんてことはないでしょう。

これに関しては掲載した12+1種の仕事の関係者全員に頭下げてもらうしかないと思います。

ちなみに掲載元のサイトは、現在「仕事 底辺」の検索で1位に輝いています。エイチレフスで見たらそうなっていました。SEOの一環で今回の記事をしたためたのでしょうが、完全な悪手だったことは言うまでもないでしょうね。皮肉すぎます。

実は、これ以外にも複数のサイトが同じKWDで記事を書いています。ラッコ見出しやシークレットモードか何かで調べてみてください。そのタイトルにも「社会の底辺」だとか「悲しすぎ」だとか、まあ好き放題です。

とりあえず言えることは、個人のプライドを逆なでしてまでSEOの方が大事か?という点に尽きます。進化しているとは言え、AIなんてのは所詮機械ですので人間の感情はわかりません。ストップをかけるのは運営会社、もしくは書き手の良心だと思います。

SEOのために思考停止しているのなら、考え方から変える必要があるでしょうね。今回はただの機械の言いなりです。

そんで、この件はライターさんも無関係ではないはず。「断ったら仕事を切られるかもしれない」と怖がる気持ちはわかりますが、違和感を覚えたら即座に相談することも大事だと思います。

読み手側(社会)の問題

さんざん運営元の話をしてきましたが、今回の問題の根本は読み手にもあります。「どういう倫理観してんだ!」と言っているあなたも含め、大人全員が今回の問題の関係者です。

どういうことか。なぜ私がそう思うのか。

みなさんは「技能実習生」という存在をご存知でしょうか? 海外から人材を招聘し、日本で技術や作法を習得して母国発展に役立ててもらおうという国主導の取り組みです。

でも、その実態はただの格安労働力を国外から連れてきているだけです。彼らの真面目さ、勤勉さを使った「日本の労働問題解決策」にすぎないと思います。

私自身、前職で技能実習生と一緒に仕事をしていました。彼らには国に帰ってビジネスをするという想いがあるにも関わらず、会社は結局「どれだけ長く会社に勤めてもらえるか」に腐心していたのです。悪いことではありませんが、それが今回の「底辺職ランキング」に載っていた工場です。

技能実習生は、日本人がやらなくなった仕事を外国人に肩代わりさせているだけ、というのが私の所感。オフィスワークが中心になった昨今、日本人にはいつの間にか「肉体労働は仕事の最下層」という意識が植わってしまったのかもしれません。

あとは「誰でもできる仕事」なんてものはないはず。誰でも見習いの時期があったことを覚えていませんか? 読んで字のごとく「見て習う」のですから、未経験に「よしやってみろ」でできる仕事なんてありません。

オフィスワークへの移行やら大学全入時代やらなんやら原因はありますが、結局読み手側、ひいては日本国民が先入観だけで避ける仕事が出来上がってしまったのは事実。だから私は一概に運営会社だけが悪者と言うのもちょっと違和感を覚えるわけです。

総論:口に出した時点で問題

とはいえ今回の最大の問題は「口に出した」という意味で運営会社にあると思います。

どれだけ「すべての仕事が素晴らしいんだ!」と言っても、考え方は人それぞれですので分かり合えない部分はあります。オフィスワークをブラックと決めつける人も、過去にはいました。

ただそれを、ネットという公の場で公開してしまったのが完全な問題だった。それにすぎません。運営会社の想像力が欠如し、上位表示(SEO)にしか意識が言っていなかったその代表例だと思います。似たような内容の他サイトの記事もまもなく削除されるでしょう。

しかし、この記事が完全に悪かといわれたらそうとも言い切れない側面もあります。実際に底辺として紹介された仕事に対し、社会全体が「そう見られてしまった原因は何か」をド真剣に考える必要があるでしょう。

私も含め、今回の問題は今の日本社会全体の問題のような気もします。

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