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横浜FCのJ2降格に思う。

 まずは選手・スタッフ・フロントやファン・サポーター、横浜FCに関わる全ての皆様、2年間のJ1の旅、お疲れ様でした。 

 J1残留が叶わなかったこと、それ自体は非常に残念だ。そこへ至るまでに費やしたチーム・フロントの努力や苦闘、ファン・サポーターが捧げた熱量の大きさを思えば、コロナ禍で特殊なシーズンとなってしまった2年でJ1を終えてしまったのは無念。そして何より、残留という結果を最も心から欲していたのは、他ならぬ選手たち自身だから。

  クラブは「1年でJ1復帰」という降格チームではお約束のメッセージを繰り返し発信している。
 もちろん、それを言わないと選手獲得や営業面で不利というのは想像できるし、ファイティングポーズを見せておかないとJリーグに叱られるのかもしれない。

  しかしながら、ワタシは思う。
 横浜FCは「1年でJ1」と焦るべきではない、と。

 理由① だって、J2って楽しいじゃん?

 実は来年のJ2行きを大いに楽しみにしている。
 まず、アウェイ観戦はJリーグの大きな魅力の一つだ。J1は大都市が多い。それだけに観光スポットも沢山あるが、仕事などで訪れた場所も多く、新味に欠ける面は否めない。その点、J2は地方都市の割合が増えるので、新たな土地へ訪れる期待感が大きい。

 不在中にJ2へ昇格した秋田、来季初昇格する岩手との対戦やアウェイ訪問、昇格前に行けず心残りだった長崎や琉球への遠征に今から心がワクワクだ。逆に1年では行きたい所全て回り切れない、2年ぐらい時間をかけたいぐらいだ。

1月の沖縄旅行では那覇周辺しか回れなかった。沖縄は広い。FC琉球との対戦でもっと広く回りたい。

そして長年過ごしたJ2でしのぎを削ったライバルたちの力を侮ることは決してないが、今年ほど負け込んで勝てないということもないだろう(もしそうなれば2023年はJ3だ)。三ツ沢でストレスを増やす心配はしないで済む。
 それは横浜FCがクラブとして目指すミッションがブレていないのであれば、ポジティブな要素のはずだ。

 昨年のエイプリルフールに横浜FC公式が発表した記事のなかで、自らのミッションについて記している。

週末のJリーグの試合を楽しみに勉強や仕事を頑張る。
横浜FCが日々の家族の会話のきっかけになる。
子どもたちが三ツ沢のピッチでプレーすることを夢見る。
HAMABLUEのフラッグやアイテムが横浜の街を彩る。
老若男女問わず、街の人たちから応援してもらえる。
そんな日常を目指して...
この地域に住む人々にとって欠かすことのできない、「楽しみ」「心のより所」「プライド」「街のシンボル」「大切な産業」を提供し続ける存在であることをミッションに掲げて、日々活動をしています。

横浜FCは、2024年にタイトル獲得・2025年にACLに出場します。#AprilDream
横浜FC_OFFICIAL 2020/4/1

 この「ミッション」に横浜FCがJ1というカテゴリーにいることは、必須条件ではない。
 むしろJ1下位で毎年のように残留争いに巻き込まれ、防戦一方の我慢サッカーを続けることを、どれだけのファンが「楽しみ」にできるだろうか?
 それよりは、J2で沢山勝ってたまに昇格して、J1はある意味「ご褒美」と割りきって、J2を勝ち抜いたサッカーで玉砕してJ2に戻る。それを繰り返すエレベータークラブの方が身の丈に合っているという考えがあってもいい。特にライトなファン層が多く、これからも開拓しなければならない立場の横浜FCであれば、なおさらだ。

 本格的にJ1昇格争いに加わっていた2017~2019年の3年間は、三ツ沢に多くの観客が集う幸せな時間でもあった。対外的なメッセージはともかくとして、2~3年かけてトップチームをJ2でじっくりと強化する方向のほうが、長期的にプラスになると考える。

理由② 選手にとってのベターな選択を尊重したい

 噂や報道で個人残留が囁かれる若手・外国人選手の名前が少なくない。中心選手として活躍した彼らは、いずれも来季のJ1に送り出しても恥ずかしくない、誇るに値する選手だ。
 それに相応しい、本人が望むオファーがあるのであれば、ワタシは快く送り出したい。

 特に若手であれば、J1の景色を一度目にして体験した以上、そのピッチで更なる高みを究める機会を失いたくないと強く願うだろう。それを「1年でJ1」という近視眼的な目標のために奪うのは忍びない。もっと言えば、日本代表や海外リーグといった「その先」で活躍する彼らを見てみたいし、そのステップに挑戦するのを応援したい。

 プレイヤーに対する敬意として一度慰留はしてほしいが、無理に残留を求めたくはない。未練なく新しい体制で2022年J2に臨んでほしい。

理由③ J2へのリスペクトを忘れちゃいけない

 望むと望まざるとに関わらず、横浜FCは大きく変わる。

 選手だけではない。21年間お世話になった田北さんを含む4人のコーチングスタッフ、服部GMが去り、最終戦セレモニーで社長交代も発表された。早川監督の辞意も報じられ、具体的な新監督候補の名前も挙がっている。
 ここにきて、カズこと三浦和良選手が出場機会を求めて移籍を模索しているとの報道も急浮上してきた。完全移籍ともなれば急激ではないにせよ小野寺グループからの支援は薄くなるだろうし、レンタル移籍であってもスポンサーフィーの減少は免れないだろう。
 横浜FCのトップチームは、フロントも含めてゼロ・ベースの作り直しを、経済的に厳しい環境に晒されながら余儀なくされる可能性が極めて高い。

 加えて過去の昇格データも「1年でJ1昇格」の厳しさを物語る。J2創設以来、延べ52クラブがJ2降格の憂き目にあい、翌年にJ1再昇格を果たしたのは19クラブ。
 その名前を挙げると、浦和・京都・C大阪・広島・柏・神戸・FC東京・甲府・G大阪・湘南・大宮・清水・名古屋。大半がJ2よりもJ1で過ごした時間の長い、いわばJ1を根城とするクラブばかりだ。
 さらに「最下位から1年でJ1」を達成したのは、2002年のC大阪、2005年の京都、2006年の神戸の3クラブのみ。以後、昨年まで13シーズン、22チーム体制のJ2では達成されていない難事業となっているのである。

 他競技に目を向ければ、プロ野球・北海道日本ハムファイターズの”ビッグ・ボス”新庄新監督は、あえて就任1年目で優勝を目指さないと公言した。そこには選手に開幕直後からプレッシャーを与えすぎない配慮がある、とも言われている。横浜FCの「1年でJ1復帰」のメッセージは真逆の効果をもたらさないかと懸念している。

 残念ながら、ゼロ・ベースで作り直したチームが1年で昇格を達成できるほど、J2という魔境は甘くない。それを肌感覚で知っているのは、他ならぬ横浜FCではないのか?

まずは久々のJ2を楽しもう

 2度目のJ1昇格を果たすまで、横浜FCは一時の勢いだけで1年だけJ1に足を踏み入れた「一発屋」だった。
 そして徐々に力をつけ、2017年から「昇格争いの常連」になり2度目の昇格を成し遂げた。
 だが、そこから「J1定着」はまだ早かった。J1で降格を経験していないのは鹿島・マリノス・鳥栖の3クラブだけ。2度目の降格は、早かれ遅かれ訪れる通過点に過ぎない。
 その前に目指すべきは「昇格の常連」エレベータークラブだったのだ。ワタシ達はまだ降格に慣れていない。選手もサポーターも降格決定後の大分戦でナイーブに過ぎたのも、そのためなのだろうと思う。

同時に降格が決まった大分とのアウェイ戦は完敗。彼我を分けた理由は多々あろうが、大分はJ3行きも含む「降格」の経験が横浜FCよりも多い分、チーム・サポーターともにメンタルのダメージコントロールに長けていたのでは?と試合後の挨拶の様子に思った。

 横浜FCの未来が長いと信じるなら、「1年でJ1復帰」と焦る必要はない。まずはエレベータークラブを目指すぐらいでいいじゃないか。J1もJ2もそれぞれに美味しいところをこれからも楽しめれば、ファン・サポーターとしての「ミッション」は十分にクリアできるのだから。




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