【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】姿を消した調布駅前公園の『タコのすべり台』
日本全国の公園で見ることのできる「タコのすべり台」。その第1号だったとされる調布駅前公園(通称・タコ公園/東京都調布市)のすべり台が、2016年9月30日をもってその姿を消してしまった。当日、同公園では、午前9時半から「タコのお別れ会」が行われた。
昭和46年(1971年)に設置され、40年以上の長きに渡って多くの子どもたちから愛されてきた「タコのすべり台」。平成元年(1989年)に赤色からピンク色に塗り替えられ、平成21年(2009年)には、再び赤色に塗り替えられたこのすべり台は、ずっと子どもたちの人気者だった。
しかし、この日でお別れとなることから、公園の入口には、『ありがとう!あいされて44年 調布駅前公園 タコのお別れ会』という横断幕が掲げられ、200人以上の地域の人たちや「タコのすべり台」愛好家などが集まった。
市民グループ(Jane Due Band)による吹奏楽のボランティア演奏の後に行われたのは、普段、公園を利用していた保育園の園児たちによる飾りつけだった。その様子を見ていると、タコさんもちょっと嬉しそうな表情を浮かべているようにも感じられた。
「今日は子どもたちと来ました。さっきは、みんなで飾りつけも行いました。子どもたちには、『タコさんは海に帰るのよ~』と言っています。絵を公園に飾っていただきましたので、記念写真を撮って帰ります」(地元保育園の園長)
このすべり台を作ったのは、前田環境美術(東京都渋谷区)という会社になる。同社は、公園遊具やモニュメント、橋上施設などの設計・施工を行っている。創業時のデザイナーで、現在は、彫刻家である工藤健氏が『抽象的な形態を持っていて、クネクネとしたデザインのすべり台に頭をのせたらタコになる』ことを発見した。
調布市公園課によると、すべり台はコンクリートでできているので、移設するためには、膨大なお金がかかってしまうことから、取り壊すしかなかったという。また、駅前再開発の関係で公園自体も閉鎖になる。
当日、公園内には、保育園の園児たちによるお絵描きや、長年に渡ってタコのすべり台の写真を撮影し続けてきた、調布市在住のフォトグラファーである西山貞子さんの写真も展示されていた。「タコのすべり台」は、セレモニー終了後も多くの子どもたちに囲まれ、お母さんたちがスマホやカメラのシャッターを切っていた。
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