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日々是暴食★トラウマめし【第20食】2021年閉店。追憶の「水道橋 サウナ&カプセル アスカ」朝定食

 水道橋西口で長年営業していたサウナ、カプセルホテルの「アスカ」が閉店したのは2021年10月。コロナ禍ど真ん中だった。

閉店後、改装していた頃のアスカ

 コロナの影響もあるが正直ボロボロで老朽化しているのは否めなかった。最近流行りの店とは一線を画す昭和のサウナだった。しかし、そこが好きだった。

 実話ナックルズの読者ページで「トラウマめし」というコラムを細々と5、6年やっているのだが2018年12月号にアスカのことを書いていたのでそのまま再録してみる。

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もー眠くて眠くて仕方ないわけですよ。会社に2連泊してもまったくページで出来ていないこの不甲斐なさ。40前のおっさんです。体の全身が臭いです。腹も減ってきた午前4時。俺は決めた「えーい、ままよ。仕事を中断してアスカに行こう!」
 水道橋駅から徒歩1分の老舗(というかただただ古い)サウナ、アスカ。ここらへんで家に帰れない出版関係者は必ずここで風呂に入る。という大変貴重な施設である。雑魚寝の普通入泉で1850円という超良心的な値段もさることながら、こちらのメシは旨い(気がする)。ザブっと年季の入った風呂にくぐりサウナで汗を流す。地下へ降りて頼むのは「魚定食」一択である。
 塩気の効いた鮭をハムハムしまがら米をかきこむ。し、痺れる。はてどうしよう。まだ仕事が終わっていないが、ビールが飲みたいぞ。いま4時半…。2時間寝れば間に合うか…。「すいません生ひとつ!」
 会社からの電話でおきたのは夕方だった……。

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 本当に夕方の電話で起きたのかは覚えていないが、アスカで寝る(風呂に入る)というのは、それ相応に緊急事態なことが多かった。つまり忙しくて家に帰れないのである。

 最近は徹夜しても1時、2時くらいに眠くなってしまい、まったく徹夜の意味がないので必ず帰って寝るようにしている。30代の頃は数日会社に泊まっても仕事できていたが、もう無理だ。目も腰も耐えられない。そんな時にアスカは無くなった…。

朝4時以降に入店すれば深夜料金はかからない。最後は普通入泉で2千円だった

 コラムで書いているように、アスカの飯が好きだった。だいたいのパターンは受付とロッカーのある3階にある風呂に入り、さっぱりしたあと、その下の2階ある食堂へ向かう。そこで飯を食い、酒を飲んで眠気マックスになったら4階の雑魚寝できる休憩室へ行き仮眠をとる。

 食堂は24時間営業だったような気がするが、10時ごろは清掃で休みに入ったような気もする。深夜から早朝の時間帯は隣のテレビ付きソファーで寝てる人もいたので薄暗かった。

食堂の横は休憩スペース。朝のニュースを見たり週刊誌や漫画を読んだり…

 魚定食というのは朝5時から10時まで提供されていた500円(550円?)の「モーニングサービス」のひとつ。魚定食は鮭、味噌汁、お新香、味噌汁、やっこ、付け合わせ一品、ご飯のセット。かなりちょうど良く、味もよかった。他に目玉焼き、さつま揚げ、玉子丼、納豆定食などがあったが魚定食しか頼んだことがない。

魚定食。味噌汁もしっかりしていて大好き。奥のサラダは別で注文

 しかし、唯一浮気したのは洋定食。トーストが2枚あり、目玉焼きを乗せて醤油をかけて食べ、もう1枚はマーガリンをたっぷり塗って食べるとかなりの幸福度。ここは気分で変えていた。酒を飲む時は魚定食だ。

 もうひとつ、アスカで大好きだったのがカレー(650円)。ゴロゴロとした人参とジャガイモが入った懐かしい系のやつで、純喫茶とかで出てきそうな味。決して辛くはないが、しっかり煮込まれていた。ような気がするがどうなんだろう? レトルトではないことは確かだ。

こちらがカレー。どこまでも懐かしい味。ハムサラダと酎ハイを追加で飲みながらいただく
土日は競馬を予想しながら飲んでいるオジさんが大勢。天国だったなあ…

 前述のように風呂もソファも古い作りで、最近流行りのサ活とはかけ離れたストロングスタイルなサウナだったのは間違いない。店員もだいぶ先輩のおじさん、おばさんばかりだった。と思えば急に2メートルくらいあるデカい黒人がバイトで働き出したり、そこらへんが謎だった。先輩はでかいGが出たことがきっかけで行かなくなったそうだが、自分もGを見たことあるが、そんなに気にならなかった。まあ出るよね、くらいな。

 久我山に住んでいた時に風呂が壊れてお湯が出なくなったことがあった。大家に相談して直せばよかったのだが、家賃を滞納して出ていけと言われていた時だったので、修理する気にもなれず退出する前3ヶ月くらい風呂は銭湯とアスカで済ませていた。スタンプカードが貯まる貯まる。確かスタンプ5個で生ビール一杯無料だったのでよくそれで飲んでいた。毎日サウナに入るからかなり赤字なのだが…。

スタンプを貯めれば生ビールが無料に。おつまみ系も充実しているので、サウナで汗を流してグイッといけば至福の喜びが待っている

 かつては近くにベースボールマガジン社があったので、激務で知られる「週刊プロレス」編集部が定宿というか睡眠をとりに来ていたらしい。元編集部の方は「アスカがなかったら90年代に週プロは出ていなかった」と懐かしむ。

 そんなアスカが無くなってはや2年。あの魚定食とカレーを超える朝食には中々出会えていない。

<了>

【写真・文】バーガー菊池
岩手県出身。花巻東高校卒。 実話ナックルズ編集部在籍の編集者。不良からエロまで何でもやります精神の何でも屋。注射を打ちながら毎晩暴飲暴食を繰り返すハゲ巨漢。

https://twitter.com/kikuchi_BURGER