「日本のものだけで完結させたい」文身師 彫健 "世界を獲った日本人"
2023年春、世界規模で権威あるタトゥーコンベンション"Gods of Ink Tattoo Convention"がドイツ・フランクフルトで行われた。
世界中の刺青アーティストたちが集結する中、より高い完成度の求められる「Back Piece部門」で1位を獲得した日本人──その男、渋谷彫健。
海外のものには頼らない
「朱色は絶対使ったほうがいいんですよね」
"伝統的な彫り物らしさ"を損なわないため、あえて使用する色を抑える。その中でもこだわるのは朱色。
彫健氏が使用する朱色は「黄口」という橙色寄りの鮮やかさが特徴のカラーで、その銘柄は門外不出である。
日本の伝統文化を生業とする"文身師"のこだわりは、道具選びにも現れる。
「輸入したインク、輸入した針、その他諸々……そういうものには頼りたくない。日本のものは日本のもので完結させないと、伝統にならないんじゃないかと」
「友達の肌もだいぶやりましたよ」
20歳ごろ、自身の身体に初めて墨を入れてくれた彫師が師事していた師匠の弟子となり、食事のマナーから口の聞き方まで「とにかく一から十まで教わった」という修行の日々を過ごす。
師匠の身の回りの世話をしながらお客を取れるようになるまで、自分の足に何度も何度も墨を入れ、感覚を掴む。
友人たちの肌も"貸して"もらい、ひたすらに技術を磨き、鍛錬を重ねる。
すでにカバーアップされた脛やふくらはぎを見せながらこう回顧する。
「自分も友達の肌、だいぶやりましたよ。勉強させてもらったというか。それがありがたかったです」
日本を代表する刺青師となった文身師・彫健。そのインタビュー動画は「ナックルズTV」にて公開中。