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「アイスクリーム」天願頌【ナックルズ文芸賞 受賞作品】

第1回(令和5年)ナックルズ文芸賞
『怒りのナックルズ賞』受賞作品

「アイスクリーム」
天願頌(てんがん・しょう)


フラフラ歩くのもやっと 敵味方の判別もつかない
こんなになるまで 放っておいたの 自分なのに
ずっと誰かのせいに してきた

この夜 明けないで
僕たちは 暗闇の中でしか 獣になれない
狼の皮をかぶった 弱い犬

たった一人の人に スーパーマン
そう言われること 嬉しくて
そう言われ続けるため フラフラでも
歩いて 歩いて 歩いた
道は どこまでも 続く一本道

ヒッチハイクの仕方も わからない
行きついた名も知らない
公園のベンチ 寝そべって
月の中に見えた 僕がたどり
着く未来 カラカラに渇いた
目の前に あらわれた泥だらけの水
それでも啜る選択しかない

雨は 僕らの 怒りと 哀しみの 涙
隠してくれた
壁を突き破った
どこからも吹くはずのない風が
風が僕をそっと 包んでくれた

たった一つの甘くて冷たい
アイスクリーム

グラグラ揺れる 道 駆けて
拳 振り上げる前に 掌 重ねる
喜び知った 暴力に 振りまわされるより
愛に振りまわされ
隠さなくていい 涙知った

放つにおい 変わった
キレイな蝶が寄ってきてくれたよ
今 いま 雨 あがり 空に咲く
太陽 好きになれた
僕は 何も 特別な 存在なる必要
ないこと あの日 気づいた