【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】口之永良部島の『400円ホテル』
名湯もある
1993年にユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の世界自然遺産に登録された屋久島の北西約12キロのところに位置する口之永良部島に〝驚くべきホテル〟があった。その名も「400円ホテル」。現在は、閉鎖されているようだが、隣接している温泉は、国内の温泉の中でも名湯と呼ばれる部類に分けられている。
500円玉ひとつでおつりがくるようなホテルは、日本中探しても見つけることは難しいだろう。実のところ、「400円ホテル」というのは、俗称みたいなものになる。正確には、宿というか湯治場になっている。だから格安なのだ。運営していたのは、屋久島町で、役場で手続きをしてから向かう。ここには、90年代から幾度となく通ったものだ。
文化住宅風の建物には、部屋が4つあり、電気やプロパンガス、テレビ、冷蔵庫、共同の洗濯機などが完備していた。食料を持って行けば自炊も可能だ。嬉しいのは、24時間いつでも入ることのできる温泉がすぐ近くにあったこと。湯量も豊富で、1週間くらい島にいると、だんだんやることもなくなってくるので、1日に5〜6回は入ったものだ(笑)。
当時は、Nさんという初老の男性がいて、湯治場の主のような存在になっていた。お呼ばれされると、酒や刺身を振舞ってくれたことがある。北海道か東北の出身で、この湯治場で4〜5年暮らしていた。後から、「身体も良くなったので故郷に戻った」という話を聞いた。
口之永良部島は、古い火山体である西部の山々及び、島の中央部から東部を構成している新岳・古岳・野池山などの火山体で構成されている。2015 年5月には、新岳で爆発的噴火が発生した。この噴火によって、噴煙が火口上 9,000m以上まで上がり、火口周辺に噴石が飛散している。また、火砕流が発生したことにより、新岳火口の北西側(向江浜地区)の海岸にまで達した。
このようなこともあり、「400円ホテル」がいつ復活するかは分からない。また泊まれるようになったら、行ってみたいと思っている。