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ジャパゆきさん【ある日本人闇ブローカーの告白】「俺はこうしてフィリピン女を売り飛ばした」◉#2

90年代初頭、フィリピンに渡り現地の女性たちを次々とホステスや風俗嬢として日本に送り込んだ男がいた。女衒として巨万の富を得た男のその手口とは、一体いかなるものだったのだろうか──
(#1の続き)

日本からの手配師は筋系ぞろい──
オンナと銃を当てがいしゃぶり尽くす


手配師への手厚い接待

 谷村の手の込んだ接待に驚くのはまだ早い。手配師はこの後もいくつかのサプライズにすっかりハメられてしまう。事務所にはすでに60人もの若いフィリピン女性が勢ぞろいしている。手配師はそこに案内されたから2度びっくり。嬉しい悲鳴を発するのだ。しかもどれもが粒ぞろい。全部欲しいぐらいだった。
「ひとりナンボや」
 手配師は切り出した。60人の中から選ぶとなれば相当ふっかけられるものと腹をくくった。
「15万円で結構です。ただしすべてキャッシュで願います」
「ほぅー、安いでんなー。ホンマかいな…」
「すべてダイレクトに事を進めてるからですよ」
 ダイレクトとは多くの専門スタッフが手早く仕事をこなしていることだ。「5日後に女たちと一緒に日本に向かえます」と耳打ちすると手配師はびっくりし、「そんなことできまっか」と聞き返してきたが、それができるのも裏ビジネスに通じた専門スタッフがいつでもスタンバイしているからだ。商談がまとまったあとも手配師に損はかけなかった。フィリピン女性をちゃんとあてがったのだ、「床上手ですよ」といって。
 手配師が女性を選ぶとすぐに女性たちの顔写真を撮り、それを持ってパスポートと査証の発行にスタッフは走った。むろん15人もいれば身元が不確かな女性もいる。こんな時のために刑事の弟は役に立つ。彼は事件でパクった偽造グループと通じていたからだ。じつは谷村がVIPルームを利用できるのも何通もの身分証明書を彼らに偽造させ、いくつもの顔を使い分けているからだった。
 偽造グループはパスポートのほか薬物、銃器なども密造し裏社会にさばいていた。谷村が隠し持っている45口径拳銃もここで入手したものだ。谷村は弟を走らせてパスポートと査証をセットで偽造させた。1人当たり10万円だ。しかし安いものだ。ノービザの女性は特別に50万円で手配師に納得させているので40万円のもうけになる。じつをいえば知らぬは仏の手配師で、VIPルームを使うのも女性をあてがうのも15万円の中にちゃっかり入っており谷村の腹はまったく痛まないのだ。
(#3に続く)

取材・文◎岡村青