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【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】中国・重慶市の『世界最大のトイレ』

 「聖母マリアの像」型の男性用便器があったことで知られる『世界最大のトイレ』がその姿を消していたことが分かった。このトイレがあったのは、中国・重慶市内にある『洋人街』という遊園地だ。  

入り口は何故かスフィンクス
世界最大的厠所の文字

 『世界最大のトイレ』は、中国語で『世界最大的厠所』と表記する。問題のトイレは、遊園地の入口付近にあり、「聖母マリアの像」の他に「口を大きく開けたもの」や「チューリップ」、「ワニ」などといった形をした便器が並んでいた。オープン当初は、モノ珍しさも手伝って、ちょっとした観光名所にもなっていたが、その数年後、大きな問題が発生する。欧米人から「聖母マリアの像に向けて小便をするのはけしからん!!」などといった抗議が相次いだことにより、「聖母マリアの像」型の便器は、撤去されてしまった。  

さまざまな形のトイレが並ぶ
怪しげな男性小便器

 このトイレには、500あまりの便器が設置されていた。怪しげな便器は、男性用の小便器だけになるが、トイレ全体としての雰囲気も異質なものがあった。最上階にあるトイレは、青天井になっていたことから、高いところから用を足しているところを見ることができた。女子用のトイレも同様だった。トイレの入口部分には、どういうワケか巨大なスフィンクスが鎮座していた。「口を大きく開けた小便器」の唇部分は、ピンク色になっていたこともあり、フェラチオをされているような気がした人たちも多かったと考えられる。  

ワニの口があいていて怖い

 現在、同遊園地の施設の多くは、閉鎖されてしまったと見られる。移転によるものだということだが、詳しいことは分からない。聞くところによると、以前から移転計画はあったようで、近年は、アトラクションの多くが廃墟化していたという。トイレのあった場所は、すでに更地になり、その跡形すら見ることすらできない。  

上からは仲が丸見え
トイレの文化を紹介?

 中国全土の遊園地をウォッチしており、その見聞録を『中国遊園地大図鑑』(パブリブ)という著書に綴っている関上武司さんは、「数年前、ここに行ったのですが、トイレがなくなっていてビックリしました。同遊園地を縦断していたリフトも運行停止になっていましたね。すでに見るべきものが少なくなっていて、とても残念でした。2013年の時点で建設中だった敷地内のマンションには、住人が生活している雰囲気がありましたけど、その後、どうなったのかは分かりません…」などと話す。  

 『洋人街』は、重慶市内最大の遊園地として人気があった。園内には、「グエル公園(スペイン)」の巨大レプリカや「万里の長城」、「盤絲洞(ばんしどう)」という名のお化け屋敷、「FUJIYAMA」と書かれている小山のあるプール、ウォータースライダーなどがあった。「最大」というキャッチフレーズを売りにしていたのは、客寄せのためと思われるが、脈略のないアトラクションや施設がいくつも造られたことによってカオス化していたのも事実だ。それでもオープンした頃は、多くの家族連れで賑わっていた。  

説明書きのような物も

「開園した頃は、良く行きましたね。色々な遊具があって楽しかったですよ。1日いても遊びきれませんでした。10回くらいは行ったでしょうかね。ガールフレンドも喜んでいました。自分は、彼女と結婚しました。子どもができたら連れて行きたかったのに残念です…」(重慶市内に住む会社員の男性)  

 北京オリンピックが開催された2008年、中国各地の遊園地には、ディズニーやドラえもん、ハローキティなどといった偽キャラクターがいて、人気を集めていた。しかし、そのことが欧米で問題視されるとキャラクターの多くは、姿を消してしまった。総本山となっていたのは、北京市郊外にある「北京石景山遊楽園」だ。この遊園地には、ディズニーの偽キャラクターの着ぐるみがいたことから、日本のテレビニュースでも取り上げられている。 

夜にはライトアップされていた

 『世界最大のトイレ』にあった便器がどこに行ったのかは、誰にも分からない。「聖母マリアの像」型の便器は、”中国珍遺産”として博物館入りしてもおかしくないようなシロモノだ。あらぬ圧力がかかって、むやみに処分されないことを望みたい。

写真・文◎酒井透(サカイトオル)
 東京都生まれ。写真家・近未来探険家。
 小学校高学年の頃より趣味として始めた鉄道写真をきっかけとして、カメラと写真の世界にのめり込む。大学卒業後は、ザイール(現:コンゴ民主共和国)やパリなどに滞在し、ザイールのポピュラー音楽やサプール(Sapeur)を精力的に取材。帰国後は、写真週刊誌「FOCUS」(新潮社)の専属カメラマンとして5年間活動。1989年に東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件(警察庁広域重要指定第117号事件)の犯人である宮崎勤をスクープ写する。
 90年代からは、アフロビートの創始者でありアクティビストでもあったナイジェリアのミュージシャン フェラ・クティ(故人)やエッジの効いた人物、ラブドール、廃墟、奇祭、国内外のB級(珍)スポットなど、他の写真家が取り上げないものをテーマとして追い続けている。現在、プログラミング言語のPythonなどを学習中。今後、AI方面にシフトしていくものと考えられる。
 著書に「中国B級スポットおもしろ大全」(新潮社)「未来世紀軍艦島」(ミリオン出版)、「軍艦島に行く―日本最後の絶景」(笠倉出版社 )などがある。

https://twitter.com/toru_sakai