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獄中64年の無期懲役囚「日本一長く“ムショ”にいた男」(1/3)

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ヒトはどこまで更正できるのか? 元懲役囚の出所後の人生をみた

22年6月、熊本刑務所から出所(服役年数64年)。現在、更生保護施設で生活している

70年近く鉄格子の中

「街の景観がずいぶんと変わりましたね。ここに入った頃、周りは本当に田舎で何もなかったんです」

 熊本刑務所の正門前に立ち、辺りを懐かしそうに見渡しながら今年91歳になった男はそう呟いた。

 遡ること1日前。12月初旬、熊本に出張した。9月から事前に関係者と接触して本人の意思を確認してもらっていたが、前日になると「取材NG」の連絡がくるのではないかと、神経がピリピリしていた。

 取材当日、筆者は指定されていた場所に30分前に到着した。初対面の相手は稲村季夫。気にかかっていたのは64年間も刑務所に隔離されて〝拘禁性反応〟いわゆる〝ムショボケ〟になって認知症を発症しているのではないかという心配と、こちらの質問を理解してもらえるのか、その危惧であった。

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