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【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】中国蘇州市のエロ珍スポット『中華性文化博物館』

 「中国・珍遺産」のひとつとして知られていた『中華性文化博物館』が閉館に追い込まれてしまった。

 「性文化」という名がつく通り、この博物館は、「中国の唯一の秘宝館」とも言えるような施設だ。館内には、性的な展示物が数多く展示されていて、数多くの人が展示物を見るために足を運んでいた。

 とりわけ人気のあったのは、唐の時代に作られた四十八手人形だ。陶器で作られていたこともあり、かなりいい〝味〟を出していた。驚かされるのは、男性器と女性器があって、しっかりとジョイントしていたこと。

 それから、拷問器具と思われるものも大人気で、馬の背中に取りつける鞍のような形をしたブツの中心部からは、木製の巨大な『男根』がそそり立っていた。何らかの罪を犯した女性をこれに跨らせたのだろうか? 

 博物館の入口付近には、巨大な『男根』を持つ男性の「彫刻」も鎮座していた。

 近年、中国では、この手の施設には逆風が吹いている。「珍遺産」とでも呼べるようなものが次々と消え去っているのだ。重慶市にあった「世界最大のトイレ」には、マリア像を模した男性用の小便器があったが、この施設もなくなってしまった。また、遊園地や動物園などで見られたウルトラマンフィギュアやドラえもんなどのパチモノも姿を消しつつある。
 
 『中華性文化博物館』の開設は、1995年のことになると考えられる。最初は、上海市青浦鎮に開設したが、遠方だったためあまり訪問客が来ることはなかったという。その後、上海南京路歩行者通りに移転。賑やかなダウンタウンに近かったが、路地にあったため分かりにくかったようだ。

 火がついたのは、2001年に上海市武陵路に移転してからになる。物珍しさも手伝って数多くの観光客が訪れていた。その中には、外国人の姿もあった。しかし、あまりにも有名になってしまったことから蘇州市に移転。古代中国の性的な文化財や彫刻、図面、書籍などが2000点以上あり、最古のものは8000年以上前のものまであった。原始社会におけるセックスを伺い知ることのできる施設として知られていた。
 
「自分は上海と蘇州市の両方に行きました。中国には、このような施設はありませんのでとても楽しめましたよ。館内は、撮影禁止だったのですが、中国人はデジカメやスマホでしきりに写真を撮っていましたね。たまに受付の人が来て注意をするのですが、誰もが知らんぷりしていましたよ(笑)。あまりにも多くの観光客が来ていましたので、注意する方も大変そうでした。四十八手人形は、意外でしたね~。陶器で作られていましたし。考えてみれば、唐の時代はおおらかだったんでしょう。今はこんなもの作れないですよね。すでに閉館になってしまったということですが、これらのものがどこに行ったのか心配です。やはり文化的な遺産なのですから、処分されていないことを望むばかりです」(中国文化ウォッチャーの男性)
 
 この男性は、とても心配していたが、貴重な文化遺産が処分されないことを望みたい。このままいくと数年後には、中国国内から性(エロ)を感じさせるものは、一掃されてしまうのかも知れない。

 ※写真は、上海市内にあった『中華性文化博物館』。この後、蘇州市内に移設されたが閉館した。

写真・文◎酒井透(サカイトオル)
 東京都生まれ。写真家・近未来探険家。
 小学校高学年の頃より趣味として始めた鉄道写真をきっかけとして、カメラと写真の世界にのめり込む。大学卒業後は、ザイール(現:コンゴ民主共和国)やパリなどに滞在し、ザイールのポピュラー音楽やサプール(Sapeur)を精力的に取材。帰国後は、写真週刊誌「FOCUS」(新潮社)の専属カメラマンとして5年間活動。1989年に東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件(警察庁広域重要指定第117号事件)の犯人である宮崎勤をスクープ写する。
 90年代からは、アフロビートの創始者でありアクティビストでもあったナイジェリアのミュージシャン フェラ・クティ(故人)やエッジの効いた人物、ラブドール、廃墟、奇祭、国内外のB級(珍)スポットなど、他の写真家が取り上げないものをテーマとして追い続けている。現在、プログラミング言語のPythonなどを学習中。今後、AI方面にシフトしていくものと考えられる。
 著書に「中国B級スポットおもしろ大全」(新潮社)「未来世紀軍艦島」(ミリオン出版)、「軍艦島に行く―日本最後の絶景」(笠倉出版社 )などがある。

https://twitter.com/toru_sakai