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ジャパゆきさん【ある日本人闇ブローカーの告白】「俺はこうしてフィリピン女を売り飛ばした」◉#1

90年代初頭、フィリピンに渡り現地の女性たちを次々とホステスや風俗嬢として日本に送り込んだ男がいた。女衒として巨万の富を得た男のその手口とは、一体いかなるものだったのだろうか──

「オンナ60人、簡単に手配できる!!」
日本人ブローカーの裏ビジネスとは──


海を渡り闇ブローカーに

 当方の手元にジュパゆきさんを日本人手配師に送り続けた男の回顧録がある。回顧録と言っているが懺悔の記録だ。多数のフィリピン女性を日本人手配師に売り渡し、甘い汁をしゃぶり尽した日本人ブローカーが裏ビジネスを洗いざらい告白したものだからだ。
 男は谷村洋介(仮名)といい、北関東の小都市出身。90年代初めスナック経営で雇ったフィリピン女性と結婚してフィリピンに渡ったのをきっかけにフィリピン女性を雇う側から日本に送り出すブローカーになった。さいわい裏ビジネスはやりやすかった。妻の弟2人はマニラ市警の刑事。弟の友人にはフィリピン国軍の兵士や空港警察官、入国管理局員、女性を集めるやり手婆は妻の親戚とその仲間。パスポートなどの密造グループは刑事の弟の顔ききだった。これら20数人のスタッフはすべてカネで抱き込んだもの。この国はよくも悪くもカネ次第。カネで面倒なことも解決する。実際、そうやって一匹狼の谷村はフィリピンの闇社会を渡ってきた。
 スナック経営時代を通して谷村の名はその筋にも伝わっていた。関西系手配師から15人ほど欲しいとの電話連絡を受けたのもそのためだ。谷村はさっそく妻からやり手婆に連絡し、フィリピン女性60人ほど集めさせた。フィリピンでは女性の出稼ぎは一般的だから集めるのにさほど苦労はない。けれど彼がオーダーより多く集めたのは別の狙いもあった。これだけの女性を見せることで、いつでも手配師の要望に応じられるというメッセージだ。
 谷村はマニラ市内の住宅街に2階建ての事務所を構えていた。手配師は数日後マニラ空港に降りた。谷村は早速スタッフとともに空港まで車で出迎え、VIPルームに案内した。手配師は早くもド肝を抜いた。VIPルームといえば国賓並みの扱いだからだ。空港から外に出るときも一般客とはもちろん違う。ここでもVIP専用の通路を使用する。これで手配師が気分を良くしないわけがない。これも谷村が空港警察や入国管理当局に根回ししているからだ。
(#2へ続く)

取材・文◎岡村青