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【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】埼玉県秩父市の「ジャランポン祭り」

死者が一気飲みで泥酔する


 埼玉県秩父市の下久那地区でとっても痛快な祭りが行われている。その祭りの名前は『ジャランポン(別名:葬式祭り)』。

会場は日久下郡の諏訪神社。江戸時代から続く由緒ある祭りだ
位牌には「悪疫退散居士」と書かれていた

 長年、3月15日前後の日曜に行われているこの祭りは、すべてがテキトーだ。”生きている人”を”死者(生き仏役??)”に見立てて、大僧侶役のおじさんがお経をあげる。ところが、このお経はデタラメ。まったく何を唱えているのか分からない。伴僧役の人たちが叩く鐘や太鼓の調べもイイカゲン。位牌もあるが、戒名は『悪疫退散居士』というフザケタもの~♫

棺桶を中心にでたらめなお経が唱えられる

 すっぽりと棺桶に入った”死者”は、どういうワケかグビグビと酒を呑んでいる。この場面で行われるのは、大僧侶役による「質問」だ。でも、その内容は身内ウケを狙ったもの。でっ、”死者”は、もう完全に出来上がっているので、その答えもテキトーになる。もちろん身内は大爆笑。観光客は、「ポカ~ン」としている。祭りは、酔っ払った”死者”を神社まで運び込んだところで終わる。

白装束を身に纏った男性
故人役が一升瓶の酒をがぶがぶ飲み干す

地元在住の石渡達之さんは、長年祭りを見てきた。
「この祭りは、災厄を吹き飛ばすことを目的としてウン百年前から続いています。諏訪神社で行われる春祭りのつけ祭りとして始まりました。『ジャランポン』という名前は、鐘や太鼓の音からきています。その昔、神社の隣に寺があったんですね。寺にあった鐘や太鼓を持ち出して余興をやったのが始まりということですが、詳しいことは誰にも分かりません…」

酒を飲みすぎてもうフラフラ
悪霊退散を祈年すると故人が生き返った。子供たちもニコニコ

 ナーールホド。祭りの起源さえも分かっていないのだ。とりあえず、エンタテインメントとして最高なのだから、あまり突っ込まないことにしておこう~~ \(^O^)/~

写真・文◎酒井透(サカイトオル)
 東京都生まれ。写真家・近未来探険家。
 小学校高学年の頃より趣味として始めた鉄道写真をきっかけとして、カメラと写真の世界にのめり込む。大学卒業後は、ザイール(現:コンゴ民主共和国)やパリなどに滞在し、ザイールのポピュラー音楽やサプール(Sapeur)を精力的に取材。帰国後は、写真週刊誌「FOCUS」(新潮社)の専属カメラマンとして5年間活動。1989年に東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件(警察庁広域重要指定第117号事件)の犯人である宮崎勤をスクープ写する。
 90年代からは、アフロビートの創始者でありアクティビストでもあったナイジェリアのミュージシャン フェラ・クティ(故人)やエッジの効いた人物、ラブドール、廃墟、奇祭、国内外のB級(珍)スポットなど、他の写真家が取り上げないものをテーマとして追い続けている。現在、プログラミング言語のPythonなどを学習中。今後、AI方面にシフトしていくものと考えられる。
 著書に「中国B級スポットおもしろ大全」(新潮社)「未来世紀軍艦島」(ミリオン出版)、「軍艦島に行く―日本最後の絶景」(笠倉出版社 )などがある。

https://twitter.com/toru_sakai