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酒井透

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(さかい・とおる) 東京都生まれ。写真家・近未来探険家。 小学校高学年の頃より趣味として始めた鉄道写真をきっかけとして、カメラと写真の世界にのめり込む。大学卒業後は、ザイールやパ…
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#奉納

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】青森県つがる市・弘法寺の『花嫁人形』

亡くなった人と冥土で結婚  青森県の津軽地方にガラスケースに納められた『花嫁人形』が祀られている寺がある。  『花嫁人形』というのは、結婚することができないまま亡くなった人たちを、あの世で結婚させてあげることを目的として、親や親戚が寺や地蔵尊に奉納する人形のことを指す。『ムカサリ絵馬』が亡くなった人や結婚する相手を描いたものを奉納するのに対して、『花嫁人形』は、人形自体を奉納する。『ムカサリ絵馬』同様に、このような形で結婚することを『死霊結婚』や『冥界結婚』と言う。  

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】山形県の『ムカサリ絵馬』がある観音堂

死後に結ばれる  今から200年以上前に建てられたという観音堂に入ると、むせかえるような空気が漂っていた。その空気は重たく沈殿し、何十年も動いていないように感じられた。観音堂の壁には、結婚式の様子が描かれた絵馬がいくつも掲げられている。それらの絵馬に描かれた男女は、どことなく寂しげな表情をしている。  山形県の山形盆地を中心とする地域にある寺や観音堂には、「ムカサリ絵馬」と呼ばれる絵馬が奉納されている。絵馬に描かれているのは、新郎新婦やその親族の姿だ。  これらの絵馬を