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酒井透

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(さかい・とおる) 東京都生まれ。写真家・近未来探険家。 小学校高学年の頃より趣味として始めた鉄道写真をきっかけとして、カメラと写真の世界にのめり込む。大学卒業後は、ザイールやパ…
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2023年7月の記事一覧

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】銀座の軍国酒場・最後の日

 2018年6月30日(土)、東京都中央区銀座にある『海軍倶楽部 宜候』が閉店した。これによって,同店50年の歴史に幕が下りてしまった。開店したのは、昭和43年5月27日(日本海海戦の日)になる。  近年、海軍倶楽部のような軍国酒場が次々と閉館している。残されているのは、福岡県に残されるものだけとなってしまったようだ(※大阪府にもう一軒残されているという情報もある)。ちなみに、宜候(ヨーソロ)とは、宜しく候(よろしくそうろう)を略した言葉だ。航海用語のひとつで、「定められた

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】大阪のラブドール電車貸切イベント

ドールたちと列車旅へ  近年、ラブドールを購入してから、そのポートレート写真を撮る人たちが増えている。これらの写真は、SNSにアップされているので、目にすることも多くなっていることだろう。一昔前かに比べると、等身大人形を取り巻く世界は身近になった。そんな中、水間鉄道(本社:大阪府貝塚市)で〝前代未聞〟のイベントが行われた。タイトルは、 『ローカル線に協力しよう 電車1両貸し切り 電車で遊ぼう企画』 イベントの主催者は、ラブドールなどの等身大人形界隈で知られるケロロさん

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】鹿児島県悪石島の〝ボゼ〟

奇声をあげ棒をふりまわす異形の神  鹿児島県の鹿児島本港から「フェリーとしま」(※)に乗って南下すること約11時間。トカラ列島の悪石島に伝わる『ボゼ祭り』は、悪石島で暮らしている子どもたちにとって、最も恐ろしい祭事となっている。  ヤシ科の植物である「ビロウ」の葉を身に纏い、巨大な面を着けた仮面神のボゼは、聖地を後にすると、赤土が塗られた棒を振り回しながら人の輪の中に突っ込んで行く。そして、ターゲットにした人の前に立ちはだかると、身体をこすりつけながら「ブルッ、ブル。ブル

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】鹿児島県徳之島の加万答(カマントウ)洞穴墓

亡骸を洞窟に安置し自然に還す  森の中を奥深く進んだところにある洞穴の中には、無数の頭蓋骨が並べられていた。頭蓋骨の両目の部分にはポッカリと穴が開き、下顎は外れている。洞穴には、これらの頭蓋骨から発せられていると思われるカルシウム臭とカビ臭い匂いが充満していた。  奄美諸島や沖縄諸島など琉球諸島に属する島々には、人間の頭蓋骨が安置されている洞窟や洞穴が数多く残されている。遠い昔、島々で暮らしている人たちは、とても貧しかった。墓を造ることができなかった場合、その亡骸は、洞窟