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鈴木ユーリ

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(すずき・ゆーり) ライター。『実話ナックルズ』にて連載『ゲトーの国からこんにちは』など X@yuri_suzuKii
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#東京

【インタビュー】フッドリッチトーキョーRAKO「安藤組“餓狼の血”を継ぐ男」の半生(前編)

祖父は「安藤昇の言うことを聞かなかった唯一の男」  まだ残暑がただよう秋の日のことだった。 「来たか」  渋谷の鰻屋の門をくぐると、その人はすでに待っていた。伝説の元ヤクザであり、異色の映画スター。歳は召していたが、目をまともに見れないほどのオーラがあった。 「楽にしていいぞ。で、今は何をやってるんだ」 「パクられて出てきて、今は抗争を繰り返しています。××組と揉めてます。○○組とはもっと揉めてます。自分は、今流行ってる振り込め詐欺とか許せなくて、薬をイジってる不良も

Z世代狙いも響かない……真夜中の渋谷ドン・キホーテ【鈴木ユーリ「ニュートーキョー百景」】#7

あんなにも真剣に『ガイアの夜明け』に見入ったのは初めてだった。 独占!ドン・キホーテの新戦略。グループとしての売上高が2兆円に迫るなど絶好調。一方、ドンキのPB商品だけを集めた店を東京・渋谷にオープンさせるという一大プロジェクトも進んでいた。そこには創業者の夢が……。番組の中盤、ぬめるようなグレーのスーツにオールバックの、あの本職みたいな安田会長が登場する。 「オイ、これ俺がパラオの北で釣ったやつだよな?」 青々とブラックライトに照らされた中目黒店の水槽をなでながら、お

神宮外苑の風のカミ【鈴木ユーリ「ニュートーキョー百景」】#6

きょうは大学時代の級友に会う日。 彼女はいま横浜の東急沿線に住んでいて、待ち合わせは当然、渋谷がよかったのだけど、せっかくだから懐かしい場所で会いたいよねって11時にお店を予約した。KIHACHIのテラス席で、すこし遅めのブランチ。 --ごめん! 睦がでがけにグズっちゃったの。 キョウコは25分おくれでやってきた。かわらないなぁ。 本当は悪いだなんて、ぜんぜん思ってないあざとい表情。水色のワンピにピンクのヒール。体型も、見た目年齢が10歳は若いところも。 --遅ーい。許さない

「映え」と「スピ」まみれ……再開発問題に揺れる神宮外苑で村上春樹と隈研吾を思い浮かべた夜【鈴木ユーリ「ニュートーキョー百景」】#5

前提として言っておきたいのは--近隣住民には周知のことだが--神宮外苑の再開発はすでにはじまっているということだ。夜間になると青山通りに伊藤忠ガーデンの解体工事の爆音がひびきわたる。  契機は、言うまでもなくオリンピックだった。  2015年、手はじめに国立競技場が解体された。東京の真ん中にぽっかりと爆心地のような更地がひろがった。「ストリートワイズ」とはよく言ったもので、グラウンド・ゼロのようになったその空き地に、夜中になるとスケーターたちが忍びこみ自由に滑っていた。