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鈴木ユーリ

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(すずき・ゆーり) ライター。『実話ナックルズ』にて連載『ゲトーの国からこんにちは』など X@yuri_suzuKii
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2023年7月の記事一覧

【インタビュー】フッドリッチトーキョーRAKO「安藤組“餓狼の血”を継ぐ男」の半生(前編)

祖父は「安藤昇の言うことを聞かなかった唯一の男」  まだ残暑がただよう秋の日のことだった。 「来たか」  渋谷の鰻屋の門をくぐると、その人はすでに待っていた。伝説の元ヤクザであり、異色の映画スター。歳は召していたが、目をまともに見れないほどのオーラがあった。 「楽にしていいぞ。で、今は何をやってるんだ」 「パクられて出てきて、今は抗争を繰り返しています。××組と揉めてます。○○組とはもっと揉めてます。自分は、今流行ってる振り込め詐欺とか許せなくて、薬をイジってる不良も

鈴木ユーリ「ニュートーキョー百景」#3 新宿二丁目「LGBTタウン」って呼び方、しゃらくせえな(後編)

 歌がきこえてくる。  雑居ビルの2階からもれるカラオケは、微妙にふるい歌謡曲ばかり。令和も5年目だっていうのに、聖子・明菜の二大巨頭はむろんのこと、中島みゆきもまだまだ現役で、安室奈美恵ナイトも毎年のように開催されてる。倖田來未バージョンの『キュティーハニー』もいまだに定番のアンセム。「沢尻エリカ様がお忍びで襲来!」という逮捕前のフライデーの切り抜きを後生大事に貼ってあるバーもある。  前時代的なのはミューズだけじゃない。毎週末激混みしている『DRAGON MEN』など

鈴木ユーリ「ニュートーキョー百景」#2 新宿二丁目「LGBTタウン」って呼び方、しゃらくせえな(前編)

 甲州街道を歩いてると、太宗寺で盆おどりをやっていた。  夏のはじめ、陽が落ちても空はまだ青く、浴衣すがたの踊り手もまばら。宵がふかまると、近所の住人や子どもだけでなく、祭り囃子につられてカップルや外国人観光客も境内につどってくる。高まる太鼓のひびきに、やぐらをかこむ人の輪が二重、三重にふくれていく。  ラスト二曲は『マツケンサンバ』と、氷川きよしの『チャンチキおけさ』だった。  セレクターの趣味なのか、ほかに理由があるのか。おかまいなしに手をひるがえし、行燈の下でみん

不良中年必見! 今更聞けない「アウトロームービー」超入門

何かと息苦しさを感じる今、激しく生き抜く男たちを描いたギャング映画を見て我々は何を感じるのか。面倒臭い事なしに、モヤついた気分を吹き飛ばす名作を紹介したい。 胸躍るアンチヒーロー  とかく生き辛い世の中である。コンプラだらけのこんな時代だからこそ、声に出して読みたい日本語がある。 「ワシら美味いもん喰って、 マブい女抱くために生まれてきたんじゃァないの! ゼニのために身体張ろうってのがどこが悪いの、オウ?」  ご存知『仁義なき戦い 広島死闘編』で、狂犬・大友を演じる千葉真

現在「ホームレス」「逃亡生活」……投資で楽して儲けた「元億り人」3人の悲惨すぎる末路【鈴木ユーリ】

「貯蓄から投資へ」。  岸田首相が経済政策のスローガンにかかげた「新しい資本主義」が話題になっている。「庶民にはリスクが高い」と言われていた株式市場が一般化したことも、その背景にはあるだろう。株式だけでなく、FX(外国為替取引)や不動産投資、仮想通貨といったリスクをさける分散投資が常識となり、安定性も高まりつつある昨今。ネットを開けば「副業のFXで荒稼ぎして本業を40歳でリタイア」といった〝億り人〟たちのサクセスストーリーが飛び交う、1億総投資家時代に突入しつつあるのだ。

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ニュートーキョー百景#1 渋谷公園通り 広末涼子が歌った女子高生の聖地。激変した25年後のいま【鈴木ユーリ】

タンタンタン。ツッタンタタン。 タンタンタン。ツッタンタタン。 渋谷はちょっと苦手 初めての待ち合わせ 人波をかきわけながら すべり込んだ5分前  広末涼子のデビューシングルで歌われた、その待ち合わせ場所はどこだったんだろう。  97年の曲だ。センター街とはおもえない。日中とはいえ、そこは高校生にはまだまだこわい時代だった。バンソンやらゴローズやらエアマックスやら、のちのち彼女が友達になった人たちが何かしらを狩っていた。 『MajiでKoiする5秒前』の主人公は、背伸

「ウシジマくんよりもっとエグかった」。歌舞伎町五人衆と呼ばれた男が明かす「闇金全盛期」

歌舞伎町を闊歩する ブランドに身を包んだ男たち  ちょうど20年前。再選した石原慎太郎都知事によって「歌舞伎町浄化作戦」が開始された。  街の治安は実際のところ最悪だった。銃殺や強盗といった事件が多発、現在のように大学生や外国人観光客が寄りつける街ではなかった。しかしそんな街を闊歩する男たちがいた。“歌舞伎町五人衆”と呼ばれた若き“黒幕”たちだった。 「“五人衆”はネットで勝手に広まった呼び名。グループではなくて、それぞれが街で派手に遊んで、名前を売っていた人間です。あ

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強盗事件で消えたロレックス「転売ルート」の衝撃

 5月8日、18時過ぎ。銀座のメイン通りにある高級時計店「クォーク銀座888店」が襲撃された。店に押し入ったのはアノニマスの仮面で変装した4人の男たち。ロレックスの腕時計など70点余りを強奪し、逃走後に現行犯逮捕された。仮面を脱いでみれば、総額2億5千万円分の時計を強奪した犯人集団が、高校生を含む16歳から19歳の少年たちだったことも世間に衝撃を与えた。  事件で注目されたのは犯人の素性や背後関係だけではなかった。それが、盗まれた高級時計の転売ルートだ。  現代の高級時計